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【社説】

蔡台湾総統再選 中国は民意を尊重せよ

 台湾総統選で、中国と距離を置く与党・民進党の蔡英文総統が再選された。同時に実施された立法院(国会に相当)選挙でも民進党が議席の過半数を維持した。中国は台湾の民意を尊重すべきだ。

 蔡氏は元旦の新年談話で、民主化要求デモが続く香港情勢を引き合いに「民主主義と専制(政治)は同時に同じ国家に存在できない」と訴えた。

 香港デモ隊は「中国が香港で『一国二制度』を踏みにじっている」と批判を続けてきた。そもそもこの制度は、中国が将来の台湾の平和的統一を念頭に編み出した政策である。

 蔡氏の勝因は、「今日の香港は明日の台湾」と訴えることで、昨年六月に起こった香港デモ以降に顕著になった台湾住民の対中警戒感を、自身への支持につなげたことであろう。

 一方、最大野党・国民党の韓国瑜高雄市長は「親中派」の印象が払拭(ふっしょく)できず、巻き返せなかった。韓氏は二〇一八年十一月の同市長選で国民党エリートとは一線を画す「庶民派」を売り物に「韓流ブーム」を起こした。

 だが、当選からわずか四カ月で総統選の選挙運動を始めたことから、「市長としての実績もないのに、責任放棄だ」との批判が巻き起こり、同市の市民団体が市長罷免を要求した。足元の地盤すら固められなかったことも敗因の一つになったといえる。

 一院制の立法院(定数一一三)選挙では、四年前の前回選で初めて過半数を制した民進党は、今回もその勢力を維持した。

 党綱領に「独立」を掲げる民進党が、総統ポストと立法院過半数の勢力を握り続けることは、中国には不快であるかもしれない。

 だが、一期目の蔡総統は中台関係「現状維持」という現実的な政策を続けた。東アジア安定のため賢明な選択であったといえる。

 多くの台湾メディアは、中国が蔡氏に不利なフェイクニュースの流布、サイバー(電脳)テロ、親中派陣営への資金提供など、露骨に選挙干渉してきたと非難する。立法院は昨年末、中国が不正な手段で台湾に干渉することを阻止する「反浸透法」まで可決した。

 台湾では一九八七年の戒厳令解除後に民主化が進み、これまで三度の政権交代が実現している。

 今回は政権継続という民意が示された。中国はこの選択を重く受け止め、あの手この手での干渉や圧力を続けるべきではない。

 

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