「昆虫食の時代必ず来る」 イナゴ辣油いける味 岐阜農林高 杉森さん試作
2020年01月11日
「イナゴ辣油」の試食を勧める杉森さん(岐阜県北方町で)
世界の食料問題の打開策として注目される昆虫食に親しんでもらおうと、岐阜県立岐阜農林高校(北方町)の動物科学科で食品加工を学ぶ生徒が、食べるラー油「イナゴ辣油(らーゆ)」を試作した。素揚げしたイナゴに、揚げニンニクやテンメンジャンを加えて味を調え、食べやすい味に仕上げた。同校の農産物即売会で来場者に振る舞うと、好評だった。
試作したのは3年生の杉森功明さん。1年半前、「このまま世界の人口が増え続け、食料問題が深刻になれば栄養価が高い昆虫食の時代が必ず来る」と、一人で昆虫加工品の開発に取り組み始めた。
昔から、つくだ煮などで親しまれてきたイナゴを選び、最初は調味料の開発を目指した。「粉末にしたり、トマトソースに加えたりしたが、なかなか食べやすい味にならなかった」と振り返る。コオロギの昆虫食について研究している東京農業大学の研究室に相談に行くなどして、試行錯誤を続けた。
その結果、たどり着いたのが、「イナゴ辣油」。素揚げにしたイナゴに、砕いた揚げニンニクと揚げタマネギを混ぜ、テンメンジャンを加えた後、ラー油に漬け、味をなじませて仕上げる。
今回の試作に向け、長野県の業者からイナゴ2キロを調達。50食分を用意した。「予定より辛味が強くなったが、食べやすい味に仕上がった」という。
試食した来場者の反応は思った以上に良く、同校の近くに住む60代の男性は「ご飯のおかずにちょうど良い味。イナゴのつくだ煮のように香ばしさが加わればもっとおいしくなる」と話した。
残念ながら校内に開発を受け継ぐ後輩はいないそうだが、「将来は自分で商品化を実現したい」(杉森さん)。演劇部に所属する杉森さんは卒業後に役者を目指しながら「いずれは起業し、自分で作った商品を国内外に売れるようにしたい」と夢を膨らませる。
試作したのは3年生の杉森功明さん。1年半前、「このまま世界の人口が増え続け、食料問題が深刻になれば栄養価が高い昆虫食の時代が必ず来る」と、一人で昆虫加工品の開発に取り組み始めた。
昔から、つくだ煮などで親しまれてきたイナゴを選び、最初は調味料の開発を目指した。「粉末にしたり、トマトソースに加えたりしたが、なかなか食べやすい味にならなかった」と振り返る。コオロギの昆虫食について研究している東京農業大学の研究室に相談に行くなどして、試行錯誤を続けた。
その結果、たどり着いたのが、「イナゴ辣油」。素揚げにしたイナゴに、砕いた揚げニンニクと揚げタマネギを混ぜ、テンメンジャンを加えた後、ラー油に漬け、味をなじませて仕上げる。
今回の試作に向け、長野県の業者からイナゴ2キロを調達。50食分を用意した。「予定より辛味が強くなったが、食べやすい味に仕上がった」という。
試食した来場者の反応は思った以上に良く、同校の近くに住む60代の男性は「ご飯のおかずにちょうど良い味。イナゴのつくだ煮のように香ばしさが加わればもっとおいしくなる」と話した。
残念ながら校内に開発を受け継ぐ後輩はいないそうだが、「将来は自分で商品化を実現したい」(杉森さん)。演劇部に所属する杉森さんは卒業後に役者を目指しながら「いずれは起業し、自分で作った商品を国内外に売れるようにしたい」と夢を膨らませる。
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バイオバジルオイル 三重県多気町
三重県立相可高校(多気町)の生産経済科と辻製油(松阪市)が約2年かけて共同開発したバジルオイル。昨年10月下旬に発売し、既に約100本を販売した。
バジルは、食品残さを利用した液肥を使い同科の生徒が栽培。パッケージデザインも生徒が考案した。
どんな食材にも合うように、バジルの風味を残しつつ、さらさらとしているのが特徴。パスタやパンの他、お茶漬けに少量掛けて食べるのもお勧め。
1本(270グラム)1000円。現在は同校が参加する物産品イベントや同校への注文により販売している。問い合わせは相可高校総合農場、(電)0598(38)2010。
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2020年01月14日
交流サイト開設 農村起業 後押し 農水省
農水省は、農山漁村での起業を目指す人を対象にした交流サイト「INACOME(イナカム)」を開設した。起業希望者に加え、行政や企業などの支援組織、助言役として先輩起業者ら幅広い人材、団体を取り込み、起業を後押しする。起業者を掘り起こすため今月から来月にかけて、地域の資源を活用し新たな収益源を生み出す計画などを競うビジネスコンテストも予定する。
「イナカム」は農山漁村での起業を促すため、同省が2018年度から新たに始めた事業名でもある。……
2020年01月10日
ゆずバウム 栃木県茂木町
栃木県茂木町の道の駅「もてぎ」内にある、バウム工房ゆずの木が製造・販売するバウムクーヘン。地元産米「コシヒカリ」を自家製粉した米粉と地元産の卵、ユズの果汁を生地に使い、約330度の窯で十数層に巻いて焼き上げた。米粉特有のもっちりとした舌触りが特徴だ。
地元農家から米やユズを同工房が買い取り使うことで、地産地消に貢献。障害のある人も雇用し、農福連携も実践する。観光土産で人気がある他、グルテンフリーで、小麦アレルギーを持つ人にも好評だ。
1個(直径約13センチ、厚さ4センチ)1220円。店頭の他、インターネット通販も受け付ける。問い合わせは同駅、(電)0285(63)5671。
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2020年01月13日
5法案 国会提出へ 豚コレラ対策強化 家伝法改正が焦点 農水省
農水省は20日召集の通常国会に、5法案を提出する方針を固めた。豚コレラ(CSF)対策の強化に向けた家畜伝染病予防法(家伝法)の改正案が焦点。和牛の精液や受精卵、農産物の新品種の海外流出を防ぐための法案も提出する。東京都知事選や東京五輪で会期延長が難しい中、提出法案を絞り込み確実な成立を目指す。
同省が提出を予定するのは家伝法、家畜改良増殖法、種苗法、森林組合法の各改正案と、新法の「家畜遺伝資源の不正競争の防止に関する法案」(仮称)の5本。昨年の4本よりは多いが、安倍政権の農政改革を受けて法案数が多かった2017年(8本)、18年(9本)に比べると少ない。
家伝法改正案は、豚コレラ対策として①飼養衛生管理基準の順守に向けた措置の拡充②野生動物対策の法定化③検疫を担当する家畜防疫官の権限強化──が柱。同法改正を巡っては、立憲民主、国民民主など野党4会派も昨年末に提言をまとめており、法案提出も視野に入れている。
アフリカ豚コレラ(ASF)対策では、患畜以外も含む「予防的殺処分」の対象に追加するよう、与野党が議員立法による同法改正を調整。同病の国内侵入に早急に備えるためで、月内の成立を目指す。
家畜改良増殖法改正案と家畜遺伝資源の不正競争防止法案は、ともに精液や受精卵といった和牛遺伝資源の不正流通の防止が狙いで、一括審議を求める。精液や受精卵の管理体制の強化、精液の譲渡の記録や容器(ストロー)への情報表示の義務化、不正利用の刑事罰化や差し止め・損害賠償の請求措置などを盛り込む方向だ。
種苗法改正案は、輸出先や栽培地域の指定による新品種の海外持ち出し規制や、登録品種の増殖は自家増殖も含めて許諾制にすることなどを柱とする。森林組合法の改正案は、経営基盤強化のため、森林組合の一部事業の譲渡や分割を可能にすることが柱だ。
通常国会の会期は6月17日までの150日間。東京都知事選(6月18日告示、7月5日投開票)や7月24日開会の東京五輪を控え、延長は難しい。政府・与党は19年度補正予算や20年度予算の成立を優先し、農水省提出法案の審議は4月以降に本格化する見通しだ。
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2020年01月10日
木質バイオマス 利用増も伸び鈍化 初期投資抑制が課題
農業分野の木質バイオマスエネルギーの利用量(2018年)は3万1963トンで、前年から1361トン増えたことが林野庁の調べで分かった。17年に続いて3万トン台を維持したが伸び幅は鈍化。利用を広げるには、専用ボイラーなどの設備投資にかかるコストをどう抑えるかが課題となりそうだ。……
2020年01月14日
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[新たなバトン 世襲ではない継承へ](4) 農家紹介、家探し… 地域ぐるみで育成 移住者の支援充実(福島県二本松市)
山に囲まれ高齢化率が4割の福島県二本松市東和地区。東京都から2018年に移住した坂浦穰さん(45)が、3ヘクタールでリンゴやサクランボを作る果樹農家、熊谷耕一さん(64)の園地で研修に励む。熊谷さんは、農家や個人事業主ら住民有志が立ち上げたNPO法人「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」の理事長。熊谷さんは「移住者ら就農を目指す人がこの地域の農家の後継者になれるよう、できる限りサポートをしたい」と見据える。
同法人は03年の発足以降、新規就農者や移住者の呼び込み、移住後の支援をしてきた。農業体験や農家民宿に泊まるツアー、都心での相談会を定期的に開く。就農希望者には研修先農家を紹介し、家探しも手伝う。活動が実を結び、これまで移住者を中心に約30人の新規就農者を育てた。
最近は、後継者がおらず離農しようとする農家と、研修を終え新たに就農を希望する人との橋渡しに力を入れる。これまで新規就農者を紹介するのは農作業の受託が主だったが、今後は離農する農家の農業を丸ごと継承する流れをつくる考えだ。
熊谷さんは自身の農地以外に、農業を続けられなくなった周囲の果樹農家4戸の園地を預かる。いずれ研修生ら就農希望者に継承したいと言う。
現在、研修生は坂浦さん1人。坂浦さんは4月の独立時に、熊谷さんが農家から預かるリンゴ園30アールなどを継承してもらう予定だ。独立時は坂浦さんと地主との直接の貸借にする考え。坂浦さんは「就農できる環境が整っているので安心だ」と笑顔だ。
ただ、第三者への継承は簡単ではない。後継者のいない同地区の佐藤佐市さん(67)は、同法人の仲介で将来的に水稲やトマトなど2ヘクタールを東京都出身の塩田幸治さん(40)に継承するはずだった。塩田さんは近隣に家を借り、佐藤さんの下で昨年まで3年間、農業を学んでいた。しかし、昨年10月の台風19号で川沿いの貸していた農地が泥で埋まり、継承は取りやめとなった。
まだ使える農地だったが、佐藤さんは近年多発する自然災害を考慮し、新規就農者の塩田さんには立地が厳しいと判断。「塩田君とも話し合い、彼の今後を考えて川沿いの農地はやめようとなった」と話す。塩田さんは同法人の仲介などで別の農地や空き家を見つけている。
被災したものの、自身の農業を将来的に「第三者へ継承したい」との思いを抱く佐藤さん。塩田さんや研修生ら就農希望者と相談しながら、継承の話は進めていきたいと言う。
同法人によると、これまで移住者に継承できたケースはまだない。ただ、同法人の武藤正敏事務局長は「第三者への農業の経営継承は法人の大きな柱の一つになる」と見通す。
通常、移住者らへの継承には農家や地域に抵抗感がある。西日本のある県の担当者は「世襲で確保できず、よそ者に託すことで何か地域に迷惑を掛けるのではないかと、負い目を感じる農家が一定数いる」と明かす。
しかし同地区では、同法人の支援による移住者受け入れに長年の実績があり、移住者は農業を軸に十分暮らしていける。同法人の理事で農家の大野達弘さん(65)は「中山間地域だからこそ、少量多品目など経営を工夫できる。われわれにはない発想を持ってきてくれる移住者への継承を、地域ぐるみで支援したい」と意気込む。
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2020年01月14日
雪足りない いつもと違う…異常気象深刻 凍結やウサギ食害 春の生育心配
全国各地で異常な気温高が続き、記録的な雪不足に見舞われている。北海道では例年雪の下で越冬する醸造用ブドウや小麦が地表に出てしまい凍害などが心配されている。気温は全国の広い範囲で平年に比べて高く、雪は平年比1割以下の豪雪地帯も少なくない。気象庁によると、気温高と少雪は今後も続く見通しで、深刻な影響が及ぶ地域も出てくる恐れがある。(川崎勇、望月悠希)
<北海道>
北海道内有数の醸造用ブドウ産地、岩見沢市で醸造用ブドウを1・5ヘクタール栽培するガットラブ亮子さん(50)は「こんなに雪が少ないのは初めて。凍害や野ウサギの食害が心配だ」と話す。
道内では寒さからブドウを守るため、枝を束ねて土の上に寝かせ雪の中で木を越冬させる。だが同市の積雪量は12日時点で例年の2割の19センチ。枝が至る所でむき出しになり、凍害を受けて枝の枯死や発芽不良を起こす恐れがあるという。
野ウサギの食害も心配だ。ガットラブさんは枝を長梢(ちょうしょう)に仕立てているが木の芽や皮が食べられ、今春の生育が絶望的な木もある。雪で覆われていないため例年以上に被害が多く、夫のブルースさん(58)は「1メートルほど積もらなければ安心できない」と話す。
国内有数の醸造用ブドウの産地、余市町も12日時点の積雪量が6センチと、例年の10分の1以下。同町で醸造用ブドウを2・5ヘクタール栽培する曽我貴彦さん(48)は「若い木や寒さに弱い品種が心配」と極端な気温の低下を危惧している。 全国屈指の畑作地帯、十勝地方。帯広市の積雪量は12日時点で12センチと例年の2割ほどで、例年なら雪の下で越冬する秋まき小麦や、春作業への影響が懸念されている。
十勝総合振興局によると、畑の積雪は例年20~30センチだが、今年は土が露出している圃場(ほじょう)もあるという。昨年も積雪が少なかったが、春以降の天候が順調で小麦の生育は回復した。同振興局は「今年は昨年以上に雪が少ない。適度な積雪が必要」(農務課)と訴える。
牧草も積雪が少なく凍結の心配が出てきた。根室農業改良普及センターは6日、別海町や根室市の6カ所で土壌凍結の深さを調べた。その結果、深さは20~30センチほどで、例年の2倍近くに上ることが分かった。
凍結が進むと牧草の根が切れたり、浮き上がったりするリスクが高まる。今後の生育や収量に影響する可能性があり、酪農家も心配する。同センターは「影響が分かるのは春先。種をまき直す必要が出てくるかもしれない」と話す。
雪解け水が減ってダムやため池の貯水量が少なくなる恐れもある。岩見沢市上幌地区で水稲74ヘクタールや花きを栽培する中西洋一さん(61)は「30年近く営農しているが、年明けまで雪が少ないのは初めてだ。山の雪も少ないようで、水が持つか心配だ」と不安視する。
同地区は、幌向ダムの水を水稲や花き栽培などで使う。昨年も積雪が少なかったが、水稲栽培で水が必要な7月中まで「ぎりぎり持った」(中西さん)状態だった。
「雪室貯蔵」や水不足に懸念
<新潟>
県全域で昨年11月からの累積降雪量が平年の半分にも満たない新潟県。雪を利用した「雪室貯蔵米」を2013年から年間3000トン販売するJA北魚沼は、深刻な雪不足に焦りを見せる。
例年、今の時期は1メートルほどの積雪があるが、今年はまだ数センチしか積もっていない。「毎年2月下旬に雪室に雪を搬入するが、このままでは雪室に貯雪する量に達しない」(JA販売促進課)と話す。
雪室には1500トンの雪が貯蔵でき、例年8割が埋まる。今後、まとまった積雪がない場合、冷房で空調管理して米の品質は保てるが「電気代は3倍以上かかる見込み。雪室貯蔵でもなくなるため、取引先にも説明が必要だ」(同)という。
<長野>
豪雪地帯の長野県飯山市でも昨年12月の1カ月降雪量は7センチと、例年のわずか5%だった。JAながのみゆき営農センターは果樹への凍霜害や春の水田の水不足を懸念する。同センターは「今のところ農作物への影響はみられないが、この後が心配」と訴える。
平年の1割以下極端気温高続く
気象庁によると、昨年11月から現在までの累積降雪量は、北海道や本州日本海側の多くの地点で平年比1割以下にとどまる。気温も、昨年12月中旬からほぼ全国でかなり高く推移する。
極端な気温高と少雪は今後も続く見通しだ。2月10日までの1カ月予報では、全国で気温が平年に比べて高く、特に東北から九州は気温がかなり高くなる予報だ。また、東北から山陰の日本海側の積雪量はかなり少なくなる恐れがある。
同庁は「寒気が北極付近に滞留して南下しにくく、冬型の気圧配置が長続きしないため、しばらく暖冬傾向が続きそう。春以降の降水量にもよるが、雪解け水に頼る水田地帯などに、深刻な影響が出る可能性もある」と警鐘を鳴らす。
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2020年01月14日
豚コレラ取材過熱 現場接近に地元困惑 感染拡大危惧の声
豚コレラ(CSF)が発生している沖縄県で、マスコミによる取材が過熱している。豚コレラのまん延を防ぐため農水省や県は現地取材の自粛を訴えるが、発生農場の数百メートルまで近づいたり、畜産農家を直接取材したりする記者もいるという。JAおきなわは「感染拡大の要因になりかねない」と危惧する。
豚コレラは強い感染力を持つ伝染病。服に付いたウイルスや靴裏に付いた土を経由して感染する恐れもある。畜産関係者が豚舎に近づく際は、靴や衣類の消毒を徹底している。
豚コレラや鳥インフルエンザなどの伝染病が発生した場合、発生現場に近づき、取材することは“ご法度”。感染拡大を招きかねないからだ。だが、同県では農場に報道各社が集まっている状態だ。県は記者会見で、「農場に接近しないと撮れない写真が出ていた。近づくのは絶対にやめてほしい」と訴えたが、沈静化していない。
JAでは「ある新聞社から『防護服を売ってくれ』という電話があった」と明かす。担当者は断ったが、相手からは、取材で農場に近づくために必要だと説明されたという。
養豚農家からは危機感を訴える声が出ている。同県養豚振興協議会の会議に出席した農家からは「マスコミの接触が感染拡大を招きそうで怖い」という声が相次いだ。
県はこれまで、農家以外の住民にも注意喚起をするため、発生農場の住所を公開していた。だが、取材や興味本位で侵入する人が後を絶たないことから、明示は逆効果だと判断。10日に感染を確認した沖縄市の農場から非公開にした。ただ、その対応に「農場を教えてもらえないなら、(特定のため)複数の農家に直接取材する」と詰め寄った記者もいた。同県畜産課は「養豚農家のために、近づくのは絶対にやめてほしい」と訴えた。
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2020年01月12日
[活写]収集するほど… 収拾つかない!
鹿児島県曽於市の和牛繁殖農家、神崎勝さん(87)は農機メーカーやJAなど“農業系”帽子のコレクターだ。
30年ほどで集めたのは約140個。農機メーカーが多くクボタやヤンマーといった国内のものに加え、米国などからも手に入れた。地元のJAそお鹿児島や他県JAのものもあり、主に自宅居間の天井に飾っている。
次女めぐみさん(56)が住む米国を旅行した際、立ち寄った農家の倉庫に並ぶ多彩な帽子に感動して集め始めた。
農作業や外出の際にかぶる帽子選びも楽しむ神崎さんは「各メーカーのデザインが毎年変わるので集め終わることはない。そろそろ飾る場所がなくなってきたね」と笑顔で話す。(富永健太郎)
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2020年01月12日
[新たなバトン 世襲ではない継承へ](3) 離農不安寄り添い 準備、紹介円滑に “銀行”へ情報集約(北海道浜頓別町)
これまでの農業経営に敬意を込め、離農者に寄り添って第三者継承を進める方針にかじを切った酪農地帯がある。北海道の浜頓別町だ。
2018年から始まった同町の「お疲れ様登録銀行」。牛舎や農地などを手放す離農者の継承に向けた情報を登録し、新規参入の受け入れに生かす仕組みだ。農家は引き渡す重要性を理解している。しかし離農当事者となると前向きな人は限られる。銀行はこうした第三者継承の課題解決を目指し、町の農業担い手育成センターなどが考案した。
「離農には覚悟がいる。牛舎の他、隣接する自宅も手放し地域を離れる人も多い。離農者の気持ちに寄り添うことが必要だ」。同センターを構成する同町農業委員会会長で「お疲れ様」と命名した酪農家の小川文夫さん(68)は強調する。「これまでの営農の努力をねぎらいたいという思いを込めた。登録の敷居を少しでも低くしたい」と語る。
同町は17年度、高齢化で酪農家の離農が見込まれる中、対策を検討するため、全酪農家44戸にアンケートをした。今後の営農期間について15戸が5~10年、8戸が1~3年と回答。外部から担い手を確保する必要性が分かった。
小川さんらは世襲で後継者が確保できない世帯の第三者継承を進めようとしたが、課題にぶつかった。移譲の青写真を具体的に持てる人が少なかったからだ。就農フェアでも紹介できず、チャンスを逃していた。
そこで、譲りたい農家が具体的な青写真を描けるように、同センターに離農希望の時期や移譲方法、売買希望価格など項目別の情報を「銀行」に登録する仕組みを考案。希望者が来たら紹介する材料とする。同センターの構成組織、JAひがし宗谷は「継承を計画的に進められる」(営農相談課)と話す。
登録第1号の酪農家、只野國男さん(68)は夫妻で経営していたが、数年前に妻がけがをするなどし経営継続が難しくなった。道内外で暮らす子どもが継がない意向を示したので、銀行に登録した。
その結果、大阪府出身の和田英雄さん(35)に牛舎や自宅などを移譲できた。只野さんは「営農を断念せざるを得なかった。銀行に登録して『お疲れさま』と言ってもらえた気がした。スムーズな継承ができた」と話す。
英雄さんは、妻の幸恵さん(33)と牛舎を改修、総頭数60頭で19年12月から生乳生産を始めた。「物件のめどが立たないと就農は難しい。すごく良い仕組み」とみる。今は町外に暮らす只野さんは「いつか経営を見に行きたい。地域の人と力を合わせて頑張ってほしい」とエールを送る。
「銀行」は始まったばかりで、現在の登録農家は1人。ただ、同町での重要性は高い。
第三者継承を全国に先駆けて進めてきた北海道。道によると「第三者継承は新規就農の重要な一つの選択肢」という。特に酪農は新規参入者が一から施設などをそろえるのが難しいからだ。牛舎などの施設だけでなく、自宅の移譲が多いことも特徴だ。第三者継承の数は明らかでないが、18年の酪農での新規参入者21人のうち、多くが第三者継承とみられる。
道農業公社は「スムーズな継承には、受け手と出し手の人間関係が課題。継承をコーディネートする人が中立的に役割を果たすことが大事だ」と指摘する。
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2020年01月11日
「昆虫食の時代必ず来る」 イナゴ辣油いける味 岐阜農林高 杉森さん試作
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残念ながら校内に開発を受け継ぐ後輩はいないそうだが、「将来は自分で商品化を実現したい」(杉森さん)。演劇部に所属する杉森さんは卒業後に役者を目指しながら「いずれは起業し、自分で作った商品を国内外に売れるようにしたい」と夢を膨らませる。
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2020年01月11日
[にぎわい育む 農山村](5) 岡山 多様な「しごと」続々と 人の縁“栄養分”に
移住者と地元一体
デザイナー、空き家改修、宿泊施設再生、立ち飲み屋、農業体験……。ここ5年でおよそ50も、続々と「しごと」が生まれる地域がある。中山間地域の岡山県真庭市だ。
「仕事」といえばかつては専業や雇用される就業が主だったが、同市で広がるのは新しい「しごと」の概念。複数のなりわいで生計を成り立たせる「多業」、後継者のいない店を第三者が引き継ぐ「継業」の他、起業、副業も含め、多様な「しごと」の形が広がっている。来年度から始まる政府の地方創生5カ年計画である第2期総合戦略でも、従来の「仕事」だけではなく、多くの形の「しごと」の価値に注目し、広げる重要性を強調する。
大阪府内で飲食店を経営していた松尾敏正さん(43)は「地域に“しごと”は無数にある。働く仲間がつながれば、ビジネスの種はもっと増える」と笑顔だ。2014年に家族5人で移住し、地域おこし協力隊になった。現在は、協力隊を卒業し、地元の高齢者に相談されて継業したカフェ店主、交流定住センターの運営、農業体験を提供する会社の取締役など複数の顔を持つ。
県北にある同市は05年に9町村が広域合併した。800平方キロを超す面積に4万5000人が住む、人口密度の低い農山村だ。過疎地域では高齢化や後継者不足で廃業が加速化し、商工会も会員数の確保が課題の中、真庭商工会ではここ2年、会員数が増えている。人と人がつながり、次の「しごと」ができる好循環があるからだ。
同市久世町にある交流定住センターは起業家や会社員、地元住民、地域おこし協力隊、行政職員ら多様な人が集まる拠点だ。
大阪府内で会社員をしていた黒田和美さん(43)は現在、地域イベントのちらしのデザインなどを手掛ける起業家だ。実家は市内の酒店。畳もうと思って松尾さんらに相談したら、立ち飲み屋を勧められてリノベーションした。
「立ち飲み屋なんて山間部でできるはずがないと思い込んでいたが、始めてみたら経営は順調。真っ暗だった商店街が、最近明るくなった」とうれしそうだ。都会に比べ起業や継業は固定費が少なく、販路や経営の工夫もしやすいという。
新規就農者で東京都出身の移住者、石橋千賀良さん(28)は昨年10月、地元住民らと耕作放棄地を開墾し、農業体験を提供する(株)年貢を立ち上げた。石橋さんは「誰かに何かを話せば、誰かを紹介されて、人がつながって創業に結びつく。いろいろな職業の人と交わって楽しいことができる」と前向きだ。気軽に創業できる雰囲気があり、収入も上々だという。
移住者や若者だけが「しごと」を起こすのではなく、地元住民が仲間になっていることも同市の特徴だ。露地5ヘクタール、ハウス70アールで野菜を栽培する専業農家の清友健二さん(51)は、一緒に働く若者が音楽祭を開くなど「地元に明るい雰囲気が生まれてきた」と感じる。「人が少なくても、人がつながってワイワイしている」と清友さん。困り事があれば誰かを紹介され、自身も頼られることが増えた。
自分らしく稼ぎ仲間とつながる
インターネットの普及や働き方への価値観の変化から、農業や観光、生活など、分野横断で新たな「しごと」が農山村で生まれている。
新たな働き方を提唱する(株)シゴトヒトの代表、中村健太さん(40)は「目先の利益や労働条件だけでなく、やりがいや地域との関わりも重視した“しごと”を求める若者たちが、地方に向かっている」とみる。自分らしく稼ぎ、仲間とつながる。その積み重ねが、地域ににぎわいを育む。
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2020年01月11日
[にぎわい育む農山村](4) 福島 都市の仲間「関係人口」 地域外の輪 活力に
伝統野菜 共に拡大
「おかえり!」「収穫はもう慣れっこだね」。福島県会津若松市の農家たちが笑顔で、都会に住む“仲間”を出迎える。
12月半ば。米や野菜を栽培する農家の佐藤忠保さん(31)が都市住民らと共に伝統野菜「宇津野カブ」やネギなどの収穫作業に励んだ。
東京都港区の会社経営者、小室登子さん(48)は佐藤さんの元に通い「お互いが家族のような存在。彼らが作った農産物は自信を持って、知り合いに紹介できる」と話す。佐藤さんが東京に農産物の販売に訪れる際も交流する。
小室さんは2013年に仕事で同市を訪れ、佐藤さんらと出会い意気投合。以来、年に数回通い続け、互いの知り合いを紹介し合ってきた。
小室さんはイベント企画などの事業を手掛ける会社の代表。人脈が豊富なことから、交流を通じて消費者や料理人らを同市の農家に紹介。東京に農産物の出張販売に訪れる佐藤さんらの努力もあり、会津の農産物に興味を持つ人が同市を訪れるようになっている。
会津の野菜を「おいしい」と言ってくれる人、定期的に通い購入してくれる人、口コミで会津地方のPRをしてくれる人……。佐藤さんらが直接、東京で農産物を販売する際に知り合った都市住民らも含め、出会いが次の出会いを呼び、会津地方の農家や農産物、地域へのファンが少しずつ増えている。
佐藤さんは「東日本大震災の前は市外の人と交流しようという思いが薄かった。小室さんとの出会いもきっかけになり地域外に目を向けるようになった」と明かす。
同市では、市外のファンの支援で伝統野菜の栽培が広がっている。7種類を育てる長谷川純一さん(49)は、13年まで伝統野菜「小菊かぼちゃ」をたった1人で栽培していた。それが今では市内で約30人の農家が栽培する。
きっかけは、13年に長谷川さんの活動を雑誌の特集で読んだ東京の読者の呼び掛けだった。「小菊かぼちゃ」の種は市販されておらず、栽培が広がりにくい。読者らは長谷川さんから「小菊かぼちゃ」を購入し、食べ終えた種を長谷川さんに戻すことで、栽培を応援しようと活動を広げてきた。
これまでに県内外200人弱が協力。種を提供した人の中には、長谷川さんの畑を訪れ種の選別を手伝ったり、長谷川さんら農家と一緒に会津の野菜を使った料理を囲んだりしている。
東日本大震災以降、地域外から福島県の農業を応援したいという人や何かしらの関わりを求める人が増えたと感じる長谷川さん。「地域の外から福島に関わってくれる人の存在は地域農業の活力につながる。共に福島を盛り上げていきたい」と強調する。
互いに助け合える つながり維持が要
住んでいなくても、地域や地域の人々と多様に関わる「関係人口」。国土交通省が首都圏の在住者ら約3万人にアンケートすると、日常生活圏や通勤圏以外で定期的、継続的に関わりのある地域を訪れる人は24%に上った。農林水産業への従事や副業、祭りをはじめ地域づくりへの参画など、地域の担い手にもなる。
「関係人口」という言葉を生み出し、農家と消費者をつなげる雑誌『東北食べる通信』を創刊した岩手県花巻市の高橋博之さん(45)は「時間や手間をかけて関係を育むことが欠かせない。関係人口と農山村が互いに助け合う関係を続けることが、地域の未来を決める」と話す。
高齢化や人口減少などで全国的に担い手不足が進む中、地域外から訪れる関係人口がにぎわいをもたらし、新たな活力につながっている。
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2020年01月10日
[活写] 合格へ “い~予感”
合格の「い~予感」──。愛媛県八幡浜市の若手かんきつ農家が、五角形に仕上げた伊予カン「五格いよかん」で受験生を応援している。
「五格いよかん」は、地元の若手農家9人が所属する「日土橘4Hクラブ」が特産の伊予カンのPRも兼ねて、2013年から出荷を続けている。
例年8月に、日当たりが良い場所に実った傷のない「宮内伊予柑(かん)」を選び、地元の木工業者に特注した五角形の木枠を取り付けて大切に管理する。12月中旬から出荷し、都内の百貨店などで販売している。
今シーズンは枠をはめた250個のうち農家の厳しいチェックに“合格”した48個を出荷し終えた。
会長の清水達也さん(27)は「毎年出荷できるのは2、3割ほどで、狭き門を通過した縁起物。受験生にとって大敵の風邪を予防するビタミンCも豊富です」と話す。(釜江紗英)
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2020年01月10日
[新たなバトン 世襲ではない継承へ](2) 契約巡り食い違い 壁乗り越え信頼感 果樹園に新規就農(山口県周南市)
山口県周南市須金集落。細い1車線の道路を進むと急傾斜のブドウ園が見えてくる。見谷勇さん(86)、朝子さん(83)夫妻が45年前から育ててきた1・2ヘクタールの観光果樹園だ。2年前、見ず知らずの田中友和さん(43)、和歌子さん(42)夫妻が受け継いだ。
他人への継承はいくつもの壁があったが、田中夫妻は独立して2年、ほぼ営農計画通りで売り上げも順調だ。友和さんは「消費者に喜んでもらえるブドウを作り、農家の仲間を増やしたい」と見据える。朝子さんは「以前のお客さんが今も喜んで買っている。丁寧な仕事だから、これからも大丈夫」と園を託す。
2人とも県外出身の公務員だった田中夫妻。友和さんは働きながら農家への夢を温めてきた。40歳を間近に控えた頃、行楽で見谷夫妻のブドウ園を訪れ、観光農業と果樹に興味を感じた。
一方、見谷夫妻の子どもたちは農業を継ぐ気はなく、夫妻も自宅から30分離れた園地に続く細い山道の運転が高齢で難しくなってきたことなどから、離農を考えていた。「あんなに美しい園地は他にない」(県農業会議所)といわれるまでにした園地の荒廃は辛い──。そこで、知人の勧めで県農業会議所の後継者を募集する農家のリストに登録した。
2015年、就農先を探していた田中夫妻はリストで見谷夫妻の果樹園を見つけ、会議所に問い合わせた。その後、勇さんと田中夫妻、市など関係機関が集まり、継承に向けた会議を何度も開いた。16年に田中夫妻は退職し、子どもを連れて同集落に移住。2年後の継承に向けて見谷夫妻の元で研修を始め、草刈りや配達などに励んだ。
しかし、研修半ばに契約問題が浮上。友和さんは資産の売買額を園地全体のものとして、合意できたと思っていたという。見谷夫妻は金額は農地とブドウの木230本分と捉え、農機や作業所、トイレなどは別途契約すると考えていたため、齟齬(そご)が生じてしまった。
当事者同士での話し合いが続いた。ブドウの木が育つまで7年間ほぼ無収入という苦難を乗り越えてきた勇さんは、当初の金額では「納得できなかった」という。
他にも、研修内容など意思疎通が難しい局面が何度かあった。勇さんは人に教えた経験がなく、親子以上の年齢差での研修は手探り。特に繁忙期は教える余裕もなかった。
肝心の売買金額が合意できず、田中夫妻は研修をやめることも考えたが、未収益期間の長い果樹の新規就農は難しく、最終的には当初の金額から上乗せして契約した。勇さんから過去2回分の青色申告を見せてもらい、経営内容が良好だったことも決断を後押しした。
県農業会議所は「契約問題は大きな反省点」とし、教訓とする考えだ。朝子さんは「田中さんたちが折れてくれた」と感じる。
見谷夫妻も田中夫妻も「金額面は最初に書面で残すべきだった」と後悔する。だが、継承を果たした今は、互いに感謝する。「懸命に働く姿を間近で学べた」と和歌子さん。友和さんも、棚や農地だけでなく販路も継承できたことは「見谷さんのおかげ」と感じる。勇さんは「山間部で土地は最高。高品質のブドウを作り続けてほしい」と願う。
見谷夫妻は継承後、果樹園は見に行かないと決めている。朝子さんは「私たちが行ったら気を使わせてしまう。人柄が優しい2人だから、お客さんとの関係もうまくいく」と見守る。見谷夫妻は心の中で応援し続ける。
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2020年01月09日