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# ジェンダー

「草食系男子」は、どうすればジェンダー平等への一歩を踏み出せるか

〈男らしさからの脱却〉論を超えて

 草食系男子の出現は「フェミニズムの勝利」か

「草食系男子」という言葉が一世を風靡してから10年余りが経ちました。この語を流行させた立役者の一人・哲学者の森岡正博さんは、2009年に刊行した『最後の恋は草食系男子が持ってくる』(マガジンハウス)で

草食系男子とは、心が優しく、男らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと

と定義しています。草食系男子の定義は人によって様々ですし、10年余りの間の変遷もありますが、まずはこの定義を踏襲するとしましょう。

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「私自身、若いときには草食系だった」と述べる森岡さんは、一貫して草食系男子を肯定的に描いています。2011年の論考「「草食系男子」の現象学的考察」(The Review of Life Studies Vol.1:13-28、こちらで全文公開)では「マッチョであることを中核とした従来の男らしさの規範を、みずからの手で解体しようとしているのが草食系男子であるとも考えられる」と高く評価した上で、「私自身は草食系男子を批判する気持ちはまったくない。彼らを応援していきたい」と明確に述べています。

さらにこの論考では、興味深いことが記されています。少し長いですが引用しましょう。

草食系男子という男性たちがまとまって登場したことは、フェミニズムの勝利だと捉えてよいと私は考えている。なぜなら、草食系男子は、みずからが規範を産出して女性を制圧し保護するという意味での「男らしさ」を窮屈に感じ、その呪縛から自分で降りようとしている男性たちであるからだ。女性たちに糾弾されたからそうするというのではなく、自分たちの内発的な動機によってそうするわけだから、これこそがフェミニズムが望んでいた新たな男性像に近いのではないだろうか。

果たして、森岡さんが言うとおり「草食系男子」の登場は、「フェミニズムの勝利」だったのでしょうか。