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あたしの可愛いモン娘たち 作者:クロべぇ
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03.メイドさんがいっぱい

これまでのあらすじ

異世界に勇者として召喚されて、馬車で移動させられてるあたし。勇者の使命は魔物を倒すことらしいんだけど、道中で出会った魔物はこの上なく可愛かった。見た目と違って凶悪らしいけど……ほんとかな?あたしにつきそってくれている美人のリリアさんは嘘つくような人には見えないんだ……。

 それから3日ほど馬車に揺られて、間もなく北の都ノースリアに着くらしい。

 ここまでの間、リリアさんにこの世界の常識を教えてもらった。

 一般的なマナーはあたしの住んでいた世界となんら変わりない。

 気候に関しては北だから寒いわけでもなく、どこも同じくらいだそうだ。

 あたしに優しい世界だね。


 違うのはやっぱり魔物に対してかな。

 人々は魔物を恐れている。

 あたしみたいに魔物に同情しちゃう人は犯罪者扱いなんだってさ。

 あたしは異世界から来た勇者だからちょっとくらいは見逃してもらえるけど、なるべくそういった態度は出さないようにと注意されてしまった。

 なんて言うか……ショックだった。

 これを言う時のリリアさんが申し訳なさそうだったことだけが救いだったかな。

 こんなことをもし責めるように言われてたら、あたし立ち直れなくなるよ。


 あと……動物に対してもこの世界は冷たいようだ。

 まずペットを飼う場合は、きちんと調べられて許可の出た動物だけを飼えるらしい。さらに税金もかかる。金持ちの道楽な感じ。

 野良動物なんて殺されることも多いとか……。

 なんでこうなるかって言うと、魔物が化けてる可能性があるんだってさ。

 そんなわけでペットを飼う人も稀だし、家畜もあまりいい扱いではないようだ。

 だから馬に名前もないし、薬漬けにしてあっさり使い捨てたわけだ。


 はあ……あたし正直この世界嫌いだ。

 あたしの好きなことがなにひとつできないんだもん。

 そりゃあ、女の子と恋仲になれないのは百歩譲って我慢するよ。

 あの可愛い魔物と仲良くなれないのもまあ仕方ない。

 でも動物すら簡単に可愛がれないってなんなのよ。

 ああ……気が重い。


「勇者様、見えてきました。北の都、ノースリアです」

「んー、やっと着いたんだね」

「はい、長い間申し訳ありませんでした」


 ようやくだ。

 やっと退屈な馬車生活から解放される。

 美味しいご飯に豪華なベッドにお風呂も入りたいなー。


「勇者様、これから領主さまのお屋敷にて休んでいただきますが、その前に少し街を歩いていただきますね」

「歩いてなにするの?」

「人々が勇者様を一目見ようと集まっているのです。いわばちょっとしたパレードといったところでしょうか」

「えー、なんか恥ずかしいよ」

「大丈夫ですよ。そのためにドレスも着ていただいきました。皆勇者様に見とれるはずです」

「むー、そっかなあ。リリアさんの方がよっぽど綺麗だけど」

「ふふ、自分で自分のことはわからないのです。勇者様は私なんかよりよほど綺麗なんですよ」

「うーん……」


 うーん……そりゃああたしだって自分ではそこそこ可愛いと思ってるよ。

 でもリリアさんの方が間違いなく上だよ。

 端正な整った顔立ち。目も大きいしまつ毛も長いし。

 こんな大人っぽい美人はあたしの憧れだ。

 そもそも化粧してないよね?

 あたしは若いから化粧なんてしないけどさ、リリアさんくらいの年齢で化粧なしでこんな綺麗ってすごいことだよ。

 そう考えていると馬車が止まったようだ。


「勇者様、行きましょうか。お体は大丈夫ですか?」

「うん、ちゃんと歩けるよ」


 あたしはリリアさんに手を取られて歩き出す。

 ちょっと緊張するな。

 慣れないハイヒールで転ばなきゃいいけど……。

 あ、人がたくさんいるのが見えてきた。

 兵士らしき人が人を整理してる。

 いつ集めたんだろう?

 先行してたランベル将軍が帰還を連絡してたのかな?


「勇者様、皆に手を振ってあげてくださいね」

「う、うん。やってみる……」


 うう……歓迎されてるんだろうけど、恥ずかしいよぉ。

 もうすぐ顔の見えるところまで近づくな。

 声も聞こえてくる。


「勇者様―、ようこそおいでくださいましたー!」

「私達を守ってくださいねー!」

「勇者様―、お綺麗ですー!」

「魔物を倒してくだされー!」


 わあ、予想以上に歓迎されてる。

 なんだか嬉しいな。綺麗って声も多いし……。

 うふ、にやにやしちゃう。

 あ、手を振らなきゃね。

 あたしは集まってくれた人たちを見ながら手を振る。


 それにしても、この世界には美男美女が多そうだぞ。

 人を作った女神様は美的センスに優れているようだ。

 うーん、こんな綺麗な女性達と仲良くなれないのがつらいぞ。

 いっそ、女の子並みに可愛い男の子でも探そうかな。

 ショタに転向するのも悪くないと考えてしまうあたし。








 はあ……歩くだけで疲れ切っちゃったよ。

 ようやくお屋敷にたどり着いて一息つく。

 領主様とやらは今はいないみたい。

 正直助かる……早く私を休ませて。


 屋敷の中に入ると4人ののメイドさんに囲まれる。

 ロングスカートのクラシックなメイドさんたちだ。

 みんなとても綺麗。

 あたしは本当にお姫様になった気分。

 ああ……これがハーレムだったらなあ……。

 でも、こんな好待遇の暮らしなら長居するのも悪くない。


「勇者様、それでは今日はゆっくりお休み下さい。明日の朝迎えに参ります」

「わかった、ありがとね」


 そう言ってリリアさんは去っていった。

 お世話係と言っても常にお世話してくれるわけではないんだね。

 ここからはメイドさんたちのお世話になろう。


「勇者様、まずはお風呂で体を癒してくださいませ」

「うん、ずっと入りたかったんだ」


 メイドさんたちに連れられてお風呂へ移動。

 おっふろー。この世界はどんなお風呂だろう?

 きっと大きいよね?


「勇者様、失礼いたします」

「ん?」


 お風呂場の脱衣所に着くなり、メイドさんたちに服を脱がされちゃうあたし。

 あっという間に裸にさせられ、体にはタオルが巻かれている。

 手際よすぎだね。練習してるのだろうか?

 あたしはこの美人ぞろいのメイドさんたちがお世話の練習のために、交代で服を脱がしあっている光景を想像してみた。

 メイドさんになるのも楽しそうだな……。

 そのままお風呂に連れていかれる。

 メイドさん達は脱がずに、袖とスカートをまくっている状態。

 少し残念。スカートをまくっているといってもそこに色気はない。

 メイドさんとしての魅力が減っただけだ。


「わあ、広いお風呂だなあ。気もちよさそう」

「勇者様、お背中を流しますね。

「うん!」


 メイドさん達が手に持つタオル的なもので、あたしは泡だらけになる。

 背中だけでなく、胸やお尻や脚。体中を洗われる。

 あっという間に綺麗になるあたし。

 背中の流しっこという素敵イベントはないまま湯船につかる。

 ああ、天国だなあ……。


「勇者様、ごゆっくりしてくださいね」

「うん、でもみんなは入らないの?」

「わたしたちは後で入らせていただきます」

「一緒に入ればいいのに」

「勇者様と一緒に入るなんて畏れ多いですわ」

「そんなことないのになあ……」


 メイドさん達は皆、あたしに背を向けて立っている。

 見てくれてもいいのになあ。

 あたしの裸に興味はないか……。

 きっと仕事を淡々とこなしているだけだ。

 あ、このメイドさん達にもいろいろ聞いてみようかな。

 あたしのこの世界の知識ってリリアさんに聞いただけだもんね。

 他の人の意見も気になる。


「ねえ、みんなは魔物についてどう思ってるの?」

「恐ろしい存在ですね」

「勇者様が倒していただけるのをみな期待していますわ」


 うーん、ここはリリアさんと同じか。

 やっぱり魔物は嫌われてるね。

 理由とか聞きたいな。


「魔物にひどい目にあわされたりしたの?もしくは知り合いが被害にあったとか」

「私は特にないですね」

「私もないです」

「私もないですわ」

「私もないですね」

「そっか……」


 4人が全員ないと答える。

 んー、魔物に被害は受けてないけど怖がってるのか。

 なんかおかしいよねえ……。

 もっとひどい目にあった話とか聞いてやる気を出したいんだけど……。

 全く参考にならない。

 あとは、もう一人いる勇者のことを聞くか。


「勇者がもう1人いるって聞いたんだけど、会ったことある?」

「はい、その勇者様もこちらでお世話させていただきました。とても素敵な方でしたわ」

「活躍もされてるそうですし、私お嫁にもらってほしいですわ」

「みなそう言ってますね。でも勇者様同士でくっつかれる可能性も出てきましたね」

「それでしたらお似合いですし、仕方ないですよ」


 なんだか急にメイドさん達のテンションが上がって女子トークだよ。

 あたしが女の子でごめんねって言いたくなる。

 勇者はやっぱりモテるんだなあ。

 はあ……あたしも女の子にモテたかったよ……。


 こんな感じで大した情報も得られないままお風呂タイム終わり。

 またも鮮やかな手際で服を着せられて終了。

 これはネグリジェかな?

 なんだかとってもセクシー。


「勇者様はお疲れとのことですので、すぐ眠れるような格好にさせていただきました。これからお部屋で夕食を食べていただきますね」

「うん、気を遣ってくれてありがとうね」

「もったいないお言葉です」


 正直何度も着替えるのは大変なので助かる。

 わたしはメイドさんの1人に案内されて部屋へ移動する。

 他のメイドさんは食事の準備に行ったようだ。


 そんなわけで、豪華な部屋で豪華な食事をして、気分はお姫様。

 この世界の食事はあたしの口にあうようだ。

 食って大事だもんね。

 というわけで後は寝るだけ。


「おやすみなさいませ勇者様。なにかありましたらそちらのベルを鳴らしてくださいね」

「わかった、ありがとうね。おやすみ」


 ふう、やわらかなベッドだ。

 疲れを取ろう。

 でも、今までずっとリリアさんが近くに寝てたから、今日はさみしいな。

 1人になると切ない。

 ちょっとお母さんが恋しくもなったり……。

 あたしの体に入ってるらしい仮の魂はちゃんとしているのだろうか。

 クラスの女の子との仲を進展させてくれたりするのだろうか?

 仮の魂がこの世界産だとそれは期待できないかな……。

 同性愛禁止の世界って悲しいな……。

 いろいろ考えながら、いつしかあたしは眠りに落ちていた。

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