60:原画家>>>>>>>>>>>>>>ライター
今回は質問に答えつつ、今までたびたび触れているフリーライターの扱いなんかに触れてみたいと思う。
■意見や感想で参考にする媒体でツイッターが圧倒的に多いという回答をされておりますが、
昨今のSNSの隆盛を鑑みるにオフィシャルのアンケート葉書やアンケートページでの回答よりも重要、参考にされることが多いのでしょうか?
これは俺の言葉足らずで申し訳なかったが、あくまでもフリーの場合と思ってくれ。メーカーは直接送られてきた感想を大事にしているはずだ。
ただアンケートの回答なんかは、俺みたいなフリーには見せてもらえないことが多いのだ。
つまりオフィシャル以外の感想を、自分で探さなければいけない。
必然的に、批評空間のようなサイト、個人ブログ、そしてもっともお手軽なツイッターなどの意見しか入ってこないことになる。
よって、ゲームを外注中心で作っていた場合、オフィシャルに送った意見・感想は、その中心となった人物に届いていない可能性があるわけだ。
今はだいたいのクリエイターはツイッターかブログをやっているから、感想は直接送りつけた方が確実だ。
あと特定のユーザーの意見のみに引っ張られていないかと心配しているようだが、さすがに俺たちもそんなにアホではないので安心して欲しい。
あくまでもそういう意見があるんだな、程度で一個人の意見を重要視することなどない。
もっとも、その人物が何千、何万人に影響を与えるような発言力を持っていれば別かもしれないが。
親切なメーカーは本当に親切で、雑誌の記事校正までさせてくれたり、グッズを全部送ってくれたり、ムービーとか体験版も公開前に見せてくれたりするのだが、そこまでしてもらえることはあまりない。
企画やメインライターをよく任されるような人でさえ、酒の席で「ああ……あそこのメーカーひどいね……」なんて愚痴をこぼすことがあるから、メーカーによっては本当に雑に扱われる。
ただ、同じ外注でも原画家はとても大事に扱われることが多く、原画家がツイッターで「主題歌を公開前に聴かせていただきました!」とか「ムービーとてもいい仕上がりなのでお楽しみに!」とか呟いている裏で、(俺なんももらってねぇな……)とかがっくりきているわけだ。
そして極めつけは「今日はメーカーさんの打ち上げに参加してきましたー!」とか楽しげな写真をアップしているのを見て、「声wwかけられてないwww」とか草生やしている俺がいるわけだ。
なぜか収録に原画家が行って、そのキャラを担当したライターが呼ばれてないとかもある。
ここまで来ると(俺の性格が悪すぎて避けられてるんじゃないか……?)などと不安にもなるが、同じような扱いをされているフリーランス仲間もいるから、人格面の問題ではない。はずだ。おそらく。
たまにエロゲ雑誌の編集さんと酒の席で一緒になったときに、「ライターさんは大事にされないこと多いですよね」なんて言われたりもするから、業界的にそうなってしまっているのだろう。悲しいことに。
前も言ったが、よほどの人気ライターを除いて、ライターで売り上げが大きく伸びることはない。
実名は出さないが、とある人気ライターが規模が小さいメーカー&知名度が低めの原画家と組んだときは、ゲームの評判はめちゃくちゃよかったにもかかわらず、雑誌の売り上げランキングには載っていなかった。つまり初動はランキング外の低売り上げだったわけだ。
大手メーカーと組んでヒット作を世に送り出した確かな実績をもったライターでも、これなのである。
ライターが売り上げに影響を与えない、というのはわかってもらえただろう。
だから「俺売れてるんだよねー」って自画自賛しているライターがいると、(いやお前、別のメーカーだとぜんぜん売れてねぇじゃん。原画家とあのメーカーの広報力のおかげだろ)なんて胸中で毒を吐いていたりするのだが、それはまあ置いておこう。ただの俺のひがみだ。
初動勝負の昨今において、初動に影響を与えないライターというのは、原画家よりも扱いが雑になりがちだ。
俺みたいなのは割り切っているが、引く手あまたな人気ライターはそういうメーカーとは仕事をしない。
せっかくいいライター捕まえたのに逃げやがってさぁ。とかメーカー側が被害者ぶってるがお前んとこの対応が酷すぎたからやぞ、逃げるの当たり前やろ。なんてこと、結構多いのだ。
あと自分の方が力が強いことを理解している原画家もたまにいる。
最終的にライターが折れるしかないことがわかっていて、無茶な要求を通そうとしてくる原画家が稀にいる。
そういうときメーカーは盾になってくれない。頭を下げつつ、申し訳ないという顔をしながらも、とにかくやれと無理難題を押しつけてくる。
様々な思い出が蘇りまとまらなくなってきたが、とにかく俺みたいな人気でもなんでもないライターの立場は、非常に弱い。
たまにいい作品を作れても、メーカーに届いたユーザーの声とか俺まで来ないんだ、マジで。
なので、ちょっと勇気が必要かもしれないが、楽しいシナリオに出会ったときは、そのライターに直接「おもしろかったよ」と言ってあげてください。
涙が出るほど喜びます。
評判がよくてもメーカーは褒めてくれないので、ユーザーの声だけを支えに生きています。
たまにクソゲーを出しちゃうこともあるけど、これからもよろしくな!