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数学女子に育てたければ、女子校に入れよ

日本のような男女の不平等度が高い社会では、数学の性差は大きくなる

小島寛之 帝京大学経済学部教授

 女子の数学能力について最近、いろいろな統計が研究報告されている。例えば、Niederle and Vesterlund(2010)、Fryer and Levitt(2010)、Cai他(2019)などである。それらの報告に共通している推定結果を先まわりして提示してしまうと、次のような統計的事実だ。

[統計的事実]
 (1) 女子は男子と比較すると数学に弱い
 (2) それは脳の機能や生物学的な原因ではない
 (3) 男女平等な社会ほど数学での性差は小さい
 (4) 数学的能力が高い女子は女子校に多い

 筆者はこれらの事実から、次のことを主張しようと思う。

「娘を数学女子に育てたければ、女子校に進学させよ」

 数学のできる女子は、平均生涯所得も高くなるし、リケジョはもてる、という報告もあり、いろいろなご利益があるだろう。以下、その根拠を詳細に書いていく。

数学オリンピック代表の学校は?

 数学オリンピックは、毎年行われる国際的な数学コンテスト。国の代表選手は6人である。日本は1990年から参加しているが、代表選手の女子のみをピックアップし、その所属校を表にした。

拡大※1990〜2019年の全代表180人から抽出

 これは実人数の表で、もちろん中には複数回出場している女子も存在するが重複はカウントしていない。

 まず、注目したいのは女子率の低さだ。全出場者は6人×30回=180人。そのうち、女子はたったの13人である(のべ人数で言えば、21人)。統計的判断をするには標本が少なすぎるが、あえて乱暴な推定をすれば、そのうちの約半数は女子校の生徒だ。全国には高校が4897校あり、このうち共学校が9割以上を占め、女子校は299校で6%しかない。比率を考えれば、半数というのは大きな偏りである。これは、前記の[統計的事実]と整合的な結果だ。

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筆者

小島寛之

小島寛之(こじま・ひろゆき) 帝京大学経済学部教授

東京大学理学部数学科卒、塾講師を経て帝京大学経済学部専任講師、同助教授、2010年から現職。経済学博士。数学エッセイスト/経済学者として著書多数。『完全独習 統計学入門』(ダイヤモンド社)は12万部超のベストセラーとなっている。

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