沖縄県は8日、うるま市の養豚場の豚が豚コレラ(CSF)に感染し、隣接する養豚場では沖縄固有種のアグーからも陽性反応が出たと発表した。計1813頭の殺処分を決定したほか、養豚場から半径10キロ以内を搬出制限区域に指定するなど、感染拡大を防ぐ緊急措置を取った。感染が判明した養豚場では、昨年12月20日ごろから今月6日までに約50頭が不審死していたことも分かった。同日の沖縄県への通報まで2週間以上経過しており、発覚が遅れた。

石灰がまかれ、殺処分が進められた豚舎=8日午後1時23分、うるま市(小型無人機で撮影)

 沖縄県内の発生確認は1986年10月以来33年ぶり。玉城デニー知事は感染拡大を防ぐため、自衛隊に災害派遣を要請した。関東や中部地方などに広がるCSFの被害抑制を目指してきた国は、海を隔てた沖縄で新たに確認されたことを深刻に受け止めており、専門チームを組織して詳しい感染経路を調べている。

 沖縄県によると、養豚場から6日、沖縄県に通報があり、国の遺伝子検査で8日に感染を確認した。別の業者が運営し、隣接する養豚場のアグー豚からも県の検査で陽性反応が出たため、緊急性があると判断し、独自の判断で殺処分を決めた。

 沖縄県が養豚場へ聞き取りしたところ、昨年12月20日ごろから死ぬ豚が急増。養豚農家は解熱剤や抗生物質を与えるなどして経過観察を続けたが、1月6日までに約50頭が死んだ。一方、12月26日に25頭を出荷していた。

 この養豚場では、餌に食品残渣(ざんさ)を与えていたが、衛生管理の手法として県などが呼び掛けていた加熱処理をしておらず、指導が浸透していなかった可能性もある。

 感染が確認された養豚場では8日、獣医師や自衛隊員らが豚を殺処分する作業に参加。市内の別の場所では建設業者の作業員らが豚を処分する穴を掘り、同日深夜、埋却作業を始めた。

 沖縄県は豚や農具などの移動を禁じる半径3キロの移動制限区域、これらの域外への移動を禁じる半径10キロの搬出制限区域を設定。農場出入り口を含め計8カ所で消毒作業も実施し、延べ222人を動員した。

 CSFは豚やイノシシ特有の家畜伝染病で、発熱や食欲減退などの症状が現れる。強い感染力と高い致死率が特徴。ただ、人にはうつらない。

 玉城デニー知事は県の対策本部会議で「感染した肉を食べても人体に影響はない。冷静に対応してほしい」と呼び掛けた。

 国内では熊本県で1992年に感染が確認されてから動きがなかったが、2018年9月に岐阜県で見つかった。感染は沖縄を含め10府県に拡大している。

[ことば] 豚コレラ(CSF) 豚やイノシシ特有の家畜伝染病で、発熱や食欲減退などの症状が現れる。感染力が強く、致死率が高いのが特徴。人にはうつらず、感染した豚の肉を食べても影響はない。国内では1992年以降、未確認だったが、岐阜市内の養豚場で2018年9月、26年ぶりに確認された。