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あたしの可愛いモン娘たち 作者:クロべぇ
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06.魔物の世界へ

 無事に北の都を脱出して、北の魔王の城へ向かうあたし達。

 麒麟、すごい速さで飛んでるな……。

 北の砦らしきところまであっという間に着いて、すぐに見えなくなる。

 しかも背中に乗ってるあたしたちには風すら来なくて快適だ。

 魔法なのかなあ。

 そして北の魔王とやらの城が見えてくる。

 うーん、数時間だったけど快適な旅だった。

 さて、入れてもらえるのかな?


『我は神獣、麒麟なり。我が主を通していただきたい』


 お、あっさりとお城の門が開いた。

 すごいな、トントン拍子に事が進んでいくぞ。

 あたしたち4人ははちび麒麟に連れられて降りていく。

 麒麟はさすがにでかすぎて入れないから外でお留守番をしてくれるようだ。

 さてどうしようか、待っていればだれか出てくるかな?


――ユウナよ、城の主に話をつけた。中で話してくるがよい――


 お、ありがとね。

 うーん、話が早くて助かるなあ。

 少し待つと誰かがやってきた。

 ん?なんだか賢そうな女性?というか魔物?

 なんで賢そうなのかと言うと、眼鏡をかけて手に本を持っている。

 さらに、周りに本が浮いている。

 学者さんっぽい帽子?平たい正方形が乗ったようなやつをかぶっている。

 うん、わかりやすく賢そうだ。

 さらに言うと美人で、眼光が鋭い。正直かっこいい……。


「ヴェリア様のお城へようこそ。まずは私達の同胞を救っていただいたことに感謝したします」

「どういたしまして、早く休ませてあげてね。あとこの人間、リリアさんも……人質として連れてきたんだけど、丁重に扱ってほしいの」

「了解いたしました。間もなく医療部隊が来ますので。あ、申し遅れました。私はこのお城で参謀をしているグリモアと申します」


 グリモアさん……名前も賢そうだぞ。

 お、担架を抱えて何人かやってきた。

 みんな服を着ているけど、人間ではなさそうだ。

 ただ、共通してみんな可愛いぞ。

 犬っぽかったり猫っぽかったり、羊っぽいのもいるな。

 ゲームとかでよく見る獣人的な?もしくはモンスター娘?

 これがあたしの憧れてた世界だよ。


「無事帰ってきて良かったー」

「早く魔力を回復させなきゃ」

「あれ?こちらはもしかして人間?」

「わあ、わたし初めて見たよ」

「その人間はお客様扱いで丁重に扱うのだ。ただし、部屋には鍵をかけておくように」

「わかりました。うう……緊張するなあ」


 なんだかわいわい楽しそう。

 喜んでるなあ、助けてきて良かったよ。

 リリアさんに対しては、なんだか緊張してるような感じだけど、興味深そうにもしているのかな?人間は魔物を心底嫌っているけど、魔物は人間を嫌ってないみたいだね。

 任せても大丈夫そうだ。

 でも、あとで謝り行くのが怖いな……。

 恨まれてるよね……。

 さて、まずはここの女王様とお話をしよう。


「それではユウナ様、参りましょう」

「わかった。あれ?あたし名前言ったっけ?」

「麒麟様よりお聞きいたしました」

「そっか。麒麟とすぐに話がついたみたいだけど、麒麟のこと知ってたの?」

「名前は初めてお聞きしましたが、最強の神獣であるその存在をヴェリア様は知っていたようです」

「なるほど。名前はあたしがつけたばかりだからね。でも知ってる人は知ってる存在なんだね」

「そうですね。ヴェリア様は遥か昔より生きておられますので」


 氷の女王ヴェリアさん、どんな人なんだろうなあ。

 そういえばリリアさんが、すごく寒い氷に覆われた城って言ってたね。

 それは人間がイメージしたもので、事実ではなかったんだろうなあ。

 だってここ全然寒くないんだもの。

 あ、おっきなドアが見えてきた。


「こちらへどうぞ」

「ありがと」


 グリモアさんに連れられてドアをくぐる。

 なんだか緊張してきちゃったな。

 玉座って感じの場所だ。

 真ん中にある椅子にはだれかが座っている。


「ヴェリア様、ユウナ様をお連れしました」

「うむ、来るがよい」

「ユウナ様、どうぞお進みください」

「うん」


 緊張しながら進んでいく。

 とりあえずわかるのは、氷の女王は美人ということだ。

 基本的には人間の形のよう。

 氷でできているかのような美しく長い髪。

 雪国育ちのような白くてきれいな肌。

 なんだか周りがキラキラしてる?雪の結晶?

 なんていうか神秘的だ。


「そなたがユウナか。麒麟より話は聞いた。その勇気ある決意に感謝する」

「あ、あの……。女王様、ご機嫌うるわしゅうございまする……?」

「ふふ、そう固くならずともよい。いつも通りでよいぞ」

「あはは……。えっと、どういたしまして。無事助けられてよかった」

「正直かなり嬉しい事態だ。ここ千年分の歴史がひっくり返るほどのな」

「そ、そうなんだ……」


 うーん、なんだか照れちゃう。

 氷の女王様だから冷たいのをイメージしてたけど、なんてあたたかい微笑みをするんだろう。綺麗だなあ。うん、あたしのしたことは間違ってなかったよね。


「礼はいくらしてもし足りぬほどだ。して、そなたはこれからどうするのだ?」

「えっと……実は何も考えてなかったり……。行くところもないからここに置いてもらえないかなーなんて思ってたり……」

「ふむ、それは構わぬ。そなたなら皆にも歓迎されるだろう。部屋も用意させよう。」

「ありがとう」


 うーん、ほんと何も考えてなかったな。

 とりあえずここにいさせてもらおう。

 皆歓迎してくれるのか……。

 あのかわいい子たちと仲良くなれる?

 ちょっと楽しみかも。


「今日は疲れたであろう。グリモアに部屋まで案内させるゆえ、ゆっくり休むがよい。なにかあれば、グリモアでも城にいる誰にでもよいので聞くといい。この城は自由に歩いてもらって構わぬ。なんなら、部下にしたい者を選んでおいてもいいぞ」

「え?部下?」

「うむ、そなたに助けられた者など、部下になりたがる者はたくさんいるはずだ」

「そうなんだ……」


 部下……。そう言うと楽しい響きではないけど……。

 一緒にいてくれる存在と考えてみよう。

 うーん、なんだか楽しくなってきたなあ。


「それではユウナ様、部屋へ案内いたします」

「うん、おねがい。それでは女王様、ありがとうでした」

「うむ、ゆっくり休むとよい」


 あたしはグリモアさんに連れられて部屋へ移動する。

 途中でたくさんの魔物達と会う。

 基本的にみんな人型みたいだ。

 なんとなく、あたしを羨望のまなざしで見つめてくるような?

 なんだかアイドル気分?

 人助け……というか魔物助けってするもんだね。

 かわいい子がいたので手を振ったら真っ赤になってた。


「魔物は凶悪って人間から聞いてたんだけど、みんなかわいいし……あたしここ気に入ったよ」

「そう言ってもらえると皆喜びます。人間には誤解されたままなのです」

「やっぱりそうなんだ……。なんでなんだろう?」

「千年以上前から伝わる……女神アルティアナ様の教えによるものでしょうね」

「そうなんだ……」


 むう、やっぱりあの女神は悪物か?

 でも、グリモアさんもちゃんと様付けしてる?

 不思議だなあ。


「女神アルティアナ様ってあなたたちにとってどんな存在なの?」

「美しく、憧れの女神様ですね」

「そっか……」


 うーん、よくわからないぞ??

 女神の教えのせいで魔物は悪者にされてるのに……うーむ?


「女神様についていろいろ知りたいのであれば、城の皆に聞くといいですよ。わたしが全て教えてもいいのですが、複数の意見を聞くほうがよいと思われます。この話を通じて皆と仲良くなっていただければと思いますので」


 困惑した感じのあたしに気付いたのか、そう言われた。

 ふうむ、なんだかややこしそうな話なのだろうか。

 とりあえず、皆と仲良くなるきっかけに使えるらしい?

 ま、おいおい知っていこうかな。


「それではこの部屋をお使いください。リリア様は隣の部屋です。ユウナ様にも鍵を預けておきますね」

「うん、ありがとう」

「それでは後ほど夕食を運ばせます。なにか用事がある場合はそこにあるベルを鳴らしてください」

「わかった、いろいろありがとうね」

「いえ、それでは」


 あたしに用意されたのは豪華な部屋だった。

 広めだし、いろいろなものがそろってるみたい。

 ホテルのスイートルームとか、当然行ったことはないけどこんな感じなのかな?

 相変わらずあたしはお姫様気分だ。


 さて、とりあえず隣のお部屋を覗いてみようかな。

 リリアさんの顔を見るのは気が重いけど……行かなきゃね。


 コンコン。ちゃんとノックしてと……。

 ガチャ。あ、中から開いた?

 中から顔を出したのは、とてもかわいい……羊のような女の子?

 基本的には人型だけど、羊のような角、羊のようなもこもこの髪。

 服装は、白いエプロンドレスのようだけど、全体的に羊のようなもこもこ感。

 抱きしめたらさぞかし気持ちいいのだろう。


「あ、おじゃまするね。この部屋にいるらしいリリアさんを見にきたんだけど」

「あ、先ほどの……仲間を連れてきていただいた方ですね。どうぞお入りください」


 あ、このお城に入った時にいた羊っぽい子か。

 あの時はよく見てなかったけど、かわいいなあ。

 部下になってほしいかも……。


「リリアさんはどうだろう?」

「疲れていたのか、よく眠っているようですね。今日はこのまま休んでいただくのがいいと思います。これから安眠の魔法をかけようとしていたところです」

「あ、そんなことできるんだ。ぜひそうしてあげて。ゆっくり休んでほしいんだ」

「はい……。リリア様のことはお任せください。あの、お名前を聞いてよろしいですか?」

「あ、ユウナだよ。よろしくね」

「ユウナ様ですね。よろしくお願いします。それではここは私に任せてお休みください」

「うん、じゃあよろしくね」


 邪魔をしても悪いので、すぐに部屋を出ることにした。

 あ、名前聞いてないや。また今度でいいか。

 あたしは自分の部屋でのんびりする。

 しかし、ドレス姿ってなんだか落ち着かないな。

 夕食が来たら聞いてみよう。

 あ、麒麟はどうしてるんだろう?おーい。


――どうやら問題なかったようだな――


 あ、いたいた。

 麒麟のおかげで簡単に話が進んだよ。さすがだね。

 それでどうしようか、戻した方がいいのかな?


――いや、このあたりは人が来ることもなく快適だ。このまま休ませてもらいたい――


 わかった、のんびりしてね。


――うむ――


 なんだかバカンスを満喫してるみたいだな。

 さて、あたしものんびりしようか。


 コンコン。

 ベッドでしばらくごろごろしているとノックの音がした。


「はーい」

「おじゃまします。お食事をお持ちしました」


 むう……男の声か。

 中に入ってきたのは、顔に魚のひれのようなのがついた魔物。

 かなりのイケメンなんだけど、あたしの興味の範囲外である。

 うーん、世話役は全部女の子にしてほしいって言うべきかな。

 男が苦手と言えば、変にも思われないだろうな。

 人魚男?さんは手際よく食事をテーブルに並べていく。

 おいしそうだなー。


「それではごゆっくりどうぞ、なにか困ったことなどありましたら申しつけください」

「あ、着替えとかないか聞こうと思ってたんだけど……」

「そうでしたか、それでは……後ほど女性の者をよこしますので」

「うん、ありがと」

「では失礼いたします」


 ナンパしてきそうな顔だったのに、特に何もなかった。

 うーむ、紳士だな。態度と対応は100点だ。

 あたしが正常な女の子であればあっさり惚れていたかもしれない。


 さあ食事にしようか、なんていうか豪華だなあ。

 魔物の出す食事と言うことで少し警戒していたけどおいしそう。

 ただ、お肉はなくて野菜ばかりな感じ。

 これはなんとなくわかる。

 魚でも動物の肉でも、このお城にいる誰かが共食いしてる気分になりそう。

 でも野菜だけでも美味しいなあ。

 あたしも今日から菜食主義者の仲間入りになっちゃうな。

 1人でさみしい以外は、快適な食事時間だった。


 さて、だれが来るのだろうか?

 なんとなく、合コンで相手を待つ時の気分?

 合コンなんて行ったことないけどね。

 女の子同士の合コンとかあったら喜んでいっただろうけどさ……。


 コンコン。

 来た!あたしはドアに駆け寄り、開ける。


「失礼します。着替えが必要とのことでしたので持ってまいりました。

「わあ、ありがとう」


 廊下には移動できるハンガーラック的な物があり、たくさんの服が掛けられていた。わざわざ持ってきてくれたんだね。

 持ってきてくれた子は、犬のような子だ。

 犬耳としっぽが付いている。体毛もあるみたい。

 毛の色は白と言うか銀色?なんとなく柴犬っぽい。

 そういえば耳や尻尾も柴犬っぽいかなあ。

 顔は人間って感じだけど、普通耳のある位置には何もないっぽい。

 鼻の頭が少し黒っぽいのが犬っぽい?

 髪の毛は毛の色と同じで肩くらいまでだ。

 うんうん、かわいいな。


「とりあえず入ってね。中でいろいろ見せて」

「はい、失礼いたします」


 中に入って、服はさておき犬っ娘をよく見てみる。

 あれ?なんだか見たことがあるような??

 そうだ、リリアさんと泊った村で殺された魔物……そっくり?

 むー、記憶力はいい方じゃないから自信はないんだけど……。

 あの時の光景は目に焼き付いているんだよなあ……。


「どうかなされましたか?」

「あ、ごめんね。どこかで見たことあるような気がして……」

「そうですか、似た顔の魔物がいるのかもしれませんね」

「そうかも……」


 うーん、どうなんだろうなあ?

 あの殺された子……最後にキキョウの花を握りしめてたっけ……。

 そうだ、麒麟に頼んでキキョウの花を探してもらおう。

 おーい、ちび麒麟にお願いだー。


――承知した――


 わーい、ありがと。

 では、着替えをしようかな。


「寝間着になるようなのはあるかな?」

「そうですね、こちらなどはおすすめです」

「わ、なんだかすべすべ」

「蚕の魔物がおりまして、服を作っております」


 なるほど、これはシルクなのか。

 あたしが身に着けている下着と同じ感じだ。

 とりあえずこれでいいかな。


「じゃあこれ着ようかな」

「はい、どうぞ。それでは失礼いたしますね。あ。他の服もよろしければこのまま置いておきますが」

「あ、じゃあお願い、見てみるね」

「はい、ではあちらの方に……」


 あれだけあればしばらく1人ファッションショーが楽しめそうだ。

 ん?このドレスどうやって脱ぐの?

 よし、手伝ってもらおう。


「あ、ごめん。着替え手伝ってもらえないかな?実はこのドレス着せてもらったから脱ぎ方わからないんだ」

「はい、わかりました。それでは失礼いたします」


 犬っ娘の手があたしのドレスに触れて調べていく。

 あ、名前聞かなくちゃ。


「ねえ、お名前教えてくれる?」

「えっと……、まだありません」

「え?なんで??」


 名前がないっておかしいな。

 人間が家畜に名前をつけてない理由はわかったけど、魔物は関係ないよね?


「わたしたちは、名前をつけてくださるご主人様が現れるのを待っているんです。名前をつけてくださった方に一生お仕えする。それがわたしたちの夢です」

「え……」


 名前、つけてあげたいな……。

 そのご主人様ってあたしでもいいのかな?

 でも、そうなるってことは一生面倒見る覚悟が必要なんだよね。

 あたしに務まるのだろうか?

 あ、ヴェリアさんに言われた部下にするってのはそういうことなのかな?


「ご主人様って誰になってもらうの?身分が上の魔物とか?」

「人間ですよ」

「え!?」


 えっと?この魔物達は人間に名前をつけてもらって仕えたがってるの?

 ちょっと頭が混乱してきたよ。

 だとしたら、その夢は叶わないんじゃないの?

 人間は魔物をあんなにも嫌っているんだよ?

 なんか……悲しい……。


「あ、そんな顔をなさらないでください。たしかにわたし達魔物は人間に嫌われています。ですが、いつかその時が来るかもしれないとみんな期待しているんです」

「そ、そうなんだ……」

「はい」


 この犬っ娘の笑顔は……絶望なんて全くない……。

 とてもいい笑顔だ。

 あたしはこの魔物達の願いを叶えてあげたくなった。

 世界を平和にする……。

 つまり、人間と魔物を仲良くさせろってことだよね?


「背中にファスナーがあるようです。とても素晴らしいドレスのようですね。見つけるのに苦労してしまいました。おろしますね」

「あ、うん……」


 そうそう、着替えの途中だった。

 魔物のことは後でゆっくり考えよう。

 ドレスを脱がされながら、これを最初着せてもらった時のことを思い出す。

 リリアさん、女性の勇者が珍しいからはりきって用意したって言ってたな……。

 やばい……考えてると泣きそうになるよ。

 リリアさん、ここの魔物を見て考え直してくれないかな?

 こう考えている間にあたしは下着姿。


「ユウナ様、お肌がとても綺麗ですね」

「うん、ありがと」

「実はわたし、人に会うのも触るのも初めてでして、緊張しています」

「そっか、好きなだけ見て触っていいよ」

「あ、いえ……。そんな畏れ多い……」


 ちらっと見ると、顔を真っ赤にしている。

 うーん、かわいいな。この反応はいいよ。

 なでなでしたいなあ、着替え終わったらお礼とともにやってみよう。


「それでは、着るのも手伝わせていただきますね。手をあげてください」

「うん、おねがい」


 あたしは手をあげて服を着せてもらう。

 うーん、すべすべ。さっきのドレスより触り心地がいいかも?

 蚕の魔物さんにお礼を言いに行きたいかも。


「着心地のほうはいかがでしょうか?」

「うん、最高だよ。ありがとね」

「それはよかったです」

「あ、ちょっとそのまま動かないで」

「はい?」


 お辞儀をした状態で止まった犬っ娘の頭をなでなでしてみる。

 うーん、髪の毛ふわっふわだ。


「ありがとねー」

「ひゃううううう!?」

「えっ?」


 あ……あれ?なにか悪いことしたかな?

 悲鳴をあげて地面に崩れ落ちちゃったよ?

 なでちゃだめだったのかな?


「ご、ごめんね?あたし変なことしちゃったかな?」


 犬っ娘は顔を真っ赤にして、うるうるした目で見上げてくる。

 なんだろうか?


「す、すみません……。よくわからないのですが……なんだかとても気持ちよくて……」

「そ、そうなんだ……」

「はい……なんででしょう……?」


 うーん、気持ちよかったのか……。

 むむむ……?

 なんだかとても嬉しいことのような気はするけど、あたしの頭も混乱している。もう少し触ってみて確かめたいけど、今日はやめておこうか。


「なんでだろう?ごめんね、変なことしちゃって……」

「いえ、問題ありません。それでは失礼しますね。よい夜を」

「うん、ありがとうね」


 犬っ娘は顔を赤らめたまま早足で去っていった。

 うーん??なんだかセクハラした気分?

 でもなんだろう、とても楽しくなってきたよ?

 あんな風にかわいがれる子を部下にしたいな。

 あ、料理のお片づけはあの子がするんだったっぽいけど……。

 まあいいか、置いておこう。


 さて……とりあえずベッドで横になろうかな。

 明日からやることは……いろいろあるな。

 まずなにより、リリアさんだ。ちゃんと話をしないとね。

 一番いいのは魔物達が人間に害を与える存在じゃないと知ってもらうことなんだけど、これは難易度が高いぞ。洗脳でもしなきゃ無理なくらい教えが根付いているはずだ。この魔物のお城でちゃんと生き延びて、しかもそれなりの待遇を受けているんだから少しくらいは信じてほしいな。

 だめだったら、ちゃんとリリアさんが帰れる方法を考えよう。

 あたしの頭じゃ無理だから、グリモアさんさんあたりにも協力してもらって……。

 あれ?なんでグリモアさんは名前があるんだろう?明日聞いてみよっと。


 あとは部下かあ。

 魔物達は名前をつけてくれる主人を欲しがっていると……。

 なんだか魔物って言うよりペットって感じだよねえ。

 可愛がっていいのだろうか?

 部下ってなにするの?一緒に戦う?戦いはさせたくないよ?

 人間と魔物が仲良くする方法を考えるってのがいいかなあ……。


 ん?まてよ?

 あたしは今完全に魔物がいい子たちと考えているけど、それは大丈夫なんだろうか?

 あの謎の声の神様?に洗脳されたりしてないかな。

 うーん……でも今のところおかしな点はないし。

 魔物達かわいいし……。

 えーと、洗脳されてたらこんな疑問持ったりしないよね?

 うん、麒麟を信じよう。


――ちび麒麟がそちらに行くぞ――


 あ、お花摘んで来てくれたのかな?

 というか麒麟、さっきまでのあたしの思考に無反応?

 照れてるんだとしたらかわいいな。

 コンコン。

 おや?ドアがノックされたぞ。

 開けると、ちび麒麟がかわいく2足立ちして前足の肉球でキキョウの花をつかんで持っている。とりあえずかわいいので抱きしめてみた。この子は女心をわかっている。いや、分身なんだし麒麟がわかっているのか。


「はいってー、今日は一緒に寝ようね」


 ちび麒麟を部屋に招き入れ、まずは花を受け取る。

 おお?根っこもちゃんとある、というか土ごと持ってきている。

 植物に優しいねえ。いい子だ。

 あたしは部屋にあるコップにそれを入れ、水差しから水を注ぐ。

 よし、また会えたらさっきの犬っ娘に見せてみよう。


 あたしはちび麒麟を抱っこしてベッドに横になる。

 うーん、もふもふ。

 幸せだなあ……。

 そういえば、元の世界に戻る手段を失くしちゃったなあ。

 まあいいか、ここはここで楽しそうだよ。

 お気楽過ぎるかな?

 でもきっと大丈夫。

 そんな予感がするんだ。

 というわけでおやすみ……。

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