艦これの世界でファンタジーの世界(オーバーロード)を戦ってみよう。   作:へっぽこ鉛筆

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前作で書いていたオーバーロード小説の続きです。以前の先品を読んで頂ければ嬉しいです。一応、これだけ読んでも楽しめるように、書くつもりです。




戦争の始まり

 

「よって、戦争は避けられないと考えます。」

 

 評議会龍前会議に重い沈黙が流れる。評議会の龍達は何も言わなかった。と、言っても会議に参加しているのはプラチナム=ドラゴンロードのツァインドルクス=ヴァイシオンだけだった。他の竜たちは、自国の現状など興味なく厭世的な生き方を送っている。各種の種族長たちも、それに慣れているのか延々と書類を読み上げながら、となりの種族に耳打ちをしたり、なんというべきか、会議に熱を感じない。

 唯一、憂慮を表しているのはホビットやエルフなどの、人間に近い妖精族達だった。ほかの種族は、関心がなく、むしろ戦争という状態を喜んでいるようだった。とんでもない話だった。収集した情報を見れば、今回の戦争はこのアーグランド評議国の危機と言って良い。それを、まるで町内会のゴミ出し日を決めるような議論で決めるのか

 

(もっとも、侮っているとしか言いようがない、な。)

 

 机の上で肘をつき、手を組む男はため息と嘲笑を浮かべているのを気付かれないように、意図的に表情を引き締める。が、傍観者ではいられなかった。古今東西、戦争において先陣を切らされるのは新参者と相場が決まっている。特に、この、中世に似たような価値観の国家だ。

 案の定、男の考えを読んだように、ライオンの顔をした・・・ビーストマンという種族の男が、睨むようにこちらを見てくる。当然だった。男は、彼らの部族に恨まれている。

 

「よかったではないか“提督”この評議国に忠義を確かめられる絶好の機会だな。」

「――ビーストマン・ツージン公、我々は海軍です。このような戦争では、補助的な役割しかできません。」

 

 意図的に、表情を殺し穏やかな口調の男に、嘲るような鼻息を漏らす。他の、好戦的・・・もとい、人間を食料としか見ないような種族から、同じような反応が返ってきた。

 

「その意見には私も賛成です。我々は、地上での行動が制限される。今回のような戦争に、積極的に参加できない。」

 

 同意をしてくれたのは、シーリザードマンの種族長だった。確か、ホホリとかいう発音しにくい名前だったような気がする。その他、マーマンの種族やセイレーンも同意を見せた。条理を通した。と、言うよりも我々鎮守府と共生関係を持っている。

 我々が“この世界”に来た時に、最初に友好的になった種族だった。別に、友誼と親愛を感じたからではない。ビーストマンやトロル、ジャイアントなど、シーリザードマンを食料にする種族と初期に共闘しただけだ。

 まぁ、どこも一枚岩ではないということか・・・妙に納得したように、二種軍衣《シロフク》のポケットを探った。タバコを無意識に吸おうとしたのだが、会議中だと思い出した。

 

「よさないか、お前たち――」

 

 よく響く低い声だった。まさに武人と言って良いヒゲの生えた大男・・・半身馬《ケンタウロス》のデレップが嗜める。今だに、ツージンは興奮したように鼻を鳴らした。こちらは、深く椅子に腰をかけ、ケンタウロスに一例した。

 

「わかった。引き続き、警戒を続けるべきだろう。次の会議は半年後に行うと決定する。」

 

 威厳のある龍王の声だか念波が届く、各々、席を経てば利害関係のある種族が話し合い、今後の対策を話し出す。こちらも、リザードマンのホホリのいかつい顔と、マーマンがまったく同意しかねる顔を向けてきた。

 これは戦争になるなと予感した。そして、そうなれば間違いなく自分は活躍できるだろう。しかし、それは決して楽しい未来のこととは思えなかった。

 

 

 

 

 

 そもそも、根本的な解決は戦争という手段では解決しない。

 彼の知る、一番最近の国家同士のバカバカしい殴り合いは、結局は、中国の経済破綻と環境問題を破滅的に推進して、いつもどおりに、朝鮮の対外的な依存度と、それに相対したよくわからない自尊心の増大を招いただけだった。

 そんなニュースを適当に斜め読みしながら、彼はブックマークから適当にいつものソーシャルゲーム、最近サービス終了が近いとされている大型DMMORPG『ユグドラシル』以降、殆どのゲームは体感型のリアルを追求したものになっている。

 その中で、彼がログインした『艦隊コレクション』も後発といってもかなりの作り込みされたゲームだった。

 

『さぁ、暁の水平線に、勝利を刻みましょう。』

 

 秘書官と呼ばれる少女が、座る大型のディスクの隣に立ち、誰にきかせるでもない言葉を話した。完全に仕様である。

 日本の巫女が着るような服を魔改造したそれを着た少女、アニメでしかありえないような眼鏡をかけた女性だった。こちらも、アニメでしかありえない胸を揺らし、いくつかの書類を抱えている。

 

「提督、今日のお仕事です。確認しますか?」

 

 慣れた手つき・・・これも仕様なのだが、コンソールを開きクリックする。16畳位の大きさだろうか、部屋の扉が開けば、多少くたびれたような少女たち、こちらは背中に大砲のようなもの・・・艤装と呼ばれる少女たち特有の装備だ。これを背中や腰周りに装備した少女たち、横隊に整列すれば、軍隊のように額に手を当て敬礼した。

 

「提督、第二艦隊、“暁”本日フタフタヒトハチ、周辺警戒任務から帰還したわよ。」

「ご苦労様・・・では、只今より、ボーキサイト輸送任務を命ずる。頼んだぞ、暁」

 

 そう言って、隣に佇む女性より、明らかに幼い少女の頭を、制帽の上から撫でてやる。「もう、子供扱いしないで」と、声には感情があるが、非常にぎこちない表情の少女が喋った。MAPやギミック、その他の部分の容量を節約し、少女たちとの会話やコミュニケーションを優先できるゲームだが、やはり、所詮はゲームであり現実には勝てない。もっとも、現実でもほとんど女性と話をしない上に、ゲーム自体、ユグドラシルよりも簡素化されている。要するに安価なゲームなのだ。

 ただ、課金しなくてもそれなりに奥深く遊べるゲームとして人気があり、ほかのメディアミックスもうまくいっている、ソーシャルゲームの優等生・・・ユグドラシルの真逆に進化した商業的に成功したゲームとも言える。実際に、サーバー容量の都合でゲーム登録者を制限している状態がまだ続いている。男の場合はある程度初期の段階で、登録したのでかなりの資源やアイテムを溜め込んでいる。“提督”の中でもホワイトな部類に入る。

 提督と呼ばれた男は、ディスクの上にある『やまぐちたもん』と書かれたネームプレートを横目で見た。200年くらい前・・・まだ、日本が大日本帝国と呼ばれていた時代の最後の戦争で活躍した闘将だ。空母というまだ、プロペラで飛ぶエアプレーンを運ぶだけの船で、最後まで戦い艦と運命を共にした提督・・・自分にはそんな気概など微塵もない。季節イベントでも、バケツと資源を節約し決して無理はしない。どちらかというと、井上成美なのだが、いや米内光政かな・・・まぁ、そこまで偉いわけではないか、と、自画自賛してみたりもしている。

 

「それじゃ、今日はどうしようかな・・・」

 

 軽く、独り言を言っても誰も気にもしない、コンソールを開き第一艦隊をクリックする。立体ディスプレイに映し出された艦むすに補給をしてやれば、督戦しますかという表示が現れた。一瞬、考えるが今日は久々に艦むすたちの活躍を見ることにした。

 軽く、コンソールに触れれば、SE効果で光の粒子となって提督室が艦内の船内へと変わった。『播磨』と名づけた督戦艦だ。普通課金しなければ、大和型があてがわれるのだが、ここだけは課金(と言っても千円ほどだが)して、自分の居城を守るため、最大排水量180000tの怪物を用意したのだ。ちなみに、主砲は50口径55センチ砲8門であらゆる敵を粉砕する。ほどでもないが、強力なのは間違いない。

 

「では、霧島艦隊、出撃します。」

 

 そして、勇壮なBGMが流れる。不気味な魚をグロテスクにし大砲を積んだような深海棲艦と呼ばれる化物が現れる。せわしなく艦隊から水上機の妖精たちが偵察に飛び出していく、忙しげに通信が旗艦と督戦艦の間に飛び交った。ちなみに、こちらの艦隊は

 

 霧島改二 金剛改二 比叡改二 榛名改二 鳥海改二 摩耶改ニ

 

 陣形はこのまま単縦陣、ようするに敵とどう言う形でも砲撃の殴り合いができる陣形だ。普通は、空母と戦艦などは任務郡がまったく違うのだが、ゲームだから関係がない。こういうところが、リアルを追求したユグドラシルと違うところだろう。青い今では見れない汚染のない海。

 一度見てみたいな。現在の海は、完全に灰色で、一部の領海以外生物がほとんど生息していない。いや、太平洋側はまだ、ましだが、日本海側はドブに汚物を混ぜたような色に変色している。中国朝鮮、さらにはロシアの汚染物質が、希釈性の悪い内海の水質を完全に破壊したのだ。そう言えば面白いことを思い出した。以前まで実質的に軍備常駐していた竹島という島を、日本が債務不履行を理由に引渡しを要求し、正式に日本の領土にした時だった。

 朝鮮共和国政府は『美しく誇り高いウリナラの海』と主張し、内外に喧伝していた島の周辺の海洋調査をした日本と世界海洋調査員は驚いたらしい。長年の汚水とゴミの不法投棄で世界でも有数の汚染された海になっていたのだ。この当時から、朝鮮政府のいい加減さは世界に知れ渡っていたが、ネットではまた新しい笑いのネタを提供され、大いに賑わった。

 

「提督、指揮をお願いします。」

 

 そんな馬鹿な事を考えていたら縦横陣に展開した灰色のやからが水平線の向こうから現れる。距離にしたら40000m程か、双眼鏡を構える。第一戦隊の旗艦は秘書官を兼任している。霧島の代わりに通信・・・先任参謀の大淀(?)ブサイクな鯨のような深海棲艦が接近する。一斉回頭、右舷主砲旋回撃ち方はじめ。

 所詮は前哨部隊・・・というよりゲーム的な雑魚だ。いや、違う。

 

「敵ヲ級空母を機関にした空母戦隊、防空戦ハジメ」

 

 大淀の切羽詰まった声が響いた。この海域に珍しい空母を中心にした深海棲艦隊、次の瞬間、ボツボツと空にシミのような黒いものが広がる。対空弾頭、敵の航空戦力がまともに殴りかかる。甲高い音が響き艦隊をすり抜けてこちらを攻撃するものが出てきた。

 

「んなッ!?」

 

 声にならない悲鳴、こちらを振り向いた大淀の顔にも驚愕の表情が浮かんだ。妖精と呼ばれる搭乗員たちが、コミカルな動きで逃げ回り、そのあたりの地面に伏せた。

 

「敵機直上、急降下始めます。」

「総員、伏せろッ、本艦も対空戦用意ッ」

 

 思わず叫んでしまう。ロールプレイング要素なのか、こちらもつい伏せてしまう。全長300mを超える巨艦が数機の爆雷でどうかもわからないが露天指揮所(ゲームの雰囲気を出すために、あえてそのような構造になっている)に直撃しないとも限らない。

 思わず制帽を手で押さえその場に伏せてしまう。露天艦橋は構造物の上にあるので僅かな揺れでも大きく感じるが、それでも損害が軽微だと感覚でわかる。

 こんなエフェクトあったのか?それとも、アップデートしたのかはわからないが、短い罵りを上げ、通信無線にっとりつき呆然とした顔をすぐに声を荒げる。

 

「大淀、損害確認・・・ん、コンソールを広げたらできるのか?」

「提督、損害確認・・・右舷、対空機銃が喪失のみ、戦闘に支障なし、艦娘たち、砲撃戦ハジメマス」

 

 何が起こってるんだ。これが終われば、運営からのお知らせを読まないとな。双眼鏡で確認すれば、綺麗な航跡描き敵の深海棲艦の前で回頭する。初弾を発射、総天然色の水柱が上がった。この瞬間だけはいつ見ても興奮する。既に夾叉した砲弾を撃ち続け、的に損害が増大し始める。

 勝った・・・と言うよりも、勝つような海域にしか出撃していないのだが、勝利すればコンソールが開き経験値と評価レベルが表示されるはずだがそれもなかった。わずかに疑問を感じ、妖精が羅針盤を準備するのを押しとどめる。

 

「進撃は中止、鎮守府に帰る。」

 

 大淀が不思議そうな顔をする。艦娘たちも戸惑っているようだ。

 普通は、一瞬で鎮守府に帰るのだが、ゆっくりと巨艦が回頭している。ゆっくりと遠心力で身体が傾く、何かに気づき大淀を呼び止め

 

「・・・水上機を発進させろ、鎮守府にも連絡、周辺警戒を密にさせるんだ。」

「帰路航路の警戒・・・ですか?」

 

大淀がマニュアルにないコマンドに反応した。それに驚くよりも、さらに言葉を続ける。

 

「それと、鎮守府の海域、水深、地理も調べろ。」

 

 何か言いたそうな顔をする大淀・・・帰路自体は、妖精たちが羅針盤で決めているらしい。いわゆるGPSだ。と、思う、彼のいた現代では当然のようにほとんどの乗り物に搭載され、3万程で変える中古のホバーバイクにも搭載されているほどだ。

 結果から言えば、彼の鎮守府はそこにあった。地形から言えば、港湾として理想的な環境にあった。

 奥行があり水深が深い湾内に位置する学校を思わせるような鎮守府の背後には、天然の要塞を思わせる山が存在し、さらに、森に囲まれ進入を防いでいる。海を見れば、湾の前を小島が占拠し、守るに易く、攻めるに難い地形と言って間違いなかった。ただ、ひとつだけ問題があるとしたら

 

「先住民・・・か?」

 

 三叉の槍、トライデントというべきか、漁業用のモリを持ったトカゲに似た化物が、不思議そうに遠巻きに眺めているのを双眼鏡で眺めながら、どうしたものか考える。

 期間の播磨をドッグ入りさせたかったが、当然のようにそんな危険を犯せられない。現在は、港湾を蓋をするように存在する島の近くに停泊させている。鎮守府に存在する艦娘たちには、艤装を装備させ湾内警戒をさせている。ゲームの性質上、陸戦に使えるユニットは限られている。いざという場合は海上から陸地を攻撃・・・港湾棲姫を攻撃する方法を採るつもりだ。

 もっとも、いくつかの陸戦ユニットには命令をだし、周囲を警戒させていたが、とにかく、最大限の警戒を有するに越したことはない。

 幸い、トカゲ・・・シーリザードマンの一団は、こちら側に友好的でもあった。内火艇に乗り、彼らの部族と交渉するのにためらわなかったのは、一応話ができそうだと確信が持てたからだ。(と、言っても大発動艇の妖精に守らせてはいた。)2m程の巨大な直立歩行のトカゲに挟まれつつ、こちらの事情を説明すれば周りの・・・多分、村の代表が騒ぎ出す。そしていくつか不思議なことに気づいた。

 

(どうして言葉が通じるんだ?)

 

 もっともな疑問だが、どうやらそういう世界だと納得する以外にないらしい、その他、文明、科学のレベルなどいくつか気づいたことはあったが、少なくとも艦隊コレクションの世界・・・そして、彼のいた世界とはまったく違うということだけはわかった。

 そして、こうしてNPC立ちに話しかけていれば、いつかログアウトの方法もわかるだろう。ぼんやりとそんなことを考えながら、魚の匂いのするシーリザードマンの部族に迎え入れられた。

 

 

 

 

 そこからわかったことは、どうやら艦隊コレクションの世界から、ファンタジーな剣と魔法の世界に飛ばされたということだった。運営との連絡もつかず、途方にくれていたところ、このリザードマンの部族と、顔がライオンのビーストマンの争いに巻き込まれてしまった。なにか、昔、旧世代イージス艦が太平洋戦争に巻き込まれたアニメがあったような気がするが、気分はそれに近いものがある。幸い、現在まで娘一人失わずに艦隊を維持していたが、しかしーー

 

「戦争かぁ・・・」

「提督、どうかなされましたか?」

 

 会議が終わり、馬車に揺られながらつまらなっそうに手を組む・・・隣で秘書艦の霧島がメガネを直しながら、こちらの顔を覗き込んだ。

 こんな、擬似海戦のゲームを愛好しているが、彼は別に戦争狂い(ウォーモンガー)というわけではない。どちらかというと、臆病で、石橋を叩いて渡るモントゴメリーのようなタイプだった。それは、高い勝率と低い喪失艦の数でわかる。

 だから、こうして暗い顔をしていた。

 最初から不協和音のある同盟関係に、妥協による作戦立案、しかも、聞くからに敵は強力だ。艦娘達にも損害が出るだろう。それでも自分は彼らと堅き結束の下に戦い続けるだろう。何より、彼女たち・・・哀れな艦娘達はそのことに疑問を全く持っていない。

 そして、何よりも、自分の中に沸き起こる形容しがたい感情に、自分でも感じてしまっているからだ。

 

 戦争の夏が始まったのだ。

 

 

 




まったく前に進んでませんね。


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