ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第40週・再起編 乙羽信子、田中好子… ドラマの原作・キャスト・主題歌など…

おしん 一挙再放送▽第40週・再起編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 初子
  2. 川村
  3. 商売
  4. 自分
  5. 東京
  6. 田倉
  7. 希望
  8. 魚屋
  9. 仕事
  10. 百貨店
  11. 戦争
  12. オート三輪
  13. 今日
  14. お母さん
  15. 八百屋
  16. 駅前
  17. 時代
  18. 明日
  19. 一人
  20. 学歴

f:id:dramalog:20200112090743p:plain

おしん 一挙再放送▽第40週・再起編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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おしん 一挙再放送▽第40週・再起編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
昭和25年夏。5年間の苦労の末、ようやく開店できた店は徐々に客が増え始めた。消息がわからなかった初子も4年ぶりに連れ戻すことができ、田倉家に久しぶりに家族がそろった。しかし、おしん乙羽信子)の安どもつかの間、希望(のぞみ)が陶工になりたいと窯(かま)元に弟子入りし、おしんのもとを去る。仁(山下真司)も田舎町の魚屋で一生を終わりたくないと言い出し、商売のしかたについておしんと議論になる。
出演者
【出演】乙羽信子田中好子山下真司,塩屋俊,浅沼友紀子,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和25年の夏
終戦から5年たった日本は

ようやく 戦後の混乱も落ち着き

経済成長の時代を
迎えようとしていた。

おしん
やっと 1軒 小さな店を構え

4年も消息の途絶えていた初子も
連れ戻す事ができた。

…が
おしんの安堵も つかの間で

希望が 陶工になりたいと
窯元に 弟子入りし

おしんのもとを去っていった。

(仁)でも よく 諦めて
帰ってきたね 母さん。

(おしん)窯元に住み込みで
弟子入りするなんて

大変な事らしいんだよ。

希望は それを誰の世話にもならず
ただ 先生に 手紙を書き続けて

その熱意を
認めてもらったんだからね。

なまはんかな覚悟じゃ
なかったんだよ。

先生も しばらく
預かってやりたいって

おっしゃって下すったよ。
見直したな あいつ。

とうとう 母さんまで
納得させたんだからね。

まだ 海のものとも山のものとも
分からないし

見込みがなかったら
帰されるかもしれないけどね。

ああいう仕事は 努力だけじゃ
どうしようもないからな。

希望には 生まれつき そういう
才能が備わってるんだよ きっと。

希望のお母さんって人もね
やっぱり 絵が お好きだった。

よく 絵描きになりたいって
おっしゃっておいでだった。

希望のやつ
おふくろさんの血 引いてたのか。

加賀屋を再興する事は
できなくなっても

希望が
いい陶工になってくれたら

お加代様も
きっと許して下さるだろう。

お加代様が果たせなかった夢を

代わりに
希望が継ぐ事になるんだからね。

そうだよ。 絵だって 焼き物だって
変わりゃしない。

立派な芸術だよ。 希望には
きっと ふさわしい道だよ。

明日は お加代様のお墓へ
お参りして

よく お詫びをしとこう。

さてと…。

母さん 俺ね
ざっと 計算してみたんだけど

オート三輪で走り回って

店で あんなに忙しい思い
してるのにね

大して もうかってないんだよ。
こんな調子じゃ 家賃 払って

オート三輪のガソリン代や減価償却
見積もったら

もう 食っていくのが やっとだよ。

店 大きくするなんて
いつの事になるんだかね。

一家4人 食べていけたら
言う事ないじゃないか。

まだ 店 開けて
日も浅いんだから

損しないだけ
ありがたいと思わなきゃ。

でも 魚とか野菜だけじゃ
どんなに忙しくても

たかが知れてるよ。 もっと
利益の大きい商売 考えなきゃ。

魚屋とか八百屋だけじゃ
駄目だって言ってるんだよ!

この商売 競争が激しいから

よそより 安くしなきゃ
売れないだろ。

それに
全部 売らないと 腐るから

原価 割って
売る事だってあるじゃないか。

体は 使わなきゃいけないしさ。
こんな効率の悪い商売ないんだよ。

ねえ もっと ほかの事
考えなきゃ!

何をやるって言うのよ?
だから この際 それを真剣に…。

商売の難しさなんて
何だって同じだよ!

魚屋だって 八百屋だって
その日その日に 必要なものなの。

一番 回転が早くて
何よりも 確かな商いなんだから。

でもね…。
ほかの事を考えるよりも

一つの事を 一生懸命やる方が
大事なの。

魚屋も八百屋も
満足に できなくて

ほかの事 できるはずないだろ!

(初子)あっ お昼の御飯

お膳の上に
用意してありますからね。

後 頼んだよ。
気を付けて。

♬~

毎度 ありがとうございます!
ありがとうございました!

東京行きの切符 買ったって 一体
何しに行くのよ? 東京へなんか。

それも 母さんに黙って
勝手に お金 持ち出したりして。

後で話すつもりだったんだよ。

(禎)東京って…。
ホントに? お兄ちゃん。

冗談じゃないわよ
この 店の忙しい時に。

のんきに
東京 遊びに行く暇なんか

どこにあるって言うのよ?

遊びに行くんじゃないよ。
働くんだよ 東京で。

働くって あんた…。

予科練時代の仲間の
親父さんがね

東京の百貨店で
店長 やってるんだよ。

そこで 従業員募集してるって
いうから…。

あんた
百貨店の店員になりたいの?

ああ。 俺 こんな田舎町の魚屋で
一生 終わるの ごめんだからね。

俺はね 母さん 店を持つって事に
夢を懸けて

4年間 母さんの行商に
ついて歩いてきた。

でも それは 魚屋とか八百屋を
やるためじゃなかったんだよ。

俺には やりたい事があったんだ。
でも 今のままじゃ

母さんが いくら 髪 振り乱して
働いたって たかが知れてるよ。

魚屋とか八百屋で 一体
何ができるって言うんだよ?

忙しいだけで ろくに もうけも
ありゃしないじゃないか。

何度も言うようだけど
ほかの商売を考えない限り

永久に その日暮らしの魚屋で
おしまいだよ。

でも 母さん
それで 満足してるんだ。

もう 俺は
とても ついていけないよ。

魚屋や八百屋から始めて
それで お店の地盤が出来たら

いろいろ考えるって
おっしゃったんじゃない 母さん。

こんな みみっちい商売やってて
いつになったら

そんな でっかい事ができる元手が
貯まるって言うの?

今だって 食うだけで
精いっぱいじゃないか。

俺には 先が見えてるんだよ。
仁ちゃん!

こんな所でね いくら苦労しても
どうにもなりゃしないんだよ。

どうせ働くなら
俺は もっと でっかい店で

思いっきり
自分の力を試してみたいんだよ。

外へ出ていって
何ができるって言うのよ?

何をさせてもらえるって言うの?
ただ こき使われるだけで。

それでも 魚屋とか八百屋より
ましだよ。 百貨店ってのはね

これから いくらでも伸びる
企業なんだよ。 (初子)仁ちゃん!

希望だって 自分の好きな道を
歩き始めたんじゃないか!

俺がいけないって法は ないだろ?
バカな事 言わないで!

希望ちゃんが出てった上に

また 仁ちゃんまでが
うちを出ていくなんて

少しは 母さんの気持ちにも
なってあげなさい!

いいよ もう。 何 言ったって
聞く耳 持ってやしないんだから。

あ~ この店が
そんなに嫌だったらね

どこへでも行ったらいいだろ!
母さん!

ねえ もう一度
母さんと よく話し合って…。

母さんはね 母さんの思うとおり
この店 やっていくよ。

あんたが 何て言ったって
変える気持ち ないからね。

話し合ったって
無駄だって事だよね。

さっぱりしたよ これで。

予定どおり 明日 たつ。
仁!

母さん 一切 援助はしないよ。
自分で好きな事やる以上

自分の事は
自分で 責任 持つんだね。

泣き言 言って 帰ってきても

このうちの敷居は
またがせないから。

それだけは 覚悟して
出ていくんだね!

初ちゃん ほっておきよ!
だって このままだったら

ホントに 仁ちゃん
東京 行ってしまいますよ!

いいじゃないか。

親子だって 考え方が違えば

別々の生き方しなきゃ
ならない時だってあるんだから。

でも…。

母さん。 今日は 休んで下さい。

母さんの留守に 仁ちゃんが
出発するような事になったら…。

せめて 今日一日 話し合ったら

仁ちゃんだって
分かってくれますよ。

母さんが止めて
やめるような子じゃないよ。

それに 一生 後悔しながら
この店 やったって

仁だって つらいだろうし…。

これ 当座の生活費。

初ちゃんの気持ちって事で
持たせてやって。

初ちゃんと2人でだって
やっていけるよね この店ぐらい。

やっていかなきゃ!

じゃあ 行ってくるよ。

はい。

お兄ちゃん…。
じゃあな。 初ちゃんも元気でね。

朝御飯は?

要らない。
汽車の時間があるんだよ。

もうすぐ 母さん
帰ってらっしゃるわ それまで…。

でも 顔 合わせない方が…。
それに 話す事もないし。

元気で出かけたって言っといて。

どうしても 行くのね?

うん。 友達が
下宿 探してくれてるんだ。

落ち着いたら 連絡するよ。
お兄ちゃん…。

何だ その顔は…。

お前 一生懸命 勉強して
大学 入れよ。

東京の大学 入れ。
兄ちゃん 面倒 見てやるから。

ホントに ちゃんと
連絡してちょうだいよ。
うん。

手紙だけは書くのよ 母さんに。
分かった。

それから… これ。

いいよ 金なんか。
俺 勤め先 決まってるんだから。

母さんが 仁ちゃんにって…。

やっぱり
仁ちゃんは こんな田舎町で

くすぶってるような人じゃ
なかったのかもしれない。

東京の百貨店の方が似合うわ
きっと…。

バリバリ 仕事するようになったら
いつか 母さんと見に行くから。

ああ。 頑張るよ。

体だけは 大事にしてね。

ああ。

♬~

(オート三輪の走行音)

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(初子)御苦労さまでした。

(おしん)頂きます。

仁 出かけたんだね。

汽車の時間があるからって…。
頂きます。

ねえ 初ちゃん。
朝鮮戦争の特需ブームとかで

そういう関係の工場は
今 どこも忙しくて

女の人も
結構 働きに行ってんだって。

それもね
所帯 持ってる主婦が多くて。

工場が引ける時間には もう
店が閉まっちゃってるから

買い物に困ってるんだって。

うちもね もう少し これから
遅くまで 店 開けといた方が

いいんじゃないのかね。
母さん!

仁ちゃんが出てったっていうのに
よく そんな のんきな事を!

母さんが 本気で止めてくれたら

仁ちゃん 東京行き
諦めたかもしれないんですよ!

母さんが
そんなふうに冷たいから…。

いいじゃないの。 東京の仕事が
仁に ふさわしいもんだったら

一生 それを
やっていけばいいんだし

もし 仁の見込み違いだったら
諦めればいいんだから。

でも 失敗しても
このうちの敷居は

二度と またがせないって
母さん…。

そうでも言わなきゃ
うまくいかなくなった時は

いつでも
ここへ帰ってくればいいって

辛抱できる事も
できなくなるだろう。


とうとう
初ちゃんと 二人きりになったね。

まあ それもいいでしょ。
文句 言うのが いなくなって

気の合った女同士で
好きな事やってればいい。

オート三輪の方ね
母さん一人で回るから

初ちゃん お店の方やってくれれば
それでいいからね。

母さん。
うん?

お店 遅くまで開けてるより

工場が引ける頃 オート三輪
工場の たくさんある場所へ

魚と野菜 売りに行ったら
どうかしら?

お店があがってから
出かけていって

ちょうどいいんじゃないですか?

疲れるかもしれないけど…
お店で お客さん 待ってるより

こっちから出かけていった方が
売れるんじゃないでしょうか?

ハハハハハハ! 驚いた!

さすがに 母さん
そこまで 気が付かなかったよ!

初ちゃんの方が
よっぽど 商売人だよ!

希望を 窯元に弟子入りさせ
今 また 仁を上京させて

おしんは 頼りにしてきた息子を

2人とも
失うはめになってしまった。

…が おしん
後悔してはいなかった。

自分の意思で 自分の道を選んで
歩き始める事は

おしんが たどった生き方でも
あったのである。

禎。 明日からね
母さんと初ちゃんと

二人っきりで お店を
やっていかなきゃならないから

とっても 禎の面倒まで
見てられないんだよ。

自分の事は 自分で やりなさい。

母さんたちはね 朝早く出かけて
夕方 お店を開けて

それから また オート三輪
商売に行くんだから…。

寂しいだろうけど 辛抱してね。

禎は しっかり 受験勉強やるのよ。

うちの事も 店の事も
心配しなくていいんだから。

(禎)母さん! 私だって

洗濯と掃除と御飯の支度ぐらい
ちゃんとできます。

これからは
3人で暮らしていかなきゃ。

もう お兄ちゃんたちは
頼りにできないもんね。

仁兄ちゃんは
東京の人間になっちゃったし

希望兄ちゃんだって
もう 帰ってこないだろうし…。

2人とも 母さんが
一生懸命 育ててきたのに

つまんないね 何だか…。
母さんはね みんなが

独り歩きできるようになったら
それでいいの。

禎だってね 大学 出たら 自分の
思うとおり 生きていいんだよ。

初ちゃんだって そうだよ。
いいお相手が見つかったら

結婚して 幸せになってほしい。
私は 結婚なんて…。

母さんね いつでも 一人で
生きていけるだけの覚悟は

できてるんだから。

そのためにも
働けるうちは うんと働いて

みんなに 負担をかけないように
お店をやっていきたいの。

母さんには 父さんと雄が
ついててくれるから…。

それでいいのよ。

明くる日から おしん
魚や野菜の仕入れを増やすと

店が終わってから 町工場の近くに
オート三輪を止めて

仕事帰りの人たちを相手に
魚や野菜を売る事になった。

♬~

(禎)お帰りなさい!
あ~ ただいま!

遅かったのね。
うん。

残業してる お客様がね
工場から引けるの 待ってたら

こんな時間になっちゃうんだよ。

母さん 朝早くから
魚の仕入れ 行って

日中は オート三輪で走り回って
夕方は夕方で 店が忙しいし

その上
夜 9時 10時まで働いて…。

そんな むちゃしてたら
今に 体 壊すから!

初ちゃんだって
参っちゃうんじゃない?

何だい このくらい。
昔 奉公してたり

九州で苦労した時の事 考えたら
遊んでるようなもんだよ。

つらいなんて言ったら
罰が当たるよ。

はい 麦茶。
はい ありがとう。

(初子)はい。
(禎)ありがとう。

あ~ おいしい!

戦争が終わって
新しい時代が来て

誰でも どんな事でも
できるようになったんだよ。

仁や希望も
自分の足で歩くようになった。

母さん
やっと 自由になれたんだ。

これから やっと
母さんの思うとおりの商売が

できるようになったんだ。
母さんの力で どこまでやれるか

自分の力 試してみたいんだよ。
うん。

ねえ 夜食にと思って
おそうめん ゆでといたけど…。

へえ~ 随分 気が利くじゃない!

仁兄ちゃんから 手紙が来て
「勉強も大事だろうけど

母さんも初ちゃんも
商売で忙しいんだから

せめて うちの事ぐらいは
お前がやれ」って。

うちを出てっても やっぱり
母さんや店の事が心配なんだね

仁兄ちゃん。
禎だけにかい? よこしたの。

ちゃんと来てますよ
母さんにも 初ちゃんにも!

へえ~! どれどれ。

はい。 はい。
(初子)はい! へえ~!

(初子)よいしょ。

下宿にも やっと慣れて
明日 百貨店 挨拶 行くんだって。

予科練の時の戦友が とっても
よくしてくれるって書いてあった。

ハハハ! 生まれて初めて
三つぞろいの背広と

ワイシャツとネクタイ 買ったんだって。
そういえば 今まで

背広なんて着る事なかったよね。
ジャンパーばっかりで。

百貨店は 背広 着ていかなきゃ
ならないんですって。

背広に合わせて ネクタイ選ぶのが
一番 難しくて 随分 迷ったって。

百貨店なんか勤めるから

そういうもの
着なくちゃいけないのよ。

でも そういう きちんとした
職場で働きたかったんだって。

仁ちゃん きっと
背広 似合うでしょうね。

背が高くて キリッとしてるから。

魚屋や八百屋じゃ 背広 着て 店へ
出ていく訳にいかないんだから

若い者 つまんないだろうね。

うち 出てったっていっても
母さんや私たちの事 忘れないで

こうして 一人一人に
手紙 書いてくれて…。

仁ちゃんって
やっぱり 優しいんですね。

(禎)ねえ おそうめん 食べる?
(初子)うん!

(事務員)田倉さんですか?
(仁)はい!

(事務員)お入り下さい。
はい!

(課長)あ~ どうぞ。

え~ 店長の紹介だそうですね。
はい!

店長とは どういう?
ご子息と 予科練で ご一緒でした。

仕事は そうだな…

配送の方 やってもらおうか。
はっ?

(課長)うちでも ようやくね
お買い上げ頂いた品を

指定の所へお届けする配送制度に
力を入れる事になったんだがね

まだまだ 手薄でね。
これは これから

大事な仕事になってくるんだから
頑張ってくれたまえよ。

はい!

(皆川)そうか 配送か…。
君のおかげで 就職できたんだ。

ぜいたく言えた筋合いじゃ
ないんだが

もう少し やりがいのある仕事
させてほしかったよ。

配送係ってのは 各売り場から
送られてきた品物を

チェックして送り出す。
それだけの仕事だよ。

子どもだって できるよ。

俺 こうして 無理して
背広まで買ったんだけど

作業着じゃなきゃ 働けないしな。
全くの肉体労働だよ。

これじゃ 百貨店 勤める意味が
ありゃしない。

俺が わざわざ
東京 出てきたのはな

百貨店という時代の先端を行く
企業の第一線で

働きたかったからだよ!

すまん…。 君には いろいろ
面倒 見てもらってんのに

文句ばっかり言って…。 でも
俺には 夢があったもんだから。

まあ 今のポストでも
真面目にやったら

そのうち 日の当たる場所にも
出られるだろう。

田倉… 僕も知らなかったんだが

君は 旧制の中学も
卒業してないんだって?

ああ。 終戦
復学する事を考えたんだが

君も知ってるとおり
うちは 親父が死んだだろ。

おふくろ一人に
働かせる訳にいかないしな。

それに 俺 自分で
商売やるつもりでいたから

別に 学歴なんか どうでもいいと
思ってたんだよ。

ああ 自分で店でもやるんだったら
実力さえあれば それで十分だ。

しかし 就職するとなるとね…。

今は 大学だけは出ておかないと

一流の企業には 就職できない
時代になってしまったんだ。

社員として採用するのが
うちの親父には

精いっぱいの助力だったんだ。
勘弁してくれ。

いや 悪かった。 俺
全然 知らなかったもんだから…。

学歴が そんな重要な条件に
なってるなんて…。

心配かけて悪かったな。

♬~

仁が東京へ出て3か月

おしんの商売は 順調に伸び
おしんは それが楽しくて

ますます
仕事に精を出す毎日であった。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(おしん)さあ これで
今日の注文は 終わりだ。

(初子)タイの かす漬けが
こんなに出るなんて

やっぱり
景気がいいんでしょうか。

タイとか エビとか アワビとかね
高い物の かす漬けは

みんな お歳暮用の注文なんだよ。

あ~ そういえば そろそろ
もう そういう季節だね。

こっちのタイは え~っと…
みそ漬けにするんですよね?

うん そうよ。

あっ ちょっと甘かったかな。

あんまり塩辛いと お酒の肴に
ならないって お客様が…。

おいしい。
いいんじゃないですか?

初ちゃんが そう言うんだったら
大丈夫でしょ。

今日はね
珍しく タイが安かったから

こういう時に
漬け込んどかないとね。

あ~ 身が締まった いいタイだ。

(禎)まだ やってるの?

いい加減にしないと
朝早いんだから…。

今夜中に
やる事やっとかないとね

生の魚は 明日って訳に
いかないんだから。

いいから あんた 早く寝なさいよ。

手伝おうか?
大丈夫。 もうすぐだから。

オート三輪で 日中 走り回って
夕方は 店やって

夜は夜で 工場の周り行って売って
その上 帰ってきて

まだ こんな事やってるんだから。
そんなに忙しい…。

初ちゃん こっちは もう
いいからね ちょっと悪いけど

明日お届けする約束の かす漬けと
みそ漬け 包んどいてくれない?

注文票 そこに置いてあるからね。
はい。

母さん いくら売れるからって
あれもこれも やってたら

初ちゃんも母さんも
いつか 体 壊しちゃうよ。

店なら 店だけにして…。
あんたがね 心配する事ないの。

あんたは うちの事と お勉強を
してくれればいいんだから。

母さん 明日の分の みそ漬けは
これで いいんですか?

あ~ それでいいわ。
かす漬けは 下の方よ。

母さん。 母さんは よくったって
初ちゃんは たまんないわよ

こんな こき使われちゃって。
ねえ!

忙しいって ありがたい事なのよ。
買って下さるお客様があるから

こうして みそ漬けとか かす漬け
作るのも 張り合いがあるんだし。

母さん。
うん? 私が奉公に来た時も

母さんと父さん
こしらえてらしたでしょ。

昔ね 魚屋をしてる時に
ほかに 仕出しとか

いろいろな加工品を
父さんと2人で考えて…。

こんな事してると 何だか
昔に帰ったような気がする。

一日も早く せめて あのころの
お店ぐらいには しなきゃ!

もう一息だよ。 どんどん
売り上げは 上がってるしね。

あっ ねえ 初ちゃん
ここんとこ 急に寒くなって

お店でも 鍋物の材料が
随分 出てるでしょ? ええ。

工場の方へ回った時ね

お客様が うちに帰って
すぐ お鍋ができるように

魚と野菜と組み合わせて
売ったら どうかしら?

魚は 切り身にして

野菜は
ネギとか春菊とか白菜とかを

すぐ使えるように
こう 少しずつ組み合わせて…。

あっ ほかにもね
焼き豆腐とか 糸ゴンニャクも一緒に。

そりゃ喜ばれるかもしれませんね。
寒いと 鍋物が一番だし

材料さえ そろってれば
何よりも 簡単だし!

じゃあ 明日から
早速 やってみようか! ええ!

そんな面倒くさい事して
まだ 仕事 増やすつもりなの?

お客様の立場になって 少しでも
便利なように考えなきゃ。

ただね
品物 売ってるだけだったら

誰だって できるんだよ。
これからは

どんどん 同業者も増えて
競争も激しくなるんだから

ほかの人と同じような事
やってたんじゃ

とっても 生き残れやしないよ。


はあ…。 駄目だ。

(競りの声)

よいしょ!

(ひさ)おしんちゃん!

相変わらず あんた 精が出るな。
おはようございます!

あのな うちに
珍しい人が来てはるんや!

忙しいやろけどな
たまには あんた うち寄って

お茶でも飲んでいきない。

(ひさ)今日はな お舅さんの
古希のお祝いがあるんやそうな。

ほんで あんた わざわざな
お祝い用の魚を買いに見えたんや。

ご注文の品
そろえておきましたで。

まあ タイもな
飛び切り 大きいのがあって…。

(浩太)どうも お世話かけました。

けど 浩太さん あんた 偉いな~
よう 気が付いて。

いや ふだん 親孝行らしい事
してませんから

せめて こんな時に。

ご円満なんですね。
おめでとうございます。

浩太さん
今はな 並木食料品店の

押しも押されもせん
跡取りやよってんな。

店もな あんた 立派に
新しゅう 建て直しはったんやで。

おしんさんのお店も
順調だそうで…。

浩太さんや お内儀さんのお力添え
頂いたおかげで なんとか…。

あ~ 仁君
東京へ就職なさったとか…。

一人じゃ大変でしょ?
いいえ。

子どもは
いつか 独り立ちするもんです。

田倉が亡くなって
妻の役目は 終わりました。

子育ても 一段落しました。

やっと 世の中も
自由競争の時代が来て

私も 自分の商売ができる時が
来たんです。

これからは 思い切って
私も 好きな事をやってみたい。

おしんちゃん あんた またな
いろんな事 考え出すんやから。

それが また よう当たるんや!

このごろはな
かす漬け みそ漬けな

安うて おいしいし
日もちがするって

えらい評判でな
よう出とるって言うやないか。

昔 売れ残った魚を
みそに漬けて

結構 お客様に喜ばれたの
思い出して…。

近頃は わざわざ ご注文頂いて
漬け込むようにまでなりました。

私は 30年以上
おしんさん 見てきた。

随分 つらい思いもしただろうに
決して 弱音を吐かなかった。

それが やっと 実を結ぶ時が
来たような気がします。

おしんさんが言ったとおり

やっと おしんさんの時代に
なったんだ。

私に できる事があれば
どんな事でも手伝います。

おしんさんが果たせなかった夢を
これからの人生に懸けて下さい。

どこまでやれるか

思いっきり 自分の可能性に
挑戦してみて下さい。

♬~

浩太の言葉が
おしんの胸を熱くしていた。

一生を働き通して

1杯の白い米の飯も食べられずに
死んだ 祖母。

おしんは 「ばんちゃんのような

惨めな生き方だけはしたくない」と
その時 心に決めた。

なぜか その幼い日の事が
思い出されてならなかった。

あの時の夢は まだ おしんには
遠いものであった。

…が これからでも遅くはない。

おしんは 新しい思いに
心を高ぶらせながら

オート三輪を走らせていた。

よかった! 帰りが遅いから 何か
あったんじゃないかと思って

心配しました!
ごめん ごめん。

つい 浜のお内儀さんのとこで
しゃべり込んじゃって!

これからの商売の事なんかも
いろいろとね。

さあ 早いとこ 朝御飯 済ませて
出かけないとね。 今日辺りから

そろそろ お正月用の魚とか野菜の
注文 受けとかないと。

仕入れの方も
早いとこ 品物 押さえて…。

おかしいですね。
私が出した手紙も

宛名人不明で返ってきたんですよ。
下宿 変わったのかしら 仁ちゃん。

「転居先不明」って
付箋が ついてるね。

引っ越したら 引っ越したって
知らせてくれるでしょ

仁ちゃんだって…。

私 ちょっと 電話かけてくる。

一体 何があったんだろうね。
10日も前に辞めてるんだよ。

百貨店をですか? それもね
どの売り場にいたのかも

なかなか 分からなくて
調べてもらったら

配送ってとこに
いた事は いたらしいんだけど

退職願 出して
それっきり 出てこないんだって。

どうして?
母さんも 理由 聞いたんだけど

「本人の意思だ」って
言うだけで…。

仁ちゃん あんなに喜んで
東京 行ったんですよ。

クビにでもなったって言うんなら
ともかく 自分から辞めるなんて。

辞めなきゃならないような事が
あったんだろうけどね

電話でも 詳しい事 聞けないし

あちらさんは ただ
「本人の意思だ」って言うだけで。

仁ちゃんの気性は 母さんが
一番 よく ご存じのはずでしょ?

思い込んだら 少々の事じゃ
後へは引かないし

何でも やり遂げないと
気が済まない

一途なところがあって…。

簡単に辞めるなんて
とても信じられない。

母さん 東京へ行ってらしたら?
きっと 何か事情があって…。

行って どうするのよ?
どこにいるか分からないのに…。

仁ちゃんの世話をして下さった

予科練時代の友達っていう方なら
きっと 何か…。

仁だって
もう 子どもじゃないんだ。

辞めるには 辞めるだけの理由が
あったんだろ。

私たちが心配したって
どうなるもんでもないし…。

そのうち 何とか言ってくるよ。

さあ 早いとこ
御飯 食べてしまわないと。

でも 百貨店 辞めて
10日も たつって言うんでしょ?

仕事が無くなって
何してるんでしょうね 仁ちゃん。

東京だったら 何やったって
食べていけるんじゃないの?

食べていけると思うから
百貨店だって辞めたんだろうし

食べていけないような
かい性なしだったら

どんな仕事やったって
一人前になりゃしないよ。

「自分が生きる道は
自分で選ぶんだ」って

大口たたいて 出ていったんだ。

仁だって 根性があったら
なんとか やっていくだろ。

お正月には
帰ってくるつもりなんですよね。

きっと 帰ってきますよ。

おしんが 今度の店を始めて半年

目まぐるしかった年も暮れて
昭和26年の新春が訪れた。

…が 仁の消息は
ようとして 分からなかった。

じゃあ 希望ちゃんの所へも
何にも?
(希望)うん。

僕は 母さんから
「仁が 東京へ行った」って

手紙もらっただけで
仁からは 全然。

東京で
元気に働いてるとばっかり…。

ほら また焼けたよ。
希望 どんどん おあがり。

うん。 正月には
仁も帰ってくるだろうから

ここで会えると
楽しみにしてたんだ。

ホントに帰ってこないつもりなのかな
仁兄ちゃん。

しかし 仁らしくないな。

母さんが心配する事 分かってて
何の連絡もしてこないなんて…。

体でも
壊してるんじゃないかしら…。

じゃなきゃ
手紙ぐらい 書いてくれても…。

いいんだよ 仁の事は。
東京へ行く時に もう あの子は

二度と帰ってこない子だと思って
諦めて 送り出したんだから。

魚屋も八百屋もやる気がない者が
ここへ帰ってきたって

しょうがないじゃないか。

どっかで 好きな事やってれば
それで…。

今日は お元日だもの

明日か あさって
ひょっこり 帰ってくるかも。

ねえ お兄ちゃん
後で 坊主めくりしようよ。

(戸をたたく音)

仁兄ちゃんだ!
やっぱり 帰ってきた!

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

1つ。
2つ。 3つ…。

おしんが今度の店を出して半年
昭和26年の新春を迎えた。

窯元へ住み込みで
陶工の修業に行っている希望も

正月休みで帰ってきた。

…が
東京の百貨店へ就職した仁は

自分から退職して
行方が分からなくなったまま

正月にも
伊勢へは 帰ってこなかった。

そんな元日の午後
田倉へ 1人の客があった。

戦死した雄の戦友 川村で
4年ぶりの訪問であった。

(おしん)よく お忘れにならず
参ってやって下さいました。

雄も懐かしがってるでしょう。

(川村)一度 お線香あげに来たいと
思いながら

なかなか 機会がなくて…。
雄も 無事に帰ってきてましたら

川村さんと同じ
28になってるんですね。

皮肉なもんですね。

誰も待ってくれる者もいない
私のような者が生き延び

お母さんや初子さんのような方が
待っておられる田倉が

帰ってこられなかったなんて…。
川村さん ご両親は?

とうとう 満州から
引き揚げてはきませんでした

両親も妹たちも。

川村さんが復員してらして 雄の事
お話しに来て下さいました時に

ご両親が 満州から引き揚げて
くるかもしれないって

急いで ご親戚へ
お帰りになりましたでしょ。

あれから
お便りがないもんですから

きっと ご家族おそろいで
お幸せに お暮らしだとばっかり。

ただ
雄が お世話になったお礼を

ゆっくり 申し上げたいと思っても
ご連絡先が分からなくて…。

申し訳ありません。
私も 気になりながら

お手紙を差し上げられるような
状態じゃなかったものですから。

いえ やっと こちらへ
伺えるようになりましたら

今度は こちらのご住所が
分からなくて…。

前いらした所へ伺ったら

「とっくに引っ越した」って
言われたし…。

私どもも
いろいろ ありましてね…。

やはり いろいろ
御苦労なさったんでしょう。

でも 引っ越し先
教えてもらえたので

神山さんを お訪ねしましたら
こちらで お店を出されたって…。

本当に ほっとしました。
あれから 4年も たちますのに

また こうして
お目にかかれるなんて…。

≪(初子)母さん。

(初子)お酒の支度が…。
はい。

何にもありませんけど
あちらで…。

初子さんは まだ お独りですか?

重宝に使ってしまって…。
どうぞ。

どうぞ お足を楽になさって。
じゃあ 失礼して…。

(希望)川村さん どうぞ。
あっ すいません。

(初子)どうぞ。

はあ~! こんな お節料理で

元日を祝えたなんてのは
何年ぶりかな。

戦時中も 家族とは離れていたし
食料は ないし

終戦後も ずっと 1人暮らしで

正月らしい正月なんて
迎えた事ありませんでした。

家庭っていうのは
やっぱり いいもんですね!

(希望)何だ
川村さん まだ 独身ですか?

とっても 嫁さんもらう
余裕なんか…。

とにかく 食べていくのが
精いっぱいだったし

誰も頼る人なんか
いないんですから…。

ご親戚の方は?

誰でも 自分の家族を守る事の方が
先でしょ。

じゃあ 独りぼっちで?

かえって
その方が 気が楽でしたよ。

何したって
怒る人も悲しむ人もいない。

危ない橋も 平気で渡りました。

1人なら 死のうと生きようと
勝手ですからね。

人間 捨て身になったら
怖いもんなんて ありゃしない。

ペニシリンの闇も やりました。
メチルアルコールも売りました。

金になるものなら
何でも動かして…。

良心なんていうのは
クソ食らえですよ。

その時 もうけた金で
株を始めたんです。

たとえ 株で損をしたって
ろくでもない事で もうけた

あぶく銭です。
丸裸になったところで

もともとだっていうんで
大勝負したのが当たって…。

なんとか 東京に 家も建てました。

やっと こちらへ伺える
ゆとりも出来たんです。

無一文で復員なすって
よく そこまで…。

それじゃ もう 満州から
ご両親や妹さんが

引き揚げていらしても
もう 大丈夫。

きっと お喜びになるでしょうね。

いや 家族の事は
もう 諦めています。

終戦から 5年半も
たっているんですから

無事だったら もう
とっくに帰ってきてるはずです。

でも 満州の方には まだまだ
たくさん残っていらっしゃるとか。

いいんです。 もう 一人で
生きていく覚悟もできました。


今は 株のほかに
小さな貿易の会社もやっています。

もう 「濡れ手で粟」の闇の時代は
終わりました。

これからは 地道な商売をしないと
生き残れませんからね。

偉いわ 川村さん。
まだ お若いのに。

若いから
むちゃな事もできたんです。

フィリピンの戦場で
あんな地獄を見てきたからこそ

どんな事でもできたんです。
ただ 田倉が一緒に

生きて帰ってこられたらと
それだけが悔しくて…。

雄の事は もう…。

すいません。 今頃 伺って
かえって 雄君の事を また…。

いいえ。
川村さんに お会いしてると

雄が帰ってきてくれたようで…。

ただ 雄も いろいろと
心残りな事があったでしょう。

雄の分まで
川村さんが生きて下されば

雄も きっと慰められるでしょう。

お母さん 私は 雄君の代わりに
生き残ったんです。

私でできる事なら
何でも させて頂きます。

雄君だと思って 何でも
遠慮なく おっしゃって下さい!

ただ… 今日 伺いましたのは

私にも 折り入って
お願いしたい事がありまして…。

初子さんを 私に頂きたいんです!

もちろん 今すぐ お返事を
頂こうとは思っておりません!

今日は ただ 私の気持ちを
お話ししておきたいと思いまして。

田倉と初子さん
結婚の約束をしておられた事は

もちろん 承知しております。

陸軍予備士官学校でも
戦地ででも

田倉は よく 初子さんの事を
話しておりました。

自分は 学生時代に
恋人らしい女性も いないまま

学徒出陣しましたから
田倉の話が とっても新鮮で

また 羨ましく
聞いたものでした。

田倉が話してくれる初子さん
それは すばらしい女性で…。

田倉のやつ 自分で 理想の女性を
作り上げてるんだなって

話半分に聞いて…。

そんな いい女が
この世にいるもんかって

バカにしていたんです。

でも… 何度も 何度も
聞かされているうちに

私にも 初子さん
理想の女性のように思えてきて…。

それは 戦場という

特殊な環境の中だったからかも
しれません。

でも 会った事もない初子さん
思う事で

随分 心が和んだものでした。

バカバカしいと
お笑いになるかもしれません。

しかし いつの間にか

私にも 初子さんが忘れられない
女性になっていて…。

もちろん
単なる夢にすぎません。

でも 復員して
お母さんを お訪ねして

初めて 初子さんに お会い…。
やめて下さい!

川村さん
いい加減になさって下さい!

いつまで そんな つまらない事を。
初子…。

母さんも 母さんです!
黙って こんな人の言う事を…。

初子さんには
くだらない話なんですか?

私は あなたの事は
何にも知りません。

見ず知らずの人から そんな事
言われるなんて 不愉快です!

だから 私の事も 私の気持ちも
知って頂きたくて

今日 伺ったんです。 これから
ゆっくり考えて頂けたらと思って。

私は どなたとも
結婚するつもりは ありません!

田倉は
自分の命が危ないと分かった時

私に 「初子の事を頼む」って。

「もし 生きて
日本へ帰れる事があったら

初子を幸せにしてやってくれ」って
本当に そう言ったんです 私に。

せっかくの ご好意ですけど
お断りさせて頂きます。

お母さん 私は諦めません。
私が 今まで 遮二無二なって

金もうけしてきたのも
いつか 初子さん

結婚を申し込めるようになりたい
一念だったからです!

時間をかけて 初子さんに私の事を
分かってもらえるよう努力します。

これからも できるだけ
こちらへ伺わせて頂きます!

どうぞ よろしくお願いします!

(初子)お帰りなさい!
御苦労さまでした。

今日はね
イカの いいのが安かったから

1樽 塩辛に漬け込んどこうと
思って。 オート三輪で回る前に

やってしまわないと
新しいうちが勝負だからね。

禎にも 手伝うように
言ってちょうだい。
はい!

川村さん…。
魚屋って商売も 大変ですね。

まあ…。

正月三が日 久しぶりに 海辺の
旅館で 静養させてもらいました。

東京へ
お帰りじゃなかったんですか?

この辺の事も
よく調べてみたくて…。

ちょうど 駅前に
売りに出てる地所がありました。

今でこそ この町の繁華街は
この町の中央部にあり

商売は
そこへ集中してるようですが

これからは
何てったって 駅前ですよ。

お母さん
この辺は 商売に向いてませんね。

どう見たって 周りに
大きな店が出来る様子もない。

これじゃ わざわざ 魚を買いに
来る客だけで 終わりです。

伸びようがない! 店っていうのは
持ちつ持たれつで

近所に
大きな店や いい店が出来ると

そこへ来た客が ついでに
魚を買っていってくれる。

それで いい魚だと
その店の評判や信用がついて

客層が どんどん広がっていく。

それに
この辺は 足の便も よくない。

そのくらい 分かってますよ。
でも この店を借りるのが

もう 精いっぱいで
地の利のいいとこなんて

とっても 手が届きません。
駅前の地所 買う事にしました。

1年もたったら 相当 値が
上がるでしょう。 買い物でした。

川村さん そんな商売も
なさってるんですか?

いや もし お母さんが
駅前に お店を出すおつもりが

おありだったら
お貸ししてもいいと思って…。

同じ商売なさるんなら
ここより 駅前の方がいいでしょ。

でも 今 買っておかないと
すぐ売れてしまいますからね。

いえ もう この辺で十分です。
どうせ

女の細腕一本でやる商売ですから
この辺が ちょうど…。

じゃあ しばらく
寝かせておきましょう。

ほっておいたら その間に
何倍にもなってくれます。

お母さん 初子さん また来ます。

もし 駅前の地所が
お入り用でしたら

いつでも お申しつけ下さい。
お貸しします。 じゃあ。

♬~

本当に 駅前に
地所 買ったのかね?

どうして そんなに
お金があるんでしょうね?

何だか 気味悪いですね。
若いのに 腕一本で

あんな大きな商売ができる
世の中になったんだね。

これも 戦争に負けて
自由だの 民主主義だのって

言える時代になった
おかげなのかね。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

東京の百貨店を辞めた
仁の消息は

昭和26年の春になっても
分からなかった。

商売の方は おしんと初子の努力で
少しずつ伸びてはいたが

仁の事が
田倉家に 暗い影を落としていた。

(おしん)ねえ 初ちゃん
オート三輪の行商 やめて

店一本の商売にしたいんだけど

店だけじゃ
売り上げは 少ないし…。

川村さんが言うように
やっぱり この場所は

お客の増えようがないんだよね。
(初子)いいじゃありませんか。

うちは もともと
行商から始めたんですもの

そっちの方が
お得意様も多いし…。

でも そんな事 言ってたら
いつまでたっても 初ちゃんに

楽させてあげられないじゃ
ないの。

あんまり こき使ってたら
嫁に行きそびれちまうからね。

魚屋も八百屋も 忙しい割に
もうけの薄い商売だからね

仁が見切りをつけて出ていくの
無理ないよ。

でもね 母さん一人だったら
これで たくさんなんだよ。

禎を大学さえ出してしまえば
あとは 母さん一人が

食べていけるだけの商いがあれば
それでいいんだから。

母さん。 母さんは もっと大きな
夢があったんじゃないですか?

こんな借家じゃなくって

今に 立派な自分の店を
持ってみせるって。

そりゃ…。
私たち 戦時中も終戦後も

手も足も出ない暮らしで
惨めだった。

でも 今 やっと 自由になって

どんな事でも
できるようになったんですよ。

思う存分 好きな商売をして

今度こそ 自分の商売というものを
やり遂げてみせるって 母さん。

母さんも そう思った事あった。

でもね 希望は 別の世界の人間に
なってしまったし

仁は仁で 魚屋も八百屋も
やる気がありゃしないんだから。

どんなに 母さんが頑張って
店を大きくしたって

どうしようもないじゃないの。
それよりね

母さん一人が生きていけるだけの
商い やってる方が

初ちゃんだって
お嫁に出してあげられるし…。

母さん…。 そう思ったらね
気が楽になったのよ。

まっ いずれ 折を見て
行商は やめるようにするわ。

(戸が開く音)

(川村)また来ました。

母さんは
浜へ 仕入れに行ってます。

初子さんの顔を見に来たんです。

こちらの方で 仕事があって…。
何か ご用でしょうか?

川村さん 私の事は もう…。

私は お嫁に行けるような女じゃ
ないんです。

終戦後 このうちを出て
東京の米軍キャンプのある町で

アメリカ兵相手に 商売してたんです。

娼婦です。

二度と
もう いらっしゃらないで下さい。

初子さん そんな事は
何の傷にもなりゃしない。

しかも 過ぎ去ってしまった事じゃ
ないですか。

昔の事が傷になるんなら
僕だって 大手を振って

こんなとこ 歩いちゃいられない。

終戦の あの混乱の中で
まともに生きられた方が

おかしいんだ! 初子さんだって
そうしなきゃならない

理由があったんでしょ? みんな
ギリギリのところで生きてきた!

体だけじゃない 魂まで売って!
それが 僕らの戦後だったんだ!

誰も悪いんじゃない!
戦争なんてものに巡り合った

不運な
世代だったってだけの事です!

戦場で餓死した田倉は もちろん
生き残った者だって…。

仁君だって 戦争の後遺症を
引きずってるんだ。

生き残った者の方が
もっともっと深い傷を受けている。

初子さん もう よそう
そんな事で クヨクヨするのは。

戦争の尻尾なんて 早いとこ
切り落としてしまうんだ!

今日は これから
名古屋で 仕事があって

しばらく 名古屋に滞在します。
時々 のぞきに来ます。

それくらい いいでしょ?

そう。 話してしまったの…。

そしたら 諦めてくれるだろうと
思って…。

でも 川村さんったら
ケロッとして…。

「僕にだって 傷はある」って。

「戦争に巡り合った世代の
不運なんだ」って。

苦労したんだね 川村さんも。

でも そういう人なら
お互いに いたわり合って

あったかい夫婦に
なれるかもしれないよ。

よかったじゃない 話して…。

母さんの事なら ホントに
心配しなくていいんだから。

初子の思うとおりに。

♬~

今日は ちょっと遅くなったから

初ちゃん 急がないと
間に合わないよ。
はい!

よいしょ!

よいしょ!

あんた 田倉のうちの人?

仁さんのお母さんに
会いたいんだけど…。

私が 仁の母親ですけど。
あんた 仁 知ってるの?

知ってるも 知らないも

あの人には とんでもない目に
遭わされてるのよ。

出ていけって言っても
出ていきゃしないし

さっさと引き取ってもらいたいわ。
仁 どこにいるの?

私のアパート。 名古屋よ。
一緒に来てくれる?

ブローカーだとか何だとか
大きな事ばっかり言って

結局 女のヒモになって
のらりくらりしてるんだから。

あっ 3万ほど貸してあるから
それも返してもらいたいわ。

仁が何をしたか知らないけど

それは
あんたと仁との問題でしょ?

私には 関係ないんだから。
そんなバカな!

あんた 母親なんだろ? 仁の。
何を言ったって 無駄だよ。

私は
仁を迎えに行くつもりはないし

ここへ帰ってきてほしいとも
思ってないんだから。

あんた 気に入らないんだったら
煮て食おうと 焼いて食おうと

あんたの勝手だよ!
好きなようにしたらいいだろ!

あんた!
ちょっと!

仁ちゃん ホントに あんたの所に?
ああ…。

♬~

仁ちゃん。

あの人 お店 行ったわ。

ひげ そりなさいよ。
仁ちゃんじゃないみたい。

さあ 早く支度して。
一緒に帰ろう。

(仁)あの店で また 魚 売れって
言うのかよ?

泥だらけになって
野菜 売れって言うのかよ?

そのほかに 何ができる?

半年も うちを出て
ほかに 何かできた?

世の中 そんなに甘くない
という事が分かったら

うちを出たのも
無駄じゃなかったじゃない。

商売っていうのは

1匹の魚 1本の大根を
売るところから始めなきゃ。

1匹の魚を
明日は 2匹 売る事を考えて

次は3匹 次は4匹 次は5匹。

少しずつでも
売り上げが伸びていけば

いつか
大きな商いになっていくの。

いっぺんに 階段を上がろうと
思わないで

1段ずつ ゆっくり…。

それが
商売の面白さじゃないかしら?

私と一緒に帰るのが嫌だったら
1人で帰ってきて。

ねっ。 帰ってくるのよ。
帰って もう一度 やり直そう!

(禎)いつまで
初ちゃん 待ってるの?

お夕飯も食べないで…。

一体 どこ行っちゃったのかな?
初ちゃん。

もう 私 寝るからね。

≪(戸の開閉音)

ただいま 帰りました。
遅くなりまして…。

お夕飯 待ってたんだよ。
あんたも おなか すいただろ。

仁ちゃん… 元気でした。

やっぱり 帰るつもりは
なかったんだね。

無理やりに連れて帰る事は
できます。

けど それじゃ 仁ちゃんの
気持ちを無視する事になるし

母さんだって 仁ちゃんだって
わだかまりが残るでしょ?

それじゃ
何にもならないと思って…。

仁ちゃんの意思で
帰ってきてほしかったんです。

もし 帰ってこなかったら
その時は諦めましょ 母さん。

初ちゃん 出かけるよ。
はい!

戸締まり いいね?
はい!

母さん! 母さん ちょっと!

何だい?
ほら!

仁ちゃん 自分の気持ちで
帰ってきたんですよ。

母さん 俺が運転していくよ。
そのつもりで帰ってきたんだ。

初ちゃん 留守番してて。
それから これ 頼む。

母さん!
(仁)行くよ 母さん。

しっかり つかまってろよ!

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(禎)あれ? 初ちゃん いたの?
(初子)お帰りなさい!

どうしたの? 今日は 休み?
いいえ。

じゃあ 母さん一人で行ったの?
仁ちゃんと一緒です。

えっ?
今夜は 久しぶりに

仁ちゃんの好きな ちらしずし
こしらえようと思って。

仁兄ちゃん 帰ってきたの?
ええ!

本当に帰ってきたの?
ええ!

(仁)昔から 母さんには

「大学だけは出とけ」って
よく言われた。

終戦後も 「これからは 学歴が
重視される時代だから」って

口が酸っぱくなるほど
説教された。

でも 俺は 実力さえあれば
何でもできる。

そう信じてたんだよ。
予科練へ志願して

仲間の誰よりも早く
特攻隊員になれたって事が

俺の自信になってたんだ。

でも 戦争が終わったら そんな
血の滲むような訓練に耐えて

特攻隊員になれたなんて事は
どこにも 通用しやしない。

せっかく 就職できた百貨店だって
学歴がなきゃ

いつまでたっても やりたい仕事は
一生 させてもらえないんだよ。

配送係っていってね お届け物の
整理をする雑役が 関の山だよ。

俺と同い年ぐらいの連中が
大学 出てるっていうだけで

背広 着て でっかい顔して
第一線で働いてるっていうのに!

それで 俺は 「一匹おおかみなら
学歴なんか要らない。

自分の腕一つで 何にでもなる」。
そう思って

バーで知り合ったお客とね
ブローカーみたいな仕事 始めたんだよ。

これが うまくいってる時は
結構 もうかりもしたんだよ。

でも 安いと思って買ったら
盗品だったり

詐欺に引っ掛かったりしてね。
なかなか うまくいかなくて…。

(おしん)あんた 食い詰めて
しかたなく 帰ってきたのかい?

そう思われても しかたないな。

でもね 俺は いやいや
帰ってきたんじゃないんだよ。

やっと 地道に働く事が
どんなに 大事な事かって事が

分かったから。

母さん。 俺 もう一度
一から やり直したいんだよ。

やり直して 学歴なんかなくても
立派に生きていけるんだって事

ほかの誰でもない
俺自身 納得したいんだよ。

それでなきゃ 俺 学歴のない事を
一生 後悔して

暮らさなきゃならないよ!

今更 おめおめ帰ってきて
意気地がないって言われても

俺は 何にも言えないよ。

でもね
俺は この店を足掛かりにして

もう一度
自分自身を試してみたいんだよ。

学歴なんかなくても

どれだけの事ができるのか
それをね。

だけどね 仁 この店なら
母さんと初ちゃんで十分だよ。

あんたが手伝ってくれても
これ以上の売り上げが

増えるとは思わない。
それだけの店だって事は

あんただって 知ってて
出ていったんだろ?

だけど もし あんたが ここで
やり直すつもりだったら

今よりも 少しでも売り上げが
上がる事を考えてくれなきゃ。

でなきゃ あんたが帰ってきた
意味がないじゃないか。

それは 分かってるだろうね。

学歴のないのが
そんなに悔しかったら

そのくらいは やってみなきゃ。

ああ。 金もうけしろって
言うんだったら やってやるよ!

それで 人間の値打ちが決まる
世の中なら

俺は 石に かじりついてでも…。

いらっしゃいませ。

(川村)やあ。

突然 お伺い致しまして…。
びっくりしました。

わざわざ 初子さん
こんな所まで来て下さるなんて。

どうしても お願いしたい事が
ありまして…。

まあ 掛けましょう。

一体 何ですか?
私で お役に立つような事でも?

この前 私たちの町の駅前に

地所 お買いになったって。
ええ。

そこを
貸しては頂けないでしょうか?

仁さんが帰ってみえて
今の店では 仁さんが

どんなに やる気になったところで
たかが知れてます。

でも もし 駅前なら
お客さんの数も違いますし…。

もちろん 借地料も
私たちの手に届くかどうか…。

ただ 仁さんさえ 商売に
本腰を入れてくれるんなら

私は いつでも
田倉のうちを出られます。

私のような者でも
もらって頂けるんでしたら…。

あの土地は 田倉のお母さんに
差し上げましょう。

そのつもりで買ったんです。

私は 雄君の代わりに生き残った。

雄君の代わりに
何かしてさしあげたかった。

ですから 喜んで差し上げます。

ただ この事と 初子さんの事とは
全く別の問題です。

私は 人にきれい事を言えるような
生き方をしてるとは思わない。

でも 金の力で 初子さん
自分のものにしようなんて…

そういう男に思われているんなら
残念です。

いいえ。 私 そんなつもりで…。

初子さんは 今でも
雄君を やっぱり愛しているんだ。

だから 田倉の家のために

そこまで 捨て身にも
なれるんでしょう。 川村さん…。

とにかく 田倉のお母さんに
お目にかかって

あの土地の譲渡の手続きを
しておきましょう。

これで 私の気持ちも済みます。

5年の間 田倉を死なせて
生き残った事が

どれほど つらかったか…。

やっと 少しでも
罪滅ぼしができます。

これに 署名捺印して頂ければ

登記その他の手続き一切は
私がしておきます。

私には 何が何だか さっぱり…。

川村さんに 地所を頂く理由が
ありませんし…。

これは
生き残った者の務めなんです。

雄君が生き残って
帰ってこられたら

きっと これくらいの事は
できたはずです。

それを 私が代わりに。
でも…。

雄君の形見だと思って。

そんなに
おっしゃって頂くんでしたら…。

でも タダで
頂く訳にはまいりません。

5年かかるか 10年かかるか
分かりませんが

必ず お返しするという条件で…。

お母さんが そうしたいと
おっしゃるんなら

どうぞ お気の済むように…。

とにかく
お母さんの名義にしておきます。

お役に立って 本当に よかった。

私には 両親も兄弟もいません。

復員した時の惨めさが
骨身にしみて

ただ 遮二無二
金もうけをしてきました。

でも いくら 金や物があっても
誰も喜ばせる者がいないんです。

でも お母さんに喜んで頂けて
やっと 金もうけに

命を懸けてきたかいが
ありました。

私のように 金しか信じられない
はぐれ者にとっては

何よりも 慰めになります。

♬~

どうも 遅くまで お邪魔しました。

初子さん。 あなたの胸から
雄君の面影が消える時なんて

来ないかもしれないが
私は 気長に待ってます。

じゃあ。

♬~

(配達員)田倉さん 書留ですよ。
(初子)はい!

はい。

はい。

はい。
はい 御苦労さまです。

≪(初子)母さん。

川村さんから 書留です。 はい。

初ちゃん 新聞 見た?
いいえ。 何か?

川村さんが殺されたなんて

何かの間違いじゃないんですか?

写真も 川村さんだよ…。

(仁)金貸し
やってたんだそうだよ。

それも
情け容赦ない取り立てで…。

でも それが もとで

金を貸してやった男に
殺されるなんてね…。

せっかく 生きて帰ってきて…

ご両親も ご兄弟も
満州から引き揚げてこないし

親戚には 冷たくされて…。
その悔しさが

川村さんを高利貸しなんかに
してしまったんだろうね…。

戦争さえなかったら
平穏無事に暮らしてただろうに。

やっぱり 戦争が 川村さんを

あんなふうに
してしまったんだよ。

かわいそうに…。

雄と同じに
戦争が 川村さんを殺したんだ。

戦死なんだよ やっぱり…。

母さん。 これ 川村さんから…。

川村が殺されたと報じられた朝

川村から 駅前の土地 200坪余りを
おしんに譲渡した旨と

おしんの名義になった
登記の写しが

送られてきたのである。
川村にとっては

雄の死をみとった戦場から
生き残って帰ってきた

負い目であり
償いであったのだろう。

戦争は 生き残った者へも

過酷な運命を
与えていたのであった。

おしんは 身寄りのない
川村の遺体を引き取ると

雄と同じ墓地へ葬った。

♬~

つらかったでしょうね…。

お金だけしか
信じられないようになるなんて…。

♬~

二度と もう… 戦争は 嫌!

戦争という一つの時代に

青春を生きて 去っていった
2つの命が

おしんには 哀れでならなかった。

…が 川村の残してくれた土地が

やがて おしんの未来を
開く事になったのである。

え~!