500年続く「キリスト教同士の抗争」根深い背景

日本人があまり知らない世界史の"基本"

同じキリスト教徒でありながら、カトリックとプロテスタントが対立する理由とは(写真:ShaunWilkinson/iStock)
多くの日本人が抱く“宗教”への素朴な疑問。中でも「カトリックとプロテスタント、同じキリスト教徒同士なのになぜそんなに対立するの?」にスパっと答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。『あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史』の著者、尾登氏にキリスト教の対立について歴史を流れとともにわかりやすく解説してもらいました。

なぜカトリックとプロテスタントは対立するのか

宗教改革とは、中世末期から起こったキリスト教会改革運動です。1517年、教皇レオ10世が販売した贖宥状(しょくゆうじょう)に対し、ドイツの神学者マルティン・ルターが「95箇条の論題」を発表してローマ教皇を批判。これに賛同する人たちがルター派(プロテスタント)を結成してこれまでどおりローマ教皇を奉じる人々(カトリック)と自分たちを区別し、対決姿勢を強めました。

このカトリックとプロテスタントの対立は、17世紀以降に大規模な宗教戦争につながっていき、近代国家の枠組み自体を変えていくことになります。

キリスト教になじみの薄い日本人には「同じキリスト教徒なのになんでそんなに対立するの?」とあまりピンとこないかもしれません。

その答えは、中世のキリスト教徒にとって信仰は「生きること」そのものを意味したからです。

生活をするうえでのさまざまな慣習、価値観、祝祭日や暦などはすべて宗教によって決まっていました。生活のありとあらゆる事柄が宗教の規範によって成り立っているので、「社会」も宗教間で異なることになります。

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  • といざヤす9fb97ee2a27b
    よくまとまっていて、わかりやすいですね。

    次はイスラム希望です。
    up33
    down7
    2020/1/11 08:16
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    q様

    >どのみちコミュニケーションとしては、現代キリスト教で十分。知識を自分の意見に昇華できない限り、あとは知らずに現地の教会で現地の人に教えてもらえば充分の話。いつまでコミュニケーションから逃げるのか。

    ・・・すみません、q様のおっしゃることを否定しようという訳ではないんです。
    ただ「現地の教会」が、どこの国のどの宗派かによって、地雷を踏む危険性もあります。
    国や宗派によっては「地動説や進化論を認めない」こともあるので・・・


    up5
    down2
    2020/1/11 20:12
  • Galileic4cf9e1db433
    16世紀から80年戦争が続きました。しかし、その以前から、魔女狩り、異端尋問という、カトリックの弾圧で、何万何十万もが犠牲となる悲惨な歴史でした。

    魔女は空をホウキで飛べるのは体重が軽いからと、体重計で取り調べ。異端尋問も魔女狩りも、多くは密告でした。無罪の人間を密告して火あぶりや死刑にして、断罪する役人と密告者が、没収した被告の財産を山分けするという目論見も多かったようです。

    政治的には、プロテスタントを利用してローマ教会の権力と横暴を封じ込めたいという、北西ヨーロッパの君主や領主の狙いがありました。

    何処の国や地域でも相容れないのが宗教のようです。
    up4
    down1
    2020/1/11 13:44
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