Getty Images
Text by COURRiER Japon
インド=菜食主義国という迷信
人口の約8割がヒンドゥー教徒であるインド。その宗教的理由から菜食主義を選択している人は少なくない。しかし、「インド=菜食主義国」というのは「迷信である」。
ヒンドゥー教徒であっても、卵や乳製品、肉を食す人は存在し、また、インド人の中にはイスラムやシーク、ユダヤ、キリスト教徒、つまり異なる食習慣を持つ人たちがいるのは言うまでもない。
インド政府の過去3回にわたる調査によると、純粋な菜食主義者の数は国内人口の23~37%にとどまるとのこと。菜食主義者の数は「我々が想像するよりずっと少ない」と、英メディア「BBC」や米メディア「NPR」をはじめ各メディアが報じている。
同調査によると、ヒンドゥー教徒の中でも菜食主義者世帯は3分の1程度に止まる。そのほとんどは、上位カーストの特権階級が占めている一方で、「肉や卵などを食す世帯の多くは、社会的な地位の低い下位カースト」。
BBCは、「ヒンドゥー教徒の中でも『不可触賤民』、最も身分の低い『ダリット』と呼ばれる人々の多くは肉や卵を食べる」と述べる。それはなぜか?「栄養失調で命を奪われないために」である。
印デジタル紙「ザ・ワイヤー」によると、卵は、その栄養価の高さから「国立栄養研究所が、無料の学校給食および託児所での提供を義務化している食品のひとつ」。
義務化の理由については、「卵はたんぱく質はもちろん、ビタミンA、B1、D、Eなどが豊富に含まれている」。「豆やバナナといったものより、安価かつ栄養価が高い」「牛乳より安全」。また、野菜ほど生産に手間がかからず、年間を通してどの地域でも地元で生産可能な高タンパク質食品である」と述べる。
もちろん、お金があれば安全な牛乳を手に入れることも、野菜や豆だけで充分たんぱく質を摂取することも可能だろう。しかし、問題は数億人にも及ぶ下級カーストの子どもたちだ。
BBCは、「ヒンドゥー教徒の中でも『不可触賤民』、最も身分の低い『ダリット』と呼ばれる人々の多くは肉や卵を食べる」と述べる。それはなぜか?「栄養失調で命を奪われないために」である。
1億人以上の子供を救う卵
印デジタル紙「ザ・ワイヤー」によると、卵は、その栄養価の高さから「国立栄養研究所が、無料の学校給食および託児所での提供を義務化している食品のひとつ」。
義務化の理由については、「卵はたんぱく質はもちろん、ビタミンA、B1、D、Eなどが豊富に含まれている」。「豆やバナナといったものより、安価かつ栄養価が高い」「牛乳より安全」。また、野菜ほど生産に手間がかからず、年間を通してどの地域でも地元で生産可能な高タンパク質食品である」と述べる。
もちろん、お金があれば安全な牛乳を手に入れることも、野菜や豆だけで充分たんぱく質を摂取することも可能だろう。しかし、問題は数億人にも及ぶ下級カーストの子どもたちだ。
Photo by Dario Mitidieri/Getty Images
格差の大きいインドでは、この無料で提供される学校給食システムのの恩恵により「なんとか栄養失調を免れている」という子どもたちが少なくない。NPRによると、そういった子供は1億人以上にものぼる。
「卵がなければ、牛乳やバナナを食せばいい」という考えは、まさに「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」という発想と同じ。
にも関わらず、ヒンドゥー教的菜食主義の観点から給食での卵廃止を推し進める現与党インド人民党(BJP)に対し、同紙は「子どもの栄養よりも、ヒンドゥー至上主義を優先した愚政」「国民へのアイデンティティ強要だ」と、批判と懸念の声をあげている。
BJP代表「子どもに卵や肉を与えると、人食い人種になる」
インドでは、19年の下院総選挙でインド人民党(BJP)が圧勝し、ヒンドゥー愛国主義の傾向のあるナレンドラ・モディ首相が続投。国内ではヒンドゥー至上主義の力が強まっている。
そもそも「インドはヒンドゥー国家だ」とするのは、政教分離主義のインド憲法に反している。だが、首相が率いるインド人民党(BJP)は、宗教的民族主義の再生を唱えているほか、上述のような菜食主義のゴリ押しを続けている。
イスラム教徒やキリスト教徒の食習慣を完全に無視した「牛を完全保護すべき」との政策を導入するなど過激なものもあり、ヒンドゥー教徒による牛肉の消費者に対する集団リンチ事件まで発生している。
上述の学校給食での卵禁止の理由について、インド人民党の代表ゴパル・バルガヴァ氏は「菜食主義に反する食生活を送る子どもは、将来的に人食い人種になる可能性がある」と公に語っている。
「卵ぐらい、という見方はあまい。卵を食べても栄養失調ならば、次は羊や鳥肉に手を染めるだろう。子どもの頃からそういった食習慣で育てば、ハンニバル(人食い人種)になりかねない。政府はそれを阻止しなければならない」
NPRによると、ことの始まりは15年の春頃から。マディヤプラデシュ州の首相を勤めていたインド人民党(BJP)の政治家が、同州はじめ、近隣州での学校給食での卵の配給を停止を発令。政党が勢力を拡大するにつれ、年々その動きは強まっている。
イスラム教徒やキリスト教徒の食習慣を完全に無視した「牛を完全保護すべき」との政策を導入するなど過激なものもあり、ヒンドゥー教徒による牛肉の消費者に対する集団リンチ事件まで発生している。
上述の学校給食での卵禁止の理由について、インド人民党の代表ゴパル・バルガヴァ氏は「菜食主義に反する食生活を送る子どもは、将来的に人食い人種になる可能性がある」と公に語っている。
「卵ぐらい、という見方はあまい。卵を食べても栄養失調ならば、次は羊や鳥肉に手を染めるだろう。子どもの頃からそういった食習慣で育てば、ハンニバル(人食い人種)になりかねない。政府はそれを阻止しなければならない」
NPRによると、ことの始まりは15年の春頃から。マディヤプラデシュ州の首相を勤めていたインド人民党(BJP)の政治家が、同州はじめ、近隣州での学校給食での卵の配給を停止を発令。政党が勢力を拡大するにつれ、年々その動きは強まっている。
これに対し、国民のヒューマン・ライツ(人権)ならぬ、フード・ライツ(食権)を守る活動家たちが立ち上がり、資金を集め、食料配給が滞りがちな村や貧困地区へ卵を届けていると、同メディア報じている。
インドのフード・ライツ活動家は、この「卵戦争」について各メディアにこう語る。
「この問題は、インド人民党による偏った宗教的観念によってだけでなく、上位カースト出身である権力者たちの、国内貧困についての無知かつ無関心によっても引き起こされている」
インドのフード・ライツ活動家は、この「卵戦争」について各メディアにこう語る。
「この問題は、インド人民党による偏った宗教的観念によってだけでなく、上位カースト出身である権力者たちの、国内貧困についての無知かつ無関心によっても引き起こされている」