2010.5.20.
石立 喬
Visual C++ 2010 Express の易しい使い方（１）
――― コンソールアプリケーション の場合 ―――
最近、Microsoft社から、「Visual C++ 2010 Express」が入手できるようになった。Microsoft社のサイト「Visual Studio Express（http://www.microsoft.com/japan/msdn/vstudio/express/）」からダウンロードできる。 ここでは、「Visual C++ 2010 Express」を本来の使い方でなく、簡単なC言語またはC++言語の学習用として使用する方法を説明し、次いで、Visual C++ 2010の中核である.NET Frameworkを使用する最も簡単な方法を述べる。GUI環境の利用できる、いわゆるWindows プログラムではなく、入力はキーボードから行い、出力も「コマンドプロンプト」ウインドウ内に表示される。プリンタへの出力や、グラフィック表示はできない。
プロジェクトの新規作成（.NET Frameworkを使用しないWin32形式の場合）
１）「Visual C++ 2010 Express」（以後、「Visual C++ 2010」と略す）を起動する（デスクトップからアイコンをダブル・クリックするなどして）。
２）図1に示す「Visual C++ 2010」の「スタート ページ」ウインドウが開く。実際に使用してプロジェクトを作成すると、左の「最近使ったプロジェクト」欄にプロジェクト名が表示されるが、ここでは未使用の初期の状態を示す。
図１ 起動すると最初に開く「スタート ページ」ウインドウの一部
３）メニューから「ファイル」→「新規作成」→「プロジェクト」を選択する（または、中央左側の「新しいプロジェクト」をクリックする。）。
４）図2に示す「新しいプロジェクト」ウインドウが開くので、左の欄の「Visual C++」の下の「Win32」を選択する。
図2 最初に開く「新しいプロジェクト」ウインドウ
５）すると、図3で示す「新しいプロジェクト」ウインドウに変わるので、右欄で「Win32 コンソール アプリケーション」を選択し、下方の「名前」欄に希望するプロジェクト名を入力する（例えばC1001A）。
図3 次に開く「新しいプロジェクト」ウインドウの設定の一例
６）特別の意図が無い限り、「場所」は、デフォルトのままにしておく。
７）自動的に、「ソリューション名」欄が入力されるので、「ソリューションのディレクトリを作成」のチェックはそのままにして、「OK」をクリックする。
８）図4に示すような「Win32 アプリケーション ウイザード」が開くので、「現在のプロジェクト設定」が「コンソール アプリケーション」になっていることを確認して、「完了」をクリックする。
図4 次に現れる「Win32 アプリケーション ウイザード」ウインドウ
９） 「Visual C++ 2010 統合開発環境」のウインドウが開く。 図5は、その一部を示したもので、左側の｢ソリューション エクスプローラ｣部には「ソリューション’C1001A’」ができており、「ソース ファイル」、「ヘッダー ファイル」などのフォルダと各ファイルができている。もし、「ソリューション エクスプローラ」が表示されていないときは、メニューから、「表示」→「その他のウインドウ」→「ソリューション エクスプローラ」を選択する。右側の「コードエディタ」部には、「C1001A.cpp」が表示されている。何らかの理由で、これが表示されていないときは、左側の「ソリューション エクスプローラ」で、「C1001A.cpp」をダブル・クリックする。
「コードエディタ」部には、スケルトンのプログラムができている。「_tmain」とか「_TCHAR*」など、見慣れない文字があるが、これはUnicodeやShift-JISなど多様な文字コードに対応させるためのもので、気にしないでも良い。
図5 開いた「Visual C++ 2010統合開発環境」の主要部
プログラムの作成
「コードエディタ」部で、「int _tmain」の中の「 { 」と 「return 0;」 の間にプログラム（ソースコード）を記述する。 #include <math.h> などは、必要に応じて「#include "stdafx.h"」の下に記述する。プログラムの構造にしたがって、自動的に字下げが行われる。
図6は、複数の整数を入力させ、「0」を入力すると、終了して、それまでに入力した整数の最大値と最小値を表示するプログラムを例として示している。データ型定数のINT_MINやINT_MAXを使用するためにlimits.hをインクルードしてある。「printf_s」や「scanf_s」など、見慣れないコードがあるが、「_s」はsecureの意味で、不正な文字形式の入出力に対して警告を発する。
「#include <」までタイプ入力すると、図7のような、入力候補リストが現れる。これは、「Visual C++ 2010」で導入された便利な機能で、希望する「limits.h」を選択してダブルクリックすると、入力される。英語版にあった、「<」を自動的に閉じる機能はなくなった（少し違和感、やや不便）。
入力未完了などで、文法的にエラーがある場合には、赤い波線のアンダーラインで注意を促してくれる。
図6 Win32コンソール アプリケーションのプログラムの一例
図7 <>内に入れるファイル名の入力候補リスト
プログラムのビルド
１）メニューから、「デバッグ」→「ソリューションのビルド」を選択する。
２）画面の下部の「出力」ウインドウにエラーや警告が表示される。警告は、無視することができるが、エラーがある場合には、プログラムを実行させることができない。図8は、C1001Aが正常にビルドされたことを示す例である。
図8 エラー無くビルドできたことを示す「出力」ウインドウの一例
３）エラーや警告が表示された場合には、その理由を示す説明文（スクロール・アップされて見えないことが多いので、スクロール・ダウンする）の任意の場所にカーソルを持って行きダブル・クリックすると、「コードエディタ」ウインドウの該当部分の左端に矢印が表示される。ただし、問題の行の次の行に矢印が表示されることが多い。
４）修正して、再び「デバッグ」→「ソリューションのビルド」を選択する。
プログラムの実行
１）「Ctrl」＋「F5」を押す。これは、メニューから「デバッグ」→「デバッグなしで開始」を選択することと同じとされているが、Visual C++ 2010 には「デバッグなしで開始」が存在しなかったので、これしかない。
実存する「デバッグ」→「デバッグ開始」を使用すると、プログラムは実行されるが、終了後、すぐに「コマンドプロンプト」ウインドウが閉じてしまう。
２）プログラムが実行される。図9は、プログラム実行時の画面で、「コマンドプロンプト」ウインドウが開き、プログラムの実行結果が示されている。
図9 Win32コンソール アプリケーションのプログラムの実行結果
プログラムの保存
「ソリューションのビルド」を行うと、自動的にプログラムが格納される。
既作成のプロジェクト（プログラム）を呼び出し、必要に応じて再編集し、実行させる
◎一般的な場合（C1001Aプロジェクトを開く例で示す）
１）「スタート ページ」の左側の「プロジェクトを開く」をクリックする
２）「プロジェクトを開く」ウインドウが開くので、「C1001A」フォルダをダブルクリックして展開する。
３）「C1001A.sln」をクリックし、「開く」をクリックする。
◎最近作成したプロジェクトの場合
「スタート ページ」の「最近使ったプロジェクト」から、希望するプロジェクトをダブル・クリックする。
上記いずれかの方法を用いると、 「Microsoft Visual C++ 2010 統合開発環境」のウインドウが開き、「コードエディタ」部にプログラムが表示されるので、必要に応じて変更し、ビルドし、実行する。
既作成のコード（プログラム）を読み込み、プロジェクト化してビルドし、実行させる
「コードエディタ」でコードを作成するのでなく、他のエディタなどで作られたコードを持ってくる場合に使用する。
１）「Sample.cpp」を、あらかじめ、「・・・/Visual C++ 2010/Projects/Sample/Sample.cpp」のように格納しておく（推奨）。
２）「統合開発環境」で、「ファイル」→「新規作成」→「既存のコードからプロジェクトを作成」を選択する。
３）「既存コードファイルからの新しいプロジェクトの作成」ウインドウが開き、「作成するプロジェクトの種類を入力してください」が「Visual C++」になっているので、そのまま「次へ>」をクリックする。
４）「プロジェクトの場所とソース ファイルの指定」ウインドウで、「参照」ボタンを利用して、「プロジェクト ファイルの場所」欄に、「・・・/Projects/Sample」と入れ、「プロジェクト名」欄に「Sample」と入力する。「次のフォルダからプロジェクトにファイルを追加します」のチェックをそのままにして、「次へ>」をクリックする。
５）「プロジェクト設定の指定」ウインドウで、「プロジェクトのビルド方法」の「Visual Studioを使用する」のチェックをそのままにし、「プロジェクトの種類」を「Windowsアプリケーション」から「コンソール アプリケーション プロジェクト」に変更する。それ以降にはチェックを付けないで、「完了」をクリックする。
６）「統合開発環境」の｢ソリューション エクスプローラ｣部から「Sample.cpp」を選んでダブル・クリックすると、コードが表示される。以降は、通常の操作を行う。
コードエディタに行番号を付ける方法
１）メニューから「ツール」→「オプション」を選択する。
２）下図のような「オプション」ウインドウが開くので、「テキスト エディタ」→「すべての言語」→「全般」と選択し、右の「表示」欄の「行番号」にチェックをつけて、「OK」をクリックする。
図10 行番号設定のための「オプション」ウインドウの一部
プロジェクトの新規作成（.NET Frameworkを使用するCLR形式の場合）
１）「Visual C++ 2010」を起動する（デスクトップからアイコンをダブル・クリックするなどして）。
２）「Visual C++ 2010」の「スタート ページ」ウインドウのメニューから「ファイル」→「新規作成」→「プロジェクト」を選択する（または中央左側の「新しいプロジェクト」をクリックする。）。
３）図11に示す「新しいプロジェクト」ウインドウが開くので、左の欄の「Visual C++」の下の「CLR」を選択する（CLRは、Common Language Runtime の略で、.NET Frameworkを使用するには、これを用いる）。
４）右欄で「CLR コンソール アプリケーション」を選択し、下方の「名前」欄に希望するプロジェクト名を入力し（例えばC1002A）、その他はデフォルトのままにして、「OK」をクリックする。
図11 「新しいプロジェクト」ウインドウで、「CLRコンソール アプリケーション」を設定
５） 「Visual C++ 2010 統合開発環境」のウインドウが開く。 図12は、「コードエディタ」部にデフォルトで用意されているコード内容を示したもので、「Hello
World」を表示するサンプルプログラムになっている。
図12 CLRコンソール アプリケーションで、最初に出来ているサンプルプログラム
プログラムの作成
「コードエディタ」部で、「int main()」の中の「 { 」と 「return 0;」 の間にプログラム（ソースコード）を記述する。
図13は、図6に示した、すでに作成したプログラムと同等のプログラムを、.NET Frameworkを極力使用して記述したもので、「Visual C++ 2008 Express Editionの易しい数値計算（１）」と「（２）」を参照すると、理解がし易いであろう。
最後の「Return 0」の前に記述してある「Console::ReadLine()」は、終了後に「コマンドプロンプト」ウインドウが自動的に閉じてしまうのを防ぐためである。
int、float、double、boolなどの従来の型名は、そのまま使われることも多いが、ここでは、意識的に.NET Framework形式に統一した。
コンソール関係のメソッド、プロパティ、定数は、あらかじめ自動的に設定されている名前空間Systemのみで十分である。
図13 CLRコンソール アプリケーション（ .NET Frameworkを使用）のプログラムの一例
プログラムのビルドと実行
Win32形式で説明したものと特に変わりは無い。図14は実行結果である。「コマンドプロンプト」ウインドウを閉じるには、「Enter」キーを押す。
図14 CLRコンソール アプリケーションのプログラムの実行結果
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