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「宇野昌磨、金メダルあるのでは」とマスコミがようやく気づいた理由

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青嶋 ひろの プロフィール

――改めて考えてみるとちょっと驚くほど、宇野昌磨にはマイナス要素が見当たらない。

もちろんこんな他人事の分析には、彼自身も、コーチも、「そんなに簡単ではない」と憤慨するだろう。コンディションのアップダウンに苦しみながら、ジャンプ構成もプログラムの完成度もさらに上げていくべく、試行錯誤を繰り返す日々。オリンピックまで一日も無駄にできない緊張感は、宇野にとってもチームの面々にとっても、過酷なはずだ。

しかしそんな苦しみ方も含めて、宇野昌磨のオリンピックへの道程は、これ以上ないくらい万全に見える。その万全さは一朝一夕で備えたものではなく、「ジャンプが跳べない選手」と言われた苦しい時間を超えながら、少しずつ勝ち取ってきたものであるのだから、強固さは半端ではない。

 

「つっこみどころ」がほとんどない

日本のフィギュアスケートを長く取材してきたが、どんな優秀な選手に対しても、「もっとこうすれば、いいのに」「あとほんの少しだけ、ここを変えればいいのに」と、報道陣が気を揉むようなことは必ずあった。

コーチなど、スタッフ選びでうまくいかなかった選手、メンタルの弱さがもどかしかった選手、有り余る才能をどうしても生かしきれなかった選手、こだわりが捨てきれず、先に進めなかった選手……。世界チャンピオンになった髙橋大輔、浅田真央、安藤美姫らでさえ、選手として、人間として、「どうして?」と思うような「つっこみどころ」は満載だったのだ。

そんな、外野がつい口出ししたくなるような弱みが、今の宇野昌磨には不思議なことにほとんどない。だから今シーズン、宇野はどんな試合も安心して見ていられるし、多少の失敗はしても、それを次に生かすだろうな、と確信が持てる。

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たとえば4回転の話題に隠れがちだが、昨季の四大陸選手権、国別対抗戦、今年10月のジャパンオープンと、宇野はジャンプを連続で跳ぶコンビネーションジャンプを制限回数の3回分、跳べずに終わる試合が多かった。それがスケートカナダでは、「今回は地味ですが、コンビネーションジャンプをしっかり3本跳びたい」と立てた目標通り、後半立て続けに成功。「地味」な部分できっちりと得点を稼いでの、300点超えだった。

4回転競争の熱気に飲み込まれたり、ジャンプの派手な成功に囚われたりすることなく、小さなポイントも少しずつ、一試合一試合で解決していく。そんな着実さは、今季一番大きな試合につながっていくのだろう。

宇野昌磨、ほんとうに、ここまで不安のない選手がオリンピックチャンピオンになれなかったらおかしいのではないか――そう思ってしまうほどだ。