10年前、「家族旅行に連れていけないから」という理由で保健所に持ち込まれた生後1年の猫は、保護団体の手によって譲渡先を探されていた。
別の猫に先立たれた悲しみにくれていた私のところに、その猫はよってきた。一目でこの猫と一生を過ごすことを決めた。
妻とはお見合いだった。私の自己紹介には「猫を飼ってます」と書いていた。猫と生活している私の家で何度も何度も会って、私はこの猫と離れられないことも知っていて結婚した・・・はずだった。
嫁は里帰りをして出産、もうすぐ子供は1歳になる。しかし嫁と子供は家に帰ってこなかった。
「猫とは暮らせない」が嫁の結論だった。猫との別離、妻と子との別離。どちらを選んでも、私は家族を失うのだ。
この二つが両天秤になるなんて、猫好き以外には理解しがたいのだろう。
猫との生活はもう10年間。10年間である。10年もの間、私を支えてきてくれた家族。
東日本大震災で真っ暗なかも一緒に過ごした。テポドンが飛んでいくのも一緒に見た。出会いと別れで涙する私をちょいちょいと優しくつついてた。
私が寝込んで苦しそうにしてたら、心配そうに枕もとでじーっといつまでも座っていた。