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障害のある学生を教えるときに必要なこと

本コンテンツの著作権は執筆者、各情報提供者及び日本学生支援機構に帰属します。内容の無断転載は固くお断りいたします。
閲覧いただく前に、合理的配慮ハンドブックトップページの「御利用に当たっての注意事項」をお読みください。

(1)合理的配慮とは

(2)合理的配慮の内容の決定の手順と留意事項

合理的配慮の内容を決定するための一般的な手順をまとめます。

障害のある学生からの申し出

根拠資料

根拠資料の例

1 . 障害者手帳の種別・等級・区分認定
2 . 適切な医学的診断基準に基づいた診断書
3 . 標準化された心理検査等の結果
4 . 学内外の専門家の所見
5 . 高等学校・特別支援学校等の大学等入学前の支援状況に関する資料

配慮内容の決定と建設的対話

内容決定の際の留意事項:教育の目的・内容・評価

三つのポリシーとシラバス

内容決定の際の留意事項:過重な負担

合意形成が難しい場合

結果のモニタリング

合理的配慮は、ずっと同じことを続ければよいというものではありません。授業の種類によって、ニーズも異なってきます。学生、教員双方から配慮の結果について聴き取り、必要があればやり方を変えていけるようにしましょう。

(3)合理的配慮と卒業後に向けた支援

卒業式の様子。パソコンノートテイクの投影があり手話通訳者が壇上で通訳している。(筑波技術大学)
卒業式の様子。パソコンノートテイクの投影があり手話通訳者が壇上で通訳している。(筑波技術大学)

(4)合理的配慮を踏まえたシラバス

合理的配慮の判断に当たっては、教育の本質を明らかにしておくことが前提となります。教育の本質があいまいな場合は、合理的配慮を的確に判断することが難しいため、大学等においては、教育の目標や方法・評価基準等を明確にし、その情報を学生に伝えていく必要があるでしょう。例えば、大学等においては、各授業のシラバスで、これらの情報を明確にしておくことが望まれます。

全ての学生にとって、シラバスに記載されている情報は授業を選択・履修する上で重要な情報となっています。ただし、現状では授業の大まかな内容や方法が記載されている、また、到達目標や評価方法等については、授業の中で適宜アナウンスされているような場合も多いのではないでしょうか。障害のある学生にとっては、授業の内容等はもちろん、どのような方法で授業が行なわれるか、また、使用教材等についてもより詳しく知っておくことで、授業を選択する際の参考情報となります。もちろん、授業について詳細な情報をシラバスに記載することは、全ての学生にとって有効な情報であると言えるでしょう。

講義の形式等に関する情報

教材に関する情報

評価に関する情報

グループワーク形式の講義(日本福祉大学)
グループワーク形式の講義(日本福祉大学)

(5)障害のある学生と関わるときの基本的心構え

  • 本節では、障害学生支援を担当する教職員が持っておく必要がある基本的な心構えについて述べます。
    通常の教室の物理的環境や、授業の方法、教育カリキュラム等は、障害のある学生が参加することを前提として作られたものとはいい難いものです。目が見えていて、耳が聞こえていて、手足が自由に動き、大学等に日々安定して通うことができる学生たちが参加することを前提として、ほとんどのカリキュラムや時間割、施設や教育方法が作られています。そのため、障害のある学生にとってみれば、非常に参加しにくい作りになっていることが少なくありません。

    本来、大学等は、大学等の施設や大学等で行なわれる活動全体のユニバーサルデザイン(最初から可能な限り多様な背景のある人々の参加を想定した作りにしておくことで、環境の整備に当たるものです)を心掛ける必要があります。しかし、実際にはまだまだそうなっているとは言えない現実があります。障害のある学生たちは、そうした本人にとっては不利益の大きい現実に対し、「合理的配慮」と呼ばれる個別の変更・調整を大学等に対して求める必要が生じています。

アドボケイト(advocate)としての役割を意識する

このように、障害のある学生は、学生生活の様々な場面で、自分の心身や生活スタイルの有様が前提となっていない環境だと感じることが少なくないことが想像されます。合理的配慮は、決してわがままではなく、本来当たり前に求めてよいことであり、他の学生と平等な学びのフィールドに立つために必要なことです。しかし、障害のある学生本人にとってみれば、ちょうど異国の地のようにアウェイな環境の中で、自らの有様とその権利を大学等に訴え、要望を主張することで、はじめて得られることとも言えます。しかしながら、障害のある学生はそれまでの教育課程で、合理的配慮を求める行為を自分自身の自己決定に基づいて行なった経験がないことも少なくありません。その結果、何が合理的と言えるのか考えることが難しく、自分のわがままではないのかといった不安や恐れが先立ち、自信を持って要望を述べることが難しいケースがほとんどではないでしょうか。

日々の生活の中で、障害学生支援を担当する教職員は、障害のある学生にとって、最も身近な味方となってくれる人間です。大学等の利害を代表する役割の前に、障害のある学生のアドボケイト(ともに権利を主張してくれる存在)としての役割があることを、忘れるべきではないと言えます。そうでなければ、障害学生支援の営みは、障害のある学生ではなく、大学等の利害を代表するものとなってしまいます。結果として、障害者権利条約や障害者差別解消法といった法の精神を遵守する営みとはとても呼べないものとなってしまうかもしれません。

公平な態度を持つ

とはいえ、障害のある学生の立場に立ち、味方となったとしても、社会正義に基づいた公平な態度を持つことは不可欠です。アドボケイトとしての役割を意識した上で、大学等での学びや生活について、公平な視点からの助言ができることが求められます。そのような助言は、障害のある学生が何を大学等に求めていきたいのかについて、障害のある学生本人が理解を深めたり、自己決定をしていくことの支援につながるはずです。
しかし、公平な態度を育てていくためには、支援担当の教職員個々人が、障害学生支援についての専門的な知識を深め、経験を重ねていくことが求められます。そうでなければ、ある支援者個人の思い込みに過ぎない、とても公平とは呼べないような助言や態度、支援内容になってしまうことがあるからです。

雨の中、傘をさして車椅子を押す。(筑波大学)
雨の中、傘をさして車椅子を押す。(筑波大学)

具体的には、障害者権利条約や障害者差別解消法等の関連法についての適切な理解を出発点として、様々な障害の個別の状況を理解するための知識や経験、障害から生じている困難に直面している学生を支援する様々な方法についての知識・経験・技能の蓄積は不可欠です。また、個別のケースで、その障害のある学生が参加する授業や活動が求めている本質的な要件について、担当の教職員と共通理解を図っていくコミュニケーション・スキルも求められます。これらの知識と経験、技能に基づいてはじめて、障害のある学生と、ともに公平な学びの環境を作るための合理的配慮の在り方を考えていくことができます。
このハンドブック全体で述べられている事柄について学ぶことで、障害学生支援の役割を学内外で果たされる教職員に、アドボケイトとしての役割と、公平な態度の在り方について、それぞれの考えを深めていただけることを期待します。

執筆者:近藤 武夫、高橋 知音、村田 淳

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