出生数90万人割れは「少母化」が最たる原因だ

「既婚女性」が産む子の数は変わっていない

少子化というと、「結婚した女性1人当たりの出産数が減った」と考えがちですが、それは大きな間違いです(写真:kuppa_rock/iStock)

2019年12月に発表された人口動態調査(年間推計)によれば、2019年の出生数は86万4000人となり、遂に90万人を割りこむことが発表されました。

「2017年の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による将来人口推計より2年も速いペースで減少している」と、まるで寝耳に水かのようなトーンで報道するメディアもありましたが、社人研推計はあくまで「中位推計」の数字です。社人研は同時に「低位推計」も出しています。それによれば、2019年出生数推計は83万5900人でした。今回の約86万人は十分その予測範囲内に収まっており、想定内なのです。

政府目標の合計特殊出生率1.8は不可能だ

現在の日本の合計特殊出生率は2018時点で1.42です。人口置換水準(長期的に人口が増加も減少もしない出生水準)は、2.07といわれますが、その水準は1974年時点でとっくに割り込んでいます。その水準に戻ることはおろか、政府が目標として掲げる希望出生率1.8に戻すことさえ不可能です。社人研による「中位推計」でも、今後1.45を超えることすらないと予測しています。低位推計であれば1.2です。

合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの全女性のそれぞれの出生率を足し合わせて算出したもので、1人の女性が一生に産む子どもの数の平均といわれています。しかし、多くの人が勘違いしていますが、全女性という以上、この中には、未婚の女性も母数に含まれます。よって、未婚率が高まればそれだけ下がることになります。

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2015年時点での女性の1970年代は5%未満だった女性の50歳時未婚率(生涯未婚率)は2015年14%を超えました。未婚率が3倍増なのですから、合計特殊出生率が下がるのは当然なのです。

そもそも、年間出生数が90万人を割りこむのはいつ以来でしょうか? 統計を調べると、1880年(明治13年)以来139年ぶりとなります。しかし、当時の日本の人口は、約3700万人でしたから、人口千対の出生率は24.1もあり、現在の3倍以上ありました。

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  • ななしこ9650f7e49d42
    女性にとって子供を産む事はデメリットが多い。

    せっかく勉強して良い仕事を勝ち取っても出産と子育てがキャリアを邪魔します。職場に復帰できるならまだマシ、実家に頼れず夫が激務で帰宅時間が遅いのならワンオペ育児は避けられないし、子供が体が弱ければ結局退職しなければならない。

    そして子育てがひと段落し再就職するときは仕事経験があっても最低賃金。能力の高い女性がたくさんパートで最低賃金で働いている。

    妊娠中は悪阻で苦しみ出産は激痛に苦しみ育児も激務、それなのに社会的には少しも報われない。ただ子供が愛しいだけが救い。誰も褒めてくれない。

    子供を持っても父親はもっと自由だし社会的地位も維持できるのに。離婚して養育費も払わない男が多くても国は何もしてくれない。

    今まで女性は育児も介護も全部引き受けてきたけどもうやーめたと思ってる。自分のために生きるほうがマシだと思うから子供を生まない選択をする。
    up188
    down26
    2020/1/16 07:51
  • akasatana7ee5cbe41eeb
    少母化というより正確には「少親化」、または「少父母化」では。少母化では相変わらず女性にだけ、原因を求め責任を押しつける印象が強いです。子供は女だけでは出来ないことをちゃんと言葉にも正確に反映してほしい。

    とはいえこういう記事は、もっと「出産する女性1人あたりの産む子供の数は変わっていない」という事実を広く知らしめるためにはいいと思います。

    で、なぜ未婚男女、そして子を持たない夫婦が増えているのか、その原因は「実質賃金が低すぎるから」。
    確かにそれも大きな原因だと思いますが、「婚姻率をそんなに簡単に上げられたら苦労しません」なんて丸投げ、放棄してないで、そこをもっと掘り下げて考えて紹介してほしいです。
    up162
    down14
    2020/1/16 07:50
  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    お見合い結婚を否定して恋愛結婚至上主義になり、専業主婦を否定して共働き至上主義になれば、未婚率が上昇するのは当然のことだと思うけどね。
    up167
    down47
    2020/1/16 05:51
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