艦これの世界でファンタジーの世界(オーバーロード)を戦ってみよう。 作:へっぽこ鉛筆
ODENの兵器使用は、国連で禁止されています。
後の史家達は、魔導王国と評議国が戦争に至った理由は、評議員である竜王が、異世界から来た『提督』なる悪魔に唆されたからと記しているが事実は違う。何故なら、戦争が始まる前からアインズ・ウール・ゴウンと評議国の戦争は始まっていたからだ。
おそらく、この世界に経済という概念が訪れるまで誰も理解できないだろう。いや、彼の魔導王、アインズ・ウール・ゴウンなら理解していたのか、それとも提督も理解していたかもしれない。しかし、魔導王国が誕生してから、経済戦争という名の戦いは静かに、深く始まっていたのは間違いがなかった。
最初の兆候は、魔都アインズ・ウール・ゴウンより南にある。商業都市カルネからだった。
この地に住む、エンリ将軍なるゴブリン・ハイロードの女性が始めたゴブリンを使っての農作業事業による、食糧事情の改善が起こり。このゴブリンという無限に近い労働力と、人間の労働力余剰は、組合など家内性手工業が主だったこの時期に、集約的軽工業の始まりを意味していた。
最初は、ゴブリンに対する衣服の提供を目的とした。人間の労働力の余剰により生み出される工業製品による余剰供給が原因だった。(同時に、アインズの資本投資による銀行制度、資本経済の導入、工業化政策も挙げられる。単純な農作業や肉体労働はゴブリンやアンデットが代理していた)
どちらにしても、その余剰な供給と生み出される資本。さらに、工場賃金労働者の消費需要はエ・ランテルと魔導王国、さらには、バハルス帝国に留まるはずがない。陸続きの諸国に一気に波及した。(この場合、まず、苛烈な労働者搾取が行われるはずなのだが、何故かアインズは、真っ先に労働者権利法という労働者保護法を作ったので、目に見えるような搾取や酷使は行われなかった。その他、児童福祉、公共扶助、年金や社会保険なども充実しており、政治団体規制など以外は、まるで本人が労働者であったような優遇政策が取られていた。)
まさに、人間社会を中心にした革命と言っても良かった。人口や下層階級の生活レベルは向上し、貴族や大商人と言った資本家階級は、その富をさらに肥太らせていく(同じ数ほど首縊りも起こったのだが)とにかく、作れば作るだけ神の見えざる手により、商品は売れていき労働市場は引手あまた。一時は、自分の名前さえ書ければオーガでも雇う。と言われるほどだった。
ここで危機に陥ったのが、人間諸国と交流のない。いや、人間から略奪すればよいという考えを持っている国々だ。亜人などはまだ良い方だが、食人などの習慣のあるモンスター国家は国民総生産が倍ほどにかけ離れてしまう結果になってしまった。
そんなものは関係ない、奪ってしまえば良いと思うかもしれないが、経済力というものは、力押しで解決するような問題ではない。もし、Aという個人で強力な集団がいて、Bという金持ちの集団と戦争をした場合・・・簡単な話でCとDの集団を金で雇って戦争をさせればいい。実際に、エンリ将軍のゴブリン軍団は傭兵として各地で警備任務に派遣されている。戦力としては大したことはないが、即応部隊としては適当な実力は持っている。相手の奇襲にも十分な対応ができると思われていた。
相手が、航空兵力と電撃戦を仕掛けてこなければの話だが・・・
(確かに、速度戦なのはわかりますが、補給線は大丈夫なんでしょうか)
丘を盾にする場所で戦車の砲塔部に腰をかけて、まだ薄暗い朝靄の中、朝日が昇るのを眺めていた。まだ、起床時間ではないが、他の仲間たちと歩哨任務の交代、眠れずに風に当たっていたのだ。
「どうしたんですか?西住殿?」
「秋山さん、おはようございます。」
香ばしい匂いとともに、アルミ製のカップを持った同僚の秋山優花里さんが隣に座る。コーヒーは南方航路が確保されているからといっても貴重品だ。僅かに匂いを楽しみながら、口に含めば心地よい苦味が、口の中に広がった。
こうして、ほかの人たちとおしゃべりしていると、今が戦争中ということを忘れてしまいそうだ。いや、実際、記憶も曖昧になりそうになる。確か、学園艦を守るために戦車に乗り始めたのだが、そのことも昔の事のように思えてきた。
「もう、新学期、始まっちゃいますね。あ、私たちには関係ありませんか・・・」
「ええ、でも、信じられませんね。私たちが妖精だなんて・・・あ、知ってます?シャーロックホームズの作者、コナンドイルは妖精も研究してたんですよ。」
「ふふっ、なんだか、オレンジペコさんやダージリンさんが詳しそうですね。」
あの、提督という人から、自分たちはゲームに出てくるキャラだと言われた時には確かに驚いたが、なんとなく納得できた。何か、記憶の中に・・・本能的に、自分達は本当の自分と違うという感覚があったからだ。それは不幸だと思わなかった。
何故なら、別の自分たちは今、学園艦を守るために戦っているのだから・・・だったら、私たちも戦おう。戦友たちを守るために、いや、そんな風に思うところが、あの、艦娘さんたちの呼び出す妖精さんと同じ存在所以なのかもしれない。
「みぽりーん、コンビニで朝ごはん買ってきたよー」
「武部殿、もう、コンビニが出店しているのでありますか?」
通信手に武部さんが、ビニール袋を片手に、戦車に帰ってきた。こんな場所にコンビニ(?)と思うかもしれないが、同じくこの世界に妖精として存在しているコンビニDMZのテンチョーさんがフランチャイズを開始した最前線の店舗だ。なんでも、評議国、リ・エスティーゼ共和国、さらに、アインズ・ウール・ゴウン魔導王国と交渉し、コンビニ周辺をDMZ(非戦闘地域)に認めさせたのだ。
温和だが、押しの強いテンチョーさんを思い出し、少し苦笑した。戦車の上部鋼板におにぎりやサンドイッチ、さらに飲み物を用意する。どこで仕入れているのか、流通はどうしているのかは疑問だが、あの、テンチョーさんなら納得できてしまう。
「ほら、みぽりん、見てみて、ボコのストラップー、いまお茶を買うと、おまけで付いてるんだよー」
「うわー、武部さん、見せて・・・あはっ、かわいいー」
こんな会話をしていると、本当に戦争中だということを忘れそうになってしまう。いま、こうしてみんなで朝ごはんを食べている戦車が、昨日は人間を踏みつぶしていたなんて夢のようだ。
「フロイライン、大隊長がお呼びです。」
大隊本部付きのクルツ・ウェーバー軍曹が姿勢正しく敬礼をする。優花里さんが花が綻ぶように微笑んだ。少し寂しいものを感じながら自分も朝食の途中で戦車を降り、大隊本部へと出頭する。横目で優花里さんとクルツ軍曹が話をしているのを見たが、すぐに、女子高生から戦車兵の表情を作り直した。
大隊本部のテントから、香ばしいコーヒーの臭いが流れてきた。
「よく来てくれた西住・・・敬称はなしだ。ここから5キロ地点に敵抵抗拠点、偵察隊の情報ではデスナイトが配備されているらしい。」
デスナイトとは、アインズ・ウール・ゴウンの
ようするに、火消しに回れということだろう。隻眼の大隊長が一息つくようにコーヒーを口に含む。西住みほは、赤いペンで記号が書き込まれた地図を真剣に見る。当然、他の友達たちと生き残るために為すべきことを為しているのだ。
「ありがとうございます。
コンビニの自動ドアが開いた瞬間に聞こえる声を無視して、メガネの女子高生が店内を後にした。すでに戦場にて三店舗程を展開、このファンタジー世界シュア100%を誇る(当たり前だが)コンビニDMZのテンチョーさんは、満足気にバックヤードの在庫確認を行っている。もうすぐ、空輸にて商品も届くはずだ。この世界でどうやって流通を確保しているのか・・・なんでも、補給艦間宮さんの秘密だそうだが、そんなものはどうでもいい。
「いらっしゃいませ。
入れ替わるように入店したお客さんは・・・先ほどの女子校生と年齢的には年下のように見える。妙に盛り上がった胸に、ゴスロリのドレス、日傘を傘立てにしまえば、連れの男性・・・日本で言えばスーツを着こなしたビジネスマンのように見えるが、もちろん、人間にはしっぽっまなどない。
このような異種族や、変わった人たちが来店するのも、コンビニDMZの特徴だ。もう、慣れてしまった店員は、在庫確認、商品調理などを黙々とこなす。途中で「ふーん、ここがアインズ様の言うコンビニでありんすか・・・」「シャルティア、あまり、ウロウロせずに、アインズ様のお使いを済ませましょう。」などと聴こえてくる。
レジ前に、いくつかの食品を持つ二人の異種族、当然、テンチョーは誰彼と差別はしない、お客様はみんな愛すべき戦友達だ。笑顔でレジをすれば、ヘッドドレスの少女が気づいたように、レジ横を指さす。
「そうでありんす。この、コンビニおでんの“たまご”と“ふらんくふると”も貰うでありんすか・・・」
「はい、玉子とフランクフルトですか?」
突然の言葉にも、バイトの雨宮さんは対応した。まだ、寒い季節ではないが、このコンビニのおでんは味付けに自信がある。が、玉子だけをいくつも買う人は少し珍しい。
「おや、シャルティア、あなたは飲食不要のはずですが・・・珍しいですね。」
「ふふっ、デミウルゴス・・・ペットに食べさせるでありんすよ。熱々の玉子とフランクフルトを口に食べさせると、すごーくよろこぶ可愛い
変わったペットを飼っているのだなーと思いながら、後ろに並ぶ紳士然の異種族は、なにか感じ取ったのかわずかに頬を緩めた。「おや、シャルティア、偶然ですね。私も似たようなものです。」と、容器を別に、おでんを指差し
「お嬢さん、私も、糸こんにゃくとキンチャクを・・・つゆだくでお願いします。」
なにか、背筋に寒いものを感じたが、ここはコンビニDMZ、お客様は大切な
「現在の地点からでは、一時的に制空権を奪取されます。」
コンパスでいいかげんな円を書いた先にかかる小さな漁村、評議国第1軍集団の突出部が円の内部に収められる。当然、魔導王国の空母任務群の攻撃範囲を意味していた。当然だが、評議国のビーストマンやトロルを主力とした部隊は、対空兵器など装備していない。
突然、出現した空母ヲ級を前に、送り狼のように、一定の距離を保ち追尾する駆逐艦隊、敵、深海棲艦(?)はリ・ロペル北西方100キロ件の位置を航行、おそらく、右翼の防衛線に航空支援を行うつもりなのだろう。しかし、活発な行動はまだ報告されていない。
それにも、提督、やまぐちたもんは予想がついた。航空支援はそれだけで資源を馬鹿食いする。おそらくは、相手も資源確保のめどが立っていないのだろう。それならば、この海域で圧力をかけこちらの制海権を邪魔するほうが正しい。
「こちらも、一航戦を主力とした機動艦隊で一気にケリを付けますか?」
「いや、それはダメだ。」
秘書艦霧島の言葉に、一瞬心が揺らいだが、提督はその言葉を瞬時に打ち消した。実に秘書官・・・いや、人口AIらしい言葉だと感心してしまう。確かに、やまぐちたもん艦隊で最も練度が高い一航戦を主力にした空母機動部隊ならば、瞬時に決着がつくだろう。ヲ級空母といえど、数では圧倒的にこちらのほうが有利なのだ・・・が
「ボーキサイトの残量が心もとない。それに、情報が少なずぎる。」
もっともな話だった。
空母1隻で任務群を組む理由は、一つは空母を索敵機として利用している可能性だ。かつての米軍は、空母に
その考えをすぐに打ち消す。魔導王国は大量の潜水艦(海に潜伏する魔物だが)を保有している。確かに、航空偵察が意味がないとは言わないが、彼らには魔法がある。評議員、ツァインドルクス=ヴァイシオンに聞いた話だが魔法の
諦めたように、やまぐちたもん提督は、内ポケットのタバコを探す。秘書艦が、恐ろしい目で睨んできた。
さらに深い嘆息を漏らせば、海図を睨み、冷めたお茶を口に含んだ。
「金剛を旗艦とし、戦艦2重巡4の主力艦隊、さらに、防空艦隊を編成、三式弾と、近接信管の使用を許可する。」
「提督・・・それはッ」
贅沢な戦争ですね。と、口に出そうとしたが寸前のところで飲み込んだ。
彼もまた、守りたいものがあるのだ。提督は制帽をかぶり直し、執務室を歩き出た。
霧島「まぁ、艦これは空母を集中運用するよりも、防空能力の高い艦隊を作ったほうが効率がいいという狂った仕様ですけど・・・実際には」
金剛「へーい、提督、私の死亡フラグが立ってるけど、最初に撃沈されるのは比叡ね。」
比叡「ひえー、おねえさま。それは、私に死ねってことですか」
提督「まぁ、金剛型は榛名以外は全部沈むんだけどね。」