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2020年1月14日 (火)

石井知章・及川淳子編『六四と一九八九』または「進歩的」「左派」の「歴史修正主義」

487699 石井知章・及川淳子編『六四と一九八九 習近平帝国とどう向き合うのか』(白水社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.hakusuisha.co.jp/book/b487699.html

1989年に起きた一連の出来事が、急速に歪められ、忘却されつつある。その中心にあるのが六四・天安門事件である。
従来、「民主化の第三の波」(ハンチントン)や「国家超越的な共同社会」(M・ウォルツァー)への動きと理解されてきた〈一九八九〉は、いつのまにか「新自由主義革命」として矮小化されつつある。「民主化」ではなく「新自由主義」の確立がこの画期を特徴づけるというのだ。
果たしてそうなのだろうか――。本書はこの疑問から出発している。
「新自由主義革命」と事態を捉えた場合、30年後に緊迫化した香港情勢はどう理解すればいいのだろうか。また「紅い帝国」(李偉東)として世界に君臨しつつある習近平体制と民主化という視角なしに果たして対峙できるのか。
本書は、アンドリュー・ネイサン、胡平、王丹、張博樹、李偉東、矢吹晋、石井知章、及川淳子という、これ以上望めない世界的権威が六四と一九八九という歴史的事件に挑んだ。
その中核にあるのは、危機に瀕しているデモクラシーと市民社会の擁護である。過去のものとして暴力的に忘却されつつある両者をいかに恢復するか。その答えが六四・天安門事件にあるのだ。現代のはじまりとしての一九八九へ。 

本書もまた、あまりにも時宜に適したこの時期に世に問われる運命の本ですね。奥付の発行日2020年1月10日というのは、台湾の総統選挙で蔡英文氏が地滑り的勝利を収めた1月11日のその前日です。

本書の中身自体は、昨年6月に明治大学で開かれた国際シンポジウムの報告集ですが、まさに香港と台湾の市民がノーを突きつけている中国共産党の独裁体制を徹底して分析しているこの本ほど、今この時に読まれるべき本はほかにあり得ないという唯一の本といえましょう。

序章 「六四と一九八九」  石井知章
第一章 習近平と天安門の教訓  アンドリュー・J・ネイサン(大熊雄一郎訳)
第二章 「六四」が中国を変え、世界をも変えた  胡平(及川淳子訳)
第三章 天安門事件の歴史的意義  王丹(大熊雄一郎訳)
第四章 三十年後に見る天安門事件  張博樹(大熊雄一郎訳)
第五章 天安門事件が生んだ今日の中国  李偉東(大熊雄一郎訳)
第六章 趙紫陽と天安門事件ーー労働者を巡る民主化の挫折  石井知章
第七章 「一九八九年」の知的系譜ーー中国と東欧を繋ぐ作家たち  及川淳子
第八章 新全体主義と「逆立ち全体主義」との狭間で  矢吹晋
終章 「六四・天安門事件」を読む  及川淳子
あとがき  石井知章 

もちろん、本書の最大の読みどころは、中国から亡命して言論活動を続けている在外中国知識人による諸論考ですが、心中の炎を秘めつつ冷静な筆致を失わないそれらに比べて、序章とあとがきで編者の石井知章さんがほとんど噴出まぎわにまで至っているある種の「進歩的」「左派」に対する憤怒の思いが興味深いです。彼によれば、岩波の『思想』誌などに集うそういう「進歩的」「左派」は、習近平体制に対する「忖度」で、1989年問題に対する「沈黙」を繰り返しているというのです。その文章がどれくらい激情的かというとですね、

・・・だが、これは原因と結果の順番をまったくはき違えた深刻なる思想的倒錯であり、歴史的事実をあからさまにねじ曲げる本末転倒であるといわざるをえない。なぜなら、このポスト1989で創出された政治経済システムにおいて、まっさきに「新自由主義」体制を導入したのは、「社会主義体制」が崩壊した東欧ではなく、むしろ「血の弾圧」によって専制的権力の基礎をより盤石なものとした「現存する社会主義」、すなわち、ほかでもない一党独裁国家そのものとしての中国だったからである。・・・

・・・これらの言説は、汪暉や柄谷行人らによって推し進められた、いわば「日中間共同イデオロギー戦略の創出」とでも呼ぶべき知的作業の一環として理解できる。それは、習近平という「唯一の所有者」(マルクス)の政治的意志を密かに「忖度」しつつ、しかも「脱政治化」することに見事に成功しているという点において極めて象徴的である。これらはいずれも、「事実」を「事実」として認めることのできない、日本の歪んだ「進歩的」知識人たち、そしてシニシズムの言説に依拠してしか社会的には一言も発言できない、中国国内の「新左派」知識人たちの基本的性格をまざまざと示すものである。・・・

あとがきでは、石井さんはこういう「進歩的」「左派」をつかまえて「歴史修正主義」とまで罵倒しています。でも、それはまったく同感です。

 

 

 

 

 

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