お正月映画で「スター・ウォーズ」が公開されている。迫力のある戦闘シーンが魅力の一つだが、現実の世界でも今、宇宙空間の軍事利用が注目されている。「邪悪な企て」ではないのか。
新年早々、政府は航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改称する方向と報道された。米国は昨年十二月に宇宙軍を発足させている。中国やロシアも宇宙空間の軍事利用に力を注いでいる。インドは昨年三月、軌道上の衛星を破壊する実験に成功し、「宇宙大国」の仲間入りをしたと発表した。
インドの実験後、米航空宇宙局(NASA)は「実験で四百個もの宇宙ごみが発生し、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士に危険が及びかねない」と非難した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると二〇一七年現在、地球軌道を飛ぶ人工衛星は四千四百基を超えるという。軍事衛星もあるが、衛星利用測位システム(GPS)や気象などの地球観測、通信といった実用衛星である。人工衛星も宇宙ごみとの衝突を避けるためにしばしば、軌道の変更を迫られている。
スター・ウォーズで見るような戦闘が行われれば、大量の宇宙ごみが発生し、宇宙空間の利用が難しくなる。先進国であればあるほど、望まないシナリオである。しかも、米スペースX社は現在、四万二千基もの小型衛星の打ち上げ計画を実行している。通信だけでなく、地球観測や軍事にも利用される。もはや衛星を一基一基、撃ち落とすという発想が時代遅れになっている。
ハリウッド俳優から米大統領になったレーガン氏は、一九八三年にいわゆるスター・ウォーズ計画を発表。米国と旧ソ連は宇宙軍拡を競った。これが九一年のソ連崩壊につながったともされる。米国も財政悪化に苦しんだ。映画を見て思い出すべきは、戦闘シーンではなく、軍拡競争の愚であろう。
国連は五九年に宇宙空間平和利用委員会を設置し、宇宙条約などが締結されている。条約は平和利用が原則だが、通常兵器で非侵略という目的であれば制限がない。
日本でも六九年に「宇宙の平和利用」を衆議院が全会一致で決議している。政府は国連の場などを通じて、宇宙条約の平和利用を強化し、軍拡競争の流れを止めることに力を注いでほしい。
この記事を印刷する