皆様、遅ればせながらあけましておめでとうございます。新年のご挨拶はすでに前回のコラムで済ませているのだが、執筆時はまだ年が明けていなかったので、やはり1回は言っておかないとすっきりしない。で、今このコラムは米国ラスベガスのホテルで書いている。前回の予告どおり、このところ恒例になっている世界最大級のエレクトロニクス関連見本市「CES 2020」からのリポートをお届けするためだ。
いろいろと見どころはあるのだが、2年ぶりの出展で話題をさらったのがトヨタ自動車だ。2020年のCESが開幕したのは1月7日。その前日の6日は、終日出展各社によるプレスカンファレンスが開催された。カンファレンスの会場では、開場の前から場所取りの長い列ができるのだが、その列がひときわ長かったのがトヨタと、韓国現代自動車だった。19年のCESではトヨタは出展がなく、カンファレンスは実施したもののニュース発表がない「がっかりカンファレンス」だっただけに、今回の発表には期待が集まった。そしてその内容は期待を裏切らないものだった。
新たなビジネスモデルを生み出す
すでにそのニュースが伝えられてから1週間以上もたつのだから、読者の多くもその内容はご存じだろう。そう、トヨタの今回の発表の主役はクルマではなかった。トヨタが新たな“街”をつくるというのが今回のニュースだ。具体的には、2020年末に閉鎖する予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を含む約70.8万m2に、様々なモノやサービスがつながる「コネクティッド・シティ」を建設する。名称は「Woven City(ウーブン・シティ)」で、2021年初頭に着工する。
新たな街を建設する目的としてトヨタは、実際に人が生活する環境に、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)、パーソナルモビリティー、ロボット、スマートホーム、人工知能(AI)などの技術を導入することで、技術やサービスの開発と実証のサイクルを早く回し、新たな価値やビジネスモデルを生み出すことを挙げている。
また、この街づくりの特徴として挙げられるのが、街を通る道を次のように3つに分類していることだ。
- 車両走行用の道:この街はサービス専用EV(電気自動車)「e-Palette」など、完全自動運転で排気ガスも出さない車両のみが走行することを想定している
- プロムナードのような道:歩行者と低速のパーソナルモビリティーが共存
- 歩道のような道:公園内の歩道など歩行者専用の道
ほかにも、建物は主にカーボンニュートラルな木材でつくり、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど環境にも配慮した。燃料電池発電や物流の設備などの生活インフラはすべて地下に設置する。住民は、室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーのデータを活用するAIにより健康状態をチェックするなど、生活の向上を図る。
そして、この新たな街で重要な役割を果たすのが、e-Paletteだ。人の輸送やモノの配達に加えて、移動用店舗として活用することも想定している。街の中心や各ブロックには、様々な公園・広場をつくり、住民同士のコミュニティーを形成することを目指している。
コメント20件
佐藤鴻全
期待している。
なお無人小型配達車が、専用地下道を通って各家庭の部屋まで商品を配送するようだ。
それを使っての爆弾テロとか住居侵入とかに対する防御策等も実証実験の対象となるんだろう。
ホッチー
サラリーマン
完全な私有地内に2000人もの人がおのおの別々の建築物に居住するというのが何等かの法に触れないのでしょうか(例えば建築基準法の接道義務とか。まあ都市計画されてるとは思えませんが)。私有地なら何してもOKならいろいろ実験できそうですね。楽しみ
です。...続きを読むトヨタの場合は平面的に広がった街ですけど、大手ゼネコン、例えば鹿島建設ぐらいの超大手が、巨大ビル丸々1棟を街にする(商業施設からオフィス、病院、学校、発電所まで全て1つのビル内で完結)という上下方向に広がった街の実証都市実験もやってもらいたいです。
Ultra King
Daihyo
日本にも藤沢SSTのようなスマートシティはあるが、世界的には10年も遅れている日本のスマートシティ。
トヨタの資本でどれだけ有意義な実証実験ができるか見ものだ。
東富士工場は閉鎖だが、研究所は残るのだろうから主な住人はそこの社員だろう。でき
れば第一次産業と第三次産業を同程度の割合で入れて欲しいものだ。...続きを読むけーしー
規模が判らなかったので、71万平米(≒820m四方)を知っている土地と比べてみたら、街と聞いてイメージする規模よりはずっとコンパクトで町内と言う感じでした。横浜と比較されていますが、現地の裾野市、それも東富士工場近辺の住宅密度は遥かに低いの
で、実際には、閑散とした郊外にそこだけ過密な住宅地が出来上がる形になりそうです。
...続きを読むトヨタはグループに住宅メーカーも抱えていますし、自動運転やMaaS関連はもちろん車以外にも生活環境全般のIT技術開発の実験場として自前の環境を手に入れる事は大きなメリットかと思います。
しかしすでに指摘のコメントもあるように、富士山周辺は噴火災害が予測されています。演習場やトヨタの広大な施設が立地できたのも手つかずの土地があったからですが、それは元々溶岩原野で古くから人が住むことを避けてきた場所だからです。現地は富士山と箱根に挟まれた低地にあり、噴火があれば被災が避けられない場所ではないでしょうか。街づくりと言うからには、その土地の来歴も含めた評価もきちんと行い必要があれば対策を立てて欲しいと感じました。
Ishiura Yasuo
デザインSV
これからの都市計画は人工衛星がセットでプラットホームが完成する。アリババの未来予想図にもそこにドローンインフラが組み込まれてゆくようだ。トヨタがどのような宇宙戦略を持っているのかが楽しみ。
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