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  • 2020/01/14

東芝 最高デジタル責任者 島田太郎氏が説く「いま必要な変化」、見習うべきは中国OMO

GAFAを始めとする巨大IT企業が大きく伸長し、世界のトップに名を連ねた2010年代。かつてモノづくりの力で世界を驚かせた日本企業にとっては“冬の時期”だったと言えるかもしれない。しかしまだ挽回の道は残されている。東芝 最高デジタル責任者である島田 太郎氏が、その方向性を、自社の具体例とともに示した。

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東芝
執行役常務 最高デジタル責任者
島田 太郎氏

成功しているサイバー企業はプラットフォームを構築している

 島田氏は「CPSで最も重要なポイントはデジタル・ビジネスモデルです。我々はプラットフォーマーを目指しているのです」と説く。CPSとは、リアルの世界(フィジカル)からセンサーなどを通じて収集したデータをAIなどコンピューター技術によるサイバー空間で解析し、新しい価値を創出しようとする取り組みのことを指す。

 2010年代の世界企業の時価総額をみると、資産価値1兆ドルを超えたアップルを筆頭に、サイバーを出自とする企業がトップに名を連ねている。そこにかつて元気だった日本企業の姿はない。

 同氏は「東芝の時価総額とは非常に大きな差が開いていますが、しかし本当にそれほどの開きがあるのでしょうか? 実際には我々のほうが難しいことをやっているにも関わらず、彼ら(GAFA)のほうがもうけているのです」と指摘する。

 では、なぜ彼らが勝ち続けるのか。その理由は、彼らには独自のビジネスモデルがあり、誰もが使うプラットフォームを実現しているからだ。

「プラットフォームというと、日本ではバリューチェーンを思い浮かべるでしょう。しかし、これらは生産・卸・物流・小売りまで仲間内で閉じられた世界です。バリューチェーンをデジタル化すると全体の売上は小さくなります。マーケットシェアが変わらず効率化されてしまうためです。もし収益を上げようとするなら中抜きが必要になってきます」(島田氏)

 一方で、いま成功しているサイバー企業は、「レイヤースタック・エコシステム」と呼ばれるプラットフォームを構築していると島田氏は話す。

「こちらは敵も味方も織り交ぜた呉越同舟で、サービスをプラットフォーム上に展開するアプローチです。自分たちの企業と関係ないものまでモジュラー化して1つのサービスにまとめ、サブスクリプションで提供するビジネスモデルです」(島田氏)

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成功しているサイバー企業は、従来のバリューチェーンでなく、「レイヤースタック・エコシステム」と呼ばれるプラットフォームを構築している

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 これらエコシステムを築く企業の特徴は、他人のふんどしで相撲を取るような形で、物理的なアセット(資産)がないことだ。たとえば、部屋を一室も持っていないのに世界最大のホテルチェーンになったAirbnbや自動車を持っていないUberが代表的だろう。

「しかし、このプラットフォームを構築するのは容易な話ではありません。彼らは2種類の顧客のツーサイド・プラットフォームを満足させる必要があるからです。Uberではドライバーも乗客も顧客です。その両方がないと商売として成立しません」(島田氏)

 島田氏は「いま本当に必要なのは、プラットフォーム化して、お金をもらわない側とお金をもらう側とに顧客を分けることです。グーグルは、AndroidやGoogle マップを提供しましたが、顧客からお金をもらっていません。ところが、代わりに顧客から情報を受け取って、それを販売しているわけです。いまでもグーグルの利益の9割は広告です」と説く。要は、いかに従来とは違うところからマネタイズできる方法があるのかを考えることが重要だという。

 さらに必要なのは、自分の仕事の範囲を広げる連続的な「デジタル・エボリューション」だ。

 これまでサイバー企業は、Cyber to Cyberで、PCやスマートフォンから集めたデータを使ってもうけていた。ところが最近は、サイバーだけでは限界が来ている。アリババやアマゾンがリアル店舗を出すようになったのも、そういった背景がある。

「東芝は自動改札機やETC、レジ機など多くの製品を世に出してきたのに、そこから出るデータについて何もしてきませんでした。これらのデータを活用し、サイバー企業の情報と組み合わせられるなら、新たな価値を作れるでしょう。これをサイバーフィジカル(CPS)と呼び、“第二の創業”を実現しようとしています」(島田氏)

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これからの東芝の方向性は、フィジカルでの自社の強みを生かしながらサイバーと融合し、新たな価値をつくっていくこと

 そこで東芝は、「データセントリック」「自社アセットの活用」「ライトアセット」「リカーリングモデル」(ハードではなくサービス化して提供)という4つの条件を掲げ、同社が長年にわたり蓄積した顧客基盤・技術・製品をフル動員して、高収益で高成長のCPS事業を次々に立ち上げていくという。

【次ページ】POSデータ、ロボット、インフラなど、シェアが取れる領域で戦う

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