艦これの世界でファンタジーの世界(オーバーロード)を戦ってみよう。   作:へっぽこ鉛筆

4 / 6
状況的に
10巻が発売されそうなので、慌てて書きました。



電撃戦開始

 普段飲めない酒を飲めば悪酔いする。

 それでも、人工アルコールぐらいしか存在しない現実に比べ、大吟醸の純米100%酒は美味しく感じた。

 肴には、秋イベントで貰えたサンマをつまみに、提督であるやまぐちたもんは、冷酒を手酌で注ぐ、多少こぼれたものを気にせず、ちびりと口に含んだ。美味いと同時に、頭の中に靄のような鈍痛が響く、明らかに酩酊の証拠だった。

 

「・・・提督」

 

 さらに酒を注ごうとするのを、嫋かな手が、そっと押しとどめた。霧島が、眼鏡の奥で目を慈しむように叱るように潤ませる。それに逆らうこともなく、杯をそのまま机に置く、しばらく彼女の顔が合い、手の上に手を重ねた。左手には指輪が嵌めてある。

 

「・・・俺のせいだ。クソッ」

「自分を責めないでください。」

 

 今まで、喪艦が少ないと言っても、何隻かの艦は沈めたことはある。その時は当然、ほかの海域を周り、さらには建造をくり返すことにより喪失した穴を埋めてきた。しかし、この世界に来てからは、何故か建造という行為ができなくなっていた。当然といえば当然かもしれない。同じ世界にふたりの人間は存在しない。たとえ、死んだとしても同じことだ。

 

「それよりも、二水戦の後継を決めなければ」

「長良か五十鈴だな・・・駆逐艦隊も交代させるか?」

 

 それが良いかもしれませんね。入渠と補給も兼ねて鎮守府に帰艦させるべきだろ。と、頭がアルコールの影響を受け謎の痛みを感じる。何も考えずに、布団の中に潜り込みたいという衝動・・・隣に、酒とグラスをかたずける女性がいれば最高なんだけどなぁ・・・と、内ポケットの細巻きを探す。

 また、眼鏡の奥の瞳が、子供を叱るように非難の視線を向けた。仕方がないので、タバコ(さくら)を握りつぶせば霧島が容赦なくゴミ箱に捨てた。

 

「どうします。鎮守府の士気が下がっています。戦死者が出たので当然ですが」

「戦死者か・・・」

 

 現在、いや、この娘達が存在した(?)第二次世界大戦以降、日本人は戦死者という言葉を使いたがらなかった。中国内戦から始まった第三次世界大戦でも“事故死”という言葉を使ったほどだ。いや、間違いなく戦死なのだ。ならば、帝国海軍の伝統に則り葬ってあげるべきだ。呑んで食べて忘れる以外に方法がない。

 

「彼女の遺品を整理しろ。一応、全員を集め式をする、白木の箱に収めよう」

「そうですね。それぐらいしか・・・」

 

 そこで、霧島が言葉を止め、目を伏せた。彼自身もそうだった。

 我々は戦争をしているのだ、いつ、白木の箱に収められ、靖国に祀られるかわからないのだ。

 

 

 

 鎮守府の中は、控え目に言っても士気(モラル)が下がっていた。

 当然と言えただろう。特に、姉妹艦である川内と那珂の落ち込みがひどかったが、一応、某国が見たら発狂する不思議な軍旗(きょくじつき)で包み、海に水葬することにした。本来なら、葬儀の仕方があるのだろうが、彼はそれを知らない。

 せめて、爪か髪の毛を残させれべきだな。葬儀の途中に、やまぐちはそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 緒戦の混乱に乗じ、エ・アセナルを包囲したアーグランド評議国は次の目標をリ・ボウロロールに進撃を開始した。

行軍速度の高い、エルフやケンタウロス、ワーウルフ、ワーキャットなどの混成部隊、さらに、打撃部隊として、評議国最強の竜騎士(ドラグーン)・・・地竜という大型爬虫類に騎乗した部隊を中心に、20世紀の軍事用語で言う、電撃戦(ブリッツクリーク)を開始した。その威力は凄まじく、中世的な戦争しか知らないアインズ・ウール・ゴウン魔導王国(と、その傘下にある旧リ・スティゼ王国の官僚)は大混乱に陥った。なにせ、指定した開戦の場に現れることもなく、迂回突破、後方を遮断した後に、占領もしないうちにまた前進・・・進軍の情報が追いつかず、戦争をしているのを知らない村落があったほどだ。

 その、先頭を進む竜騎士300騎の重騎兵部隊の指揮を補佐する西住みほの顔は、この大戦果にも関わらず、暗いものだった。

 

「あんこう1・・・アンコウ1、応答せよ」

「はい、こちら、アンコウ1、黒騎士どうぞ。」

 

 中隊指揮車の通信に思わず我に返る。無腺手の武部さんが心配そうな顔をする。無線からの大隊長の指示によれば、作戦の調整を行うために3キロ先の村落で小隊長を集めての作戦会議を行うらしい、一言、了解を伝えれば、また、ハッチから顔をのぞかせて外の景色を眺める。完全なあぜ道を乱暴に揺られながら進む戦車の脇を、凶悪なドラゴンと呼ばれる大型トカゲが闊歩していた。正直に言えば、ファンタジーの世界に来たと実感させられた。

 何故ここに来たのかは正直な話わからない。提督(何故か海軍所属の即応揚陸部隊(レザーネック)ということになっている)他にも、着弾観測班(FO)のパッキーさん達や、傭兵の野本さん、酒保のコンビニDMZのテンチョーさんなどファンタジー以外の住人もいたが、それぞれに来た世界が違うらしい。野本さんは学園艦など知らないというし、テンチョーさんのコンビニDMZなど見たこともない。さらに言えば、パッキーさんは人間ですらない。そして、大隊長にいたっては生きていた時代がが違う。が、世界観の話は全員とあった。なんと、ドイツ語と英語ですら聞き取れることができるし、日本語が普通に通じた。

 不思議なことばかりだったが、戦争になれば理屈は変わらない。いや、現実のものより凄惨といっていいだろう。人間同士の戦争には、最低限のルールがあった。それは戦車道でも変わらない。

 エ・アセナル攻略も、先制攻撃の有利という原則からすれば、ごく自然に、簡単に陥落した。3000人ほどの兵に守られた砦を包囲して、儀礼的な会戦をしたあとに降伏、無血開城の後に、簡単な軍政協定を結ぶはずだったが、普通のことでないことがここで起こった。大量の捕虜が消えたのだ。私たち独立大隊は、補給を整えすぐに進撃を開始したが、一瞬立ち寄った街中の様子は、今思い出しても吐き気を催す情景だった。

 

 

「おい、西住中尉、意見はあるか?」

 

 少し訛りのある言葉・・・大隊長、エルンスト・フォン・バウアー大尉が厳しい口調で声をかけた。その言葉で現実に戻る。暗い顔立ちの少女の頭を乱暴に撫でれば、威厳はあるが、実に紳士的な丁寧な口調で話す。

 現在は、各中隊長が簡易テーブルの周り、地図を前に記号の前で深いため息をついている。大きく街道を迂回し、リ・ボウロロールの西北の小高い丘の前に設置された小さなで敵の増強中隊(500名ほどのアンデッドやゴーレム、リッチなどの複合部隊)が頑強な抵抗陣地を築いていた。

 バードマン分隊の空中偵察の結果、偽装された塹壕や、魔力増強陣地、更には後方には小規模な観測所を敷設している。地形的に周囲5キロ程は管制できる。つまり、こちらの補給路を完全に補足できるということだ。

 危険としか言いようがなかった。が、西住みほにとって(そして、大隊長のエルンストにとって)丘がある、それがどうした突破してしまえと言う考えを持っていた。そんなものは、歩兵中隊が包囲すればよい。戦車が丘を制圧するなど無駄なことだ。

 だが、しかし、エルフの弓兵連隊は遥か後方に存在する。補給路を確保するためにも、この丘は獲らなければならない。

 よって意に沿わないが、戦車兵の指揮官が、丘を取り囲む地形を睨みながら、戦術的な記号を指でなぞることに熱中している。親子ほど年齢の離れた。彫りの深い隻眼の大隊長・・・大尉で本来は中隊長だったが、独立戦車大隊・・・と、言っても戦車は2台しかないが、の指揮を取らされている。他の中隊長は人間の竜騎兵がひとり、毛深いケンタウロスの男が1名、狼の顔と立派な体躯の男(?)・・・もうひとりは、魔法使いの杖のようなものを持っている。ケンタウロスウ族の魔法詠唱者は女性だった。

 

「君は迂回して、右側面を叩いてくれ、我々は正面から敵をあぶりだす。」

「大尉殿・・・しかし、この斜面は進入路が限定されています。地雷・・・罠を敷設している可能性が高いと思われますが・・・」

「それがどうした。踏み潰して全身しろ。それとも、工兵の到着を待つか?」

 

 くだらない冗談に黒騎士1の戦車兵たちの笑い声が響く、もちろん、地雷が敷設している場合、工兵が導爆索か砲兵が地面を“掘り返す”のが常識だが、この世界にはそんなものはない。

 他の中隊長は、よくわからないという顔をしていた。しかし、この大隊長が本物の戦士であり、尊敬すべき上官だということは、この数日の戦闘で本能的に感じ取った人獣は、軽く敬礼し、最後の作戦確認をした。

 作戦会議中、秋山さんを副官として同行させていた。始終目をキラキラさせている。そんな彼女に疲れたような笑いを見せ中隊に戻れば、すぐに兵たちを集める。竜騎兵の中隊長が2人、エルフの弓兵小隊と魔法分隊、さらにケンタウロスの重騎兵小隊の混成編成をされた自分の部隊を掌握し、すぐさま作戦を説明する。

 地雷原に飛び込むことについてケンタウロス達からの意見はなかった。彼らが死を恐れない勇敢な種族だというのは戦争が始まった初戦でわかったことだ。魔法や矢玉が飛び交う戦場を彼らは決して退かない。

 武部さんや、華さんが枯れ木などで偽装した戦車、華さんは「まるで、生花みたいですわ」などといっていたが、ゆっくりと右斜面に移動する。地形的にはなだらかな丘陵地で、道を薄い樹林が覆い、挟撃には絶好の地形となっていた。おそらく、罠(もっとも、落とし穴や落石、アラートの魔法などの簡易的なもの)が仕掛けられているだろう。大隊長からの合図はまだない。さらに、馬体や身体に迷彩塗装を施したケンタウルスやエルフ達が、弓の弦に手をかけ、その時を待った。

 最初は、右手から空気を裂くような飛翔物が飛び交う音が交差する。さらに、魔法と竜砲による爆発音・・・丘から聞こえる戦場音楽に、みほが口頭の車内マイクに叫んだ。

 

戦車前に(パンツァーフォー)!!」

 

 マインバッハのエンジンが心地よい音を立てて車軸を揺らす。他の種族たちも一斉にときの声を上げて、斜面を駆け上る。

 ほぼ奇襲だったので、反撃や弓矢による阻止射撃はない。途中に罠線にかかったエルフやケンタウロスの悲鳴が聞こえたが、脳がアドレナリンの影響を受けてなのか、まったく気にならなかった。

 さらに、混乱に拍車をかけたのは、正面、バウアー大尉の担当面から加えられた第三階位魔法による法撃だった。配備されていたゴブリンやオーガ、さらにストーンゴーレムの石弓や弩弓を装甲で弾きながら陣地(塹壕を掘っだけの野戦陣地ではあるが)を蹂躙した。戦車では陣地を突破、蹂躙できても制圧はできない。ケンタウルスやエルフ達に制圧任務を任せるしかない。が、混乱したゴブリン達は、組織的な犯行が難しい状況に陥っているのがわかる。警戒を怠らず、戦車から半身を乗り出せば油断なく何故かこの世界に来た時から持っていたMP34短機関銃を構え警戒に入った。

 

「終わりましたね。」

「はい、西住殿・・・捕虜の扱いは・・・」

 

 秋山さんの声が、車内通話で聞こえてきた。

 車体のハッチから冷泉さんが顔を出し、眠そうな顔を向ける。彼女はこのような状況でも冷静だが、他のメンバーは緊張からか深いため息をつき、狭い座席に背をあずけていた。あの、秋山さんですら言葉が少ない。

 はっきり言えば弛んでいるな。と、思いながら、西住まほは愕然とした。自分は・・・ついこの間まで、女子高生だった自分がまるで兵隊のような考え方をしている。嗚呼、こんな短機関銃を持って、戦車の燃料と弾薬の残量まで気にしている。

 後からくる歩兵に任せ、独立戦車大隊はさらに前進し、ちなみに、捕虜のゴブリン達は後送し、ゴーレム達は破壊した。言語命令の理解できないオーガ達は、殺してドラゴンの餌にすることにした。

 

 

 

 

 西回りに進撃するトロルやビーストマン・・・その他の部族連合軍の進撃は、遅遅として進んでいなかった。

 それは、当然の結果であり、リ・エスティーゼ公国の首都まで、東回りならば要塞としてのリ・ボウロロールが存在する。魔導王国の正規兵の常駐し、防衛体制も整っているのでしばらくは持つが、西回りは殆ど障害となるような都市がない。小さな港街が二つほど存在するだけだ。

 いくつかの野戦陣地を敷き、十重二十重に防衛体制を準備していたが、ビーストマンやトロル達は、基本的に人間よりもはるかに強い。魔導王国も防衛に協力してくれているが、基本的には自治権はリ・エスティーゼ公国が負担している。もちろん、一時的な進行には彼らが防衛の任を追わなくてはいけない。

 いや、それでもかつてのような戦争体系ならばここまで悲惨なことにならなかっただろう。宣戦布告から、動員体制を敷、戦争の日時を決め激突する。その後、会議で国境線を多少やり取りし、捕虜の交換や賠償金を決める。今までの戦争はそうだった。いきなり、首都機能に爆撃などしない。

 多少、話が外れてしまったが、リ・エスティーゼの自治軍は戦いの重点は西の海岸通りだと思っていた。そこに、予備兵力と資源、その他、増援を集中し進撃を止めようと考えていた。東回りの進撃速度の多少の疑問があるが(普通は、右翼との調整のため多少は進撃を遅らせる。)それでも、リ・ボウロロールでその動きは止まると思い込んでいた。

 

 

 

 いい加減、飽きたという回数に達した海域警戒任務、伊8はあくびを噛み殺しながら海面から首を上げた。潜望鏡深度で周囲の雑音を拾いながら、深海の中を潜り時々現れるマーマンやギルマンの運ぶモグラ輸送の燃料をがぶ飲みしていた。

 正直に言えば辛い任務だ。日本の潜水艦はその性質上(長時間、長距離の任務を主としている)移住性を重視している。それでもトイレや風呂は最悪・・・良いのは食事くらいだから、少女としては潜水艦の艤装だけはしたくないと主計官に懇願するものもいるくらいだ。いや、やっぱりご飯は最高なんだけど・・・

 くだらないことを妄想しながら、また、耳に集中する。聴こえてくるものは、相変わらず水中を叩くような雑音、いや、僅かだが、水中を滑るような音が聞こえる。

 飲みかけのドラム缶を投げ捨て、さらに水中音に集中する。ヒレを動かす巨大、海棲生物の中に、海面を滑るように動くスクリュー音が1つ、恐怖とともにその存在を思い出す。

 冷静に、彼女は本から唯一にして最大の武器、九三式酸素魚雷を呼び出す。その時、海面に何かを投げ込むような音を感じる。

 

(・・・っ、爆雷?)

 

 頭を抑えられる。彼女は素早く旋回した。海上対海中で、唯一潜水艦が優位な旋回性能で素早く回避をする伊8の水中探知機に複数の水中推進音、彼女は足で水を蹴り身体を伸ばし水中を全速で進む、そのままゆっくりと慣性の法則で水中を進み続けた。

 燃料残量を気にしながら、水中音に集中する。巨大な何かが近づく音が足元をくすぐった。

 伊8は、躊躇なく魚雷を後方に発射する。青白い夜光虫が発する航跡以外なにも残さない殺戮者は、正確に彼女の後方を追尾する巨大イカに命中、信管を発動した。

 それにつられるように、海中で猛烈な爆発音で伊8は揺さぶられる。こうなっては、帽子を抑えながら神に祈るしかない。さらに、駆逐艦(?)とのダンスを生き残った彼女は、微速で北に進路を進み、夜間になったのを確認してから空気を求めるように海面に顔を出した。

 

 肺に新鮮な空気を吸い込んだ彼女は、すぐに意識を集中し、司令部に電信を送った。

 

『こちら、海中警戒艦伊8、敵、深海棲艦ヲ級ナリ、繰り返す。深海棲艦ヲ級を発見、鎮守府ヨリの方位100度、距離300里』

 

 




霧島「あーあーマイクチェック・・・提督、普通、こんな終わらせ方しますか?」

金剛「てーいーとーくー、それよりも、海兵隊を海軍の艦これに組み込むなんて無茶すぎデース」

霧島「ね、姉さま。それは、海戦だけでは死ぬほど地味になってしまいますから・・・」

提督「ちなみに、ガルパンと小林原文は2200年も大人気、何度もリバイバルされ、艦これとも、コラボされています。」

霧島「さらに、一応、艦これにも、妖精さんの大発という揚陸部隊がいるので、まったくむちゃくちゃではないですね。」

提督「そういうこと、つまり、四号戦車に乗った妖精なのだ。西住さんや、大尉殿は、そういうことじゃないと話が進まん」

霧島「話・・・進むんですかね・・・」


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。