漏れる豚の鳴き声…沖縄・豚コレラ感染で殺処分 業者「涙を流しながら作業」

沖縄タイムス2020年01月09日07時58分

漏れる豚の鳴き声…沖縄・豚コレラ感染で殺処分 業者「涙を流しながら作業」

 県内で33年ぶりに豚コレラ感染が確認され、古くから沖縄の食文化を支えてきた養豚業に激震が走った。「頭の中が真っ白」と発生元の養豚場経営者。付近の農家は「何としても被害を食い止めるしかない」と語る。三枚肉やテビチ、ソーキと、豚肉は食卓に欠かせないだけに、関係者は感染拡大や風評被害に不安を募らせている。

 「白い防護服にマスク、手袋、長靴を身に着けた作業員が次々に現場に入っていく。豚コレラの感染が判明したうるま市内の養豚場。豚の殺処分に向けた作業は8日早朝から始まり、夜遅くまで続いた。午後11時ごろには、死んだ豚約20頭を乗せた第1陣のトラックが、市内の別の場所にある埋却地に到着した。

 養豚場から約300メートルの所には規制線が張られた。農場主の男性(59)が訪れたのは午前7時半ごろ。「なぜ感染したのか分からない」と痛々しい様子で語り、「元気な豚も殺処分しなければならないとすればつらい。頭の中が真っ白」とぼうぜんとしていた。

 地上から豚舎周辺の作業は見えないが、空撮映像を見ると、道に消石灰をまいたり、死んだ豚を大きな袋に入れたりしているようだ。時折「ピー」という豚の鳴き声も漏れ聞こえた。

 関係車両が通るたびに、防護服の作業員がタイヤを消毒する。住民らは、物々しい光景に驚いていた。

 この養豚場から豚を仕入れている飲食店経営の男性(39)は、農場主の男性を心配して駆け付けた。「人には感染しない。誤った風評が広まらないでほしい」と硬い表情だった。

 作業員らの集合場所となった「防疫ステーション」には、長靴などの資材を入れた段ボール箱が山積みにされ、早朝から県職員や自衛隊員らが慌ただしく準備作業に当たった。担当者から感染拡大防止について説明を受けた作業員は「時間との闘い。作業を進めながら対応を考えたい」。豚舎近くでテント設営していた職員は「早く収束できればいいが」と言葉少なだった。

 殺処分した豚を埋めるための二つ穴は、それぞれ長さ約60〜70メートル、幅約4メートル、深さ約4メートル。県建設業協会の会員企業が協力し、急ピッチで深夜まで続けられた。作業員の男性(61)は「養豚業者は涙を流しながら作業しているはず。建設業界は繁忙期だが、こんな状況なので互いに支えないと」と同情していた。

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