「交通誘導員 ヨレヨレ日記」 (著・柏 耕一 フォレスト出版)
工事現場でよく見かける割りには、その実態についてはよく知られていない、交通誘導員の世界を描く本書の作者は73歳です。作者は出版社勤務、ライタ-などを経て、2年ほど交通誘導員の仕事をしています。
作者は、交通誘導警備員の不足は現在深刻であり、そのために工事の中止や遅れさえ起きており、超高齢化社会に進む現代日本の縮図がここにあると記しています。
現在、作者が勤務している警備会社は8割が70歳以上で、最高齢が84歳だそうです。ドライバーから理不尽な怒りをぶつけられたり、誘導ミスをしないように気を遣ったり、交通誘導員の仕事内容から賃金に至るまでを具体的に紹介しています。
作者は妻からこう聞かれたこともあったそうです。「あなたは大学を出ているのに警備員なんかして恥ずかしくないの?」と。
社会のインフラ構築に末端で貢献している高齢交通誘導員たち。なのに、時に彼らは自己を卑下したりするのは何故なのか?
今年の東京オリンピックを間近に控えて警備業界は、さらなる規模の拡大を迫られています。彼らの自己尊厳の乏しさをただ、個人の問題だとして突き放すことはできない。
この本を読むと、屋根のない道路で一生懸命に誘導している警備員たちに頭を下げたくなる思いになります。
「どうもありがとう・・・」
価格:1,430円 |