62:原画家とライターの格差

 前々回の【60:原画家>>>>>>>>>>>>>>ライター】の記事が同業の人の目にもとまったようで、大体の人が「わかる」みたいなコメントをしていた。

 やっぱ原画家とライターじゃ扱いに差はあるようだ。俺だけじゃなかった。よかった。

 いやよくない。

 今回はそれに絡めた話をまたしてみたいと思う。


 最近更新が多い?

 暇なんだよ。察してくれ。



■メーカーへのアンケート内容はライター職に限らず外注の場合、

 原画、声優の方へこんな内容で言及されてましたよ~みたいなことは

 伝えてもらえないことの方が多いのでしょうか?



 やはりメーカーによるのだが、外注に見せてくれるメーカーでも、声優さんにまでは見せないんじゃないだろうか。

 収録現場で「好評でしたよ」と話したりはするが、事務所に「ユーザーアンケートの回答です。ご査収ください」なんて送ったりはしないだろう。


 ライターが企画も務めていた場合は、ライターには見せるけど原画家にはいかない、ということもあるかもしれない。

 だが俺の経験上、原画家には逐一あらゆるデータを渡しているけど、ライターには一切無し、ということの方が多い。圧倒的に多い。


 原画家はめちゃくちゃ大事にするけどライターは使い捨て、なんてメーカーは本当に多くて、原画家の知名度に依存しているメーカーほどその傾向が強いように感じている。


 実際、ライターがいなくなっても原画家さえいればグッズを作れるのだから、原画家を大事にするのは当然と言えば当然だ。

 ライターがミニシナリオとか出しても、絵がついてなかったら売れないからね、悲しいことに。

 それに、原画家に中途半端なタイミングでバックれられたら、もともと複数原画家体制ならまだなんとかなるものの、単独だったらまずいことになる。でもライターなら文体の変化はバレないことが多い。ごまかせる。原画家の離脱だけは避けなくてはならない。

 このようにゲーム制作における重要度の違いから、原画家の機嫌を損ねるならライターを切り捨てる、なんて判断をするメーカーは存在する。実際そういう目にあったことがある。


 どのライターもそうだと思うが、イベントCGのコンテを作る際、どう魅せたらこのシーンが盛り上がるかを考えているわけだ。

 奥手な二人がようやく小さな一歩を踏み出したシーンだから、繋いだ手と手をしっかりとユーザーに見せたい、とか、CGをイメージしつつシナリオを書いたりもするわけだ。

 で、いざできあがったCGを見てみると、二人が仲良く並んで歩いてるけど手が見切れてるとか、指定ががっつり無視されている。どういうこと? とクライアントに聞いてみると、「先生が二人の顔を大きく見せたいと言っていたので」とかクソ見たいな返答が返ってくる。

 いやお前、シナリオでめっちゃ手を繋いだことに言及してるじゃん、そこ見せなくてどうするんだよアホかよ、というのをオブラートに包んで伝えるも、「いや先生が嫌がってるんで」で終わりだ。


 ラフとかチェックしねーの? って思うだろ?

 できないんだよ。頼んでもラフ見せてくれねーの。

 こっちも事前に指定を無視する原画家だってわかっていた場合は、最大限譲歩して「CGにシナリオをあわせるからラフを見せてくれ。せめて余裕をもって修正させてくれ」とかお願いするんだよ。

 でも見せてくれねーの。そのせいで場合によっては修正する時間がとれなくて、CGとテキストがチグハグなまま発売することになり、ユーザーに突っ込まれるんだよ。原画家じゃなくてライターが。

 見せない理由は、外部に情報を漏らしたくないからと、だいたいはそう言われるだろうか。

 でも原画家にはシナリオ渡してるんだよな。

 つまりライターを軽んじているわけだ、そういうメーカーは。


 他にも、キャラデザ資料には「貧乳キャラ」と書いてあって、予定ではこっちの執筆前にキャラデザもできているはずなのに、原画家がちっとも作業を始めないせいでキャラデザなしでシナリオを書き始めることになって、全部書き終わった段階でやっとキャラデザができて確認してみたら「巨乳キャラ」に変わってたりとかもある。

 なんで? って聞いたら、「いや先生が巨乳キャラにはまってるみたいでそうなりました」

 知らねーよ。

 つかせめて巨乳書きたいって言った時点で俺に言えよ。

 その時点で軌道修正して別案とか提示できただろ。

 ってことを、優しく伝えるんだ。

 でもそういうメーカーは俺たちのことなんて別に大事じゃないし、原画家先生の意向が第一だから、しわ寄せは全部こっちにくるんだ。

 使える時間を最大限使って貧乳ネタとかを削って、体裁を整えることになるわけだ。

 それでユーザーにこう言われる。


「巨乳キャラなのにパイズリがないとかライターにセンスがなさ過ぎる」


 そうなんだよ、こういうときライターが責められるんだよ。

 だって原画家の気まぐれでライターの知らないうちに貧乳キャラが巨乳キャラに転生してたとかユーザーは知らないんだもの。

 こういうこと割とあるんだ、マジで。

 さすがにこれで叩かれると「俺悪くないんだけどな……」とめちゃくちゃへこむ。


 自分のわがままで誰かが迷惑を被る、ということがわかっていない原画家は結構いる。

 ゲームのクオリティアップに繋がるなら、「おしやったるか!」なんて気持ちにもなるんだが、いやその修正とか変更いる? って場合の方が圧倒的に多い。


 こんな記事を読んでいる原画家なんかいないかもしれないが、なにか大きな修正をしたいと思ったとき、いつも相談なしで強行してしまう人は、ぜひ一回立ち止まって(その結果誰かに大きな負担を強いたりしないかな……?)と考えてみて欲しい。負担が出そうだと思ったらしっかり相談するか、思いとどまって欲しい。

 メーカーは原画家のわがままを聞くが、そのわがままを叶えるために多大な労力を払っている。

 というかだいたいはライターが血反吐を吐くことになる。

 それでユーザーに叩かれる。ライターが。

 原画家じゃなく、ライターが、責められる。

 ライターが。


 ――と、苦い記憶がよぎっていささか感情的な文章になってしまったが、それだけ俺が苦労してきたんだと見逃して欲しい。

 ただ俺が俺が! と話していながらも、実は原画家の気まぐれで一番苦労するのはグラフィッカーなんだ。

 線画が届かねぇ、届かねぇ、全然届かねぇ……と焦らされ、マスター直前にドカンと大量に届いて、ふざけんなアイツ……! とか思いながら必死に塗っている。

 原画家の指定通りに塗ったのに、「気が変わった」とかで塗りの方向性自体が変わってしまい、全立ち絵&CG塗り直し! とかもあったりする。そしてグラフィッカーが血の涙を流しながら必死に作業する。


 ほんとにな……、あるんだ……、こういうことが……。


 もう質問内容から大きく逸れてしまっているが、軌道修正する気も無いのでこのまま締めさせてもらう。


 原画家に限らないのだが、変更にかかるコストを考えてないクリエイターはかなり多い。

 様々な人に迷惑がかかる、という当たり前のことが抜け落ちてしまっている人が本当に多い。


 繰り返しになるが、なにか思いついたときは、一度立ち止まってみて欲しい。

 ほんとお願いします。

 マジで。


(追記)

 コメントを拝読していて思い出した。

 設定資料には【大和撫子】【髪色は黒】【ストレートのロング、前髪ぱっつん】とか書いてあるのに、原画家の「こういうキャラ苦手なんだよね」の一言で、【銀髪の巻き毛、ふわふわのロングヘア。お嬢様風】とかになっていたりする。

 こういう変更はなぜか事前にライター側に知らされず、公式HPとか雑誌とかチラシとかを見て「は?」となる。

 当然、収録ギリギリまでシナリオの修正を強いられる。

 これは極端な例ではあるが、実際にキャラデザが資料と違うことはよくあるし、公式HPとかを見て初めて変更に気がつくこともほんとーーーーーーーーに多い。

 なんで原画家優遇のメーカーってこっちへの報連相を怠るんだろうな。作品のクオリティを落とすだけなのに不思議でならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー