大型連休終了後、ついにスマホゲーム依存「本当の恐怖」が始まった

息子がゲーム依存症になってしまった④
鈴木 優

「ガチャ」にはギャンブルと同等の刺激がある

それにしても、お金にしろ時間にしろ、なぜこれほどまでに人はスマホゲームにハマってしまうのだろうか。ゲームが好きな人には当たり前のこともあるだろう。けれど、今回はスマホゲームにハマりやすい理由について少し書いてみたい。

 

1つめは、当たり前だが、スマホでできる点だ。これはとても大きい。

何度も書いているように、スマホはいつでもどこでも、電車でもトイレの中でもできる。息子も朝起きてから夜寝るまでずっとスマホを手から離さない。加えて、無料で始められることも大きい。家庭用ゲーム機など、いちいち買わなければならない商品と比べればハードルは格段に下がる。つまり、スマホさえあれば、手軽にできるスマホゲームへの入り口はとても広くて敷居も低い。スマホで無料というこの2つの要素は極めて強力だ。

2つめは、終わりがないこと。

たとえば、家庭用ゲーム機のゲームソフトではクリアという概念があったのに対して、スマホゲームには明確な切れ目がない。おまけに、登場するキャラクターやストーリーなどが次々とアップデートされ、楽しみがより長く続くように変わってゆく。ゲーム好きならこんなにうれしいことはないだろうけれど、終わりがないうえに、飽きさせない工夫が次々とこらされるのだから止めづらくなるのは当然だ。

3つめに、依存症になる傾向がある人にとって大きな要素として、人とつながれることが挙げられるだろう。

意外に思うかもしれないが、ネット依存症の患者の根底には、現実の世界で「人に依存できない」心理があると言われている。

学校でも会社でも、日々過ごす中で人間関係を築くのが苦手だったり、うまくいかったり、あるいは依存症の患者にありがちなケースとして、家族からも孤立するなかで、ゲームをするときなら人とつながれる。孤独を感じなくて済む。しかも、うまくいかなければ人間関係をリセットしてまた新たに始めればいい。

だから、人付き合いが苦手な人にとってはなおさら安心に違いない。

マルチプレイが好きな息子の場合にも、これはよく当てはまると感じている。逆に言えば、社会的な能力が高い人は依存症になりにくいと言われている。

そして、4つめ、決定打は「ガチャ」だ。

スマホゲームのほとんどは無料で始められる。ただし、無料でできるのはあるレベルまでで、それ以上ゲームを続けたり、あるいは何かしら強いキャラクターやレアな武器などを手に入れたりするためには課金が必要なものが多い。なかでも、特別なアイテムを有料で提供するときに、ガチャガチャやガシャポンのように「当たりはずれ」がある仕組みがある。これが「ガチャ」だ。

議論はあるものの、要はギャンブルである。ゲーム依存症治療の第一人者である久里浜医療センターの樋口進氏は「『ガチャ』には関しては、明らかにギャンブルと同等の刺激があります」と断言する。

スマホゲームに「ガチャ」の要素が加わって、ギャブル的要素が一気に高まった(photo by istock)

依存性の高さからしたら、「ガチャ」は本当に怖い。息子も最近はスマホゲームをやるのは「ガチャ」を引くためだと言ってはばからない。例のゴールデンウィーク中の「事件」も「ガチャ」に関することだった。

日本は「ガチャ」ビジネスが世界に先駆けて定着した国だ。欧米でもほぼ同じシステムの「ルートボックス」が広がりつつある。その一方で、「ガチャ」については、何十万円という課金をしてもレアなアイテムが手に入らなかったり、レアアイテムが当たる確率を誤魔化したりなど、過去に何度もトラブルがニュースになり、そのたびに「ガチャ」のギャンブル性や依存症をまねくリスクなどについて物議をかもしてきた。

とりわけ、ギャンブル性の高いガチャについては、世界規模の問題もたびたび起きている。そうやって繰り返し問題が起きるなか、今年になってから、世界的には「ガチャ」が規制される方向に動き始めた感がはっきりとある。

なかでも象徴的なのは、9月17日に欧州各国から発表された、ギャンブル性の高いゲームへの規制を議論するという宣言だろう。この流れはオランダやベルギーから広がり、やがてEU全体へ及ぶと見られている。興味深いのはなぜか米国のワシントン州が加わっている点だ。ハワイでは以前からガチャ規制の検討がされているし、おそらく米国でもますます規制論が広がっていくのだろう。

かたや、日本では「ガチャ」は実質的に野放しであり、規制については、置いてけぼりを食っている感は否めない。