社会経済的ステータスは「居住地」次第で変わる

人からの「影響」を断つのは愚策でしかない

環境などの「外的要因」も人生に影響を与えるという(写真:nonpii/PIXTA)  
「その人の能力のみならず、その人のステータスさえ置かれている『環境』によって決まる」と断言するのは、『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』を上梓したアメリカの組織心理学者ベンジャミン・ハーディ氏。
「外的要因」が個人にどのようにして影響を与えるのかについて、科学的視点から解説します。

個人主義の現代では、「環境は自分から切り離されて存在する、自分とは別のものだ」と考える風潮がある。しかし、心理学者のティモシー・ウィルソンはこう話す。

「人の行動は、その人の性格や考え方から来るものだと思われている。拾った財布を持ち主に返すのは『正直』だから。ゴミをリサイクルに出すのは『環境を気遣っている』から。カフェラテに5ドルも払うのは『高いコーヒーが好き』だから。

しかし、多くの場合、それは周囲からのかすかなプレッシャーによって形作られている。けれども、私たちは、プレッシャーがかかっていることに気づかない。だから、自分の行動は自分の内側からやってきたものだと勘違いする」

社会的通念は、個人の欲求よりもずっと強力に、人の行動をコントロールする。そして、これまでの人類史研究やサイエンス研究をたどっていくと、このプレッシャーをもたらす環境は「状況」「場所」「人間関係」に大きく大別されることが見えてくる。

世界的な大歴史家が出した「シンプルな答え」

歴史家のウィリアム・デュラントは、40年にわたって世界の歴史を研究し、その成果を11巻の書物に記録した大家だ。ここには人類が生まれてからの歴史がすべて網羅されており、デュラントは、人類史を決定づけた瞬間を取り上げただけでなく、世界で最も偉大かつ影響力を持った人たちについても研究した。

膨大な年月をかけて研究し、慎重に資料を読み込んだ結果、デュラントはある結論にたどり着く。歴史とは、偉人たちによって作られるものではない、と。実は歴史とは、「偉大な人物」によって作られるものではなく、「困難な状況」によって作られる――これがデュラントの結論だった。

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  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    親からの遺伝も含めて、生まれた時から平等なんて物は存在しないんだよ。
    up15
    down4
    2020/1/14 07:21
  • 白い猫2c50db10c0c6
    この人はこう言った、あの人はああ言った、を羅列させれば評論が一つ出来上がる。
    書いてあることは間違ってない。しかし読者は自分にとって肝心かなめのポイントがどこなのかよくわからない。読みながら思考を収斂させることができない。そうして5分後にはさらりと内容を忘れてしまう。
    この手の文章作法は西欧文明というよりアメリカのジャーナリスト文化の中で生まれたものらしい。
    著者は間違いなく自分の住む「環境」に影響されているようだ。
    up11
    down3
    2020/1/14 09:58
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    言い古されていますが「孟母三遷」ですね。

    ただ「社会経済的ステータス」が高い人のコミュニティであっても、ゲイテッドコミュニティのような不自然な環境の場合、いい影響ばかりではないのでは、という疑念もあります。

    up10
    down2
    2020/1/14 06:08
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