ブラック企業の横行が叫ばれて久しい。だが、こうした現状を国が許してしている面があるという。弁護士の明石順平氏が著書『人間使い捨て国家』(角川新書)で糾弾している。
明石氏は、主に労働問題を扱う弁護士で「ブラック企業被害対策弁護団」の事務局長。本書は、労働法は罰則が緩く、企業はむしろ残業代を払うよりも罰金を払う方が得といった歪んだ現状をはじめ、酷使される公務員やコンビニオーナー、外国人技能実習生など、日本の社会問題全般にも切り込んでいる。
本書を読むと、事は「ブラック企業を非難していればそれでいい」という問題だけではないと思い知らされる。「自分は使い捨ての人間だ」と暗い気持ちで働く人も、そうでない人も、すべての労働者が今すぐ読むべき一冊だ。(文:篠原みつき)
「企業優先、人命軽視」という法制度の緩さ
長時間労働が過労死・過労自殺のリスクを跳ね上げることは知られているが、明石氏は「残業代がブレーキになる」と説く。残業代がきちんと払われれば、企業はコストのかかる長時間労働を嫌うからだ。残業代は"金の問題ではなく、命の問題"だという。
ところが、まず驚かされるのは、労働者を守るはずの労働基準法が恐ろしく緩いこと。著者は「甘すぎる罰則」や「そもそも罰則すらない」「取り締まりがゆるい」ことを厳しく批判している。
例えば、企業が時間外労働の規定を破った場合の罰則は「懲役6ヶ月または罰金30万円(労基法119条)」だ。懲役刑が科されることはまずないので、事実上は罰金のみ。それすら、めったに適用されることはないという。
ブラック企業オーナーは偽日本人。
そもそもブラック企業は労働時間だけが問題じゃないから。定時で帰れても休日が少なすぎたり、パワハラが横行していたりと要因はいくつもある。そこにも焦点を当てない限り変わらないよ