インフォームドコンセント

脳膿瘍という病気の病態と治療について

開頭術後骨欠損という病気の病態と治療(頭蓋形成術)について

開頭術後骨欠損の患者さん、ご家族の皆様へ

開頭術後骨欠損とは

前回の開頭手術の際に、術後の脳浮腫による頭蓋内圧亢進症状に備えて意図的に骨弁を除去しています。このような開頭方法を外減圧術と呼びますが、慢性期になると骨欠損部に大気圧が加わるために、頭痛やめまい、集中力低下、抑うつ状態などのさまざまな症状を呈することが報告されています。また、頭蓋冠がないために外部から直接脳が圧迫される危険性があります。骨欠損によって頭の形が大きく変形するため、美容上も好ましくありません。

患者さんの現在の状態について

前回の手術によって頭蓋骨欠損を生じています。しかし現在、脳浮腫や脳腫脹はなく、外減圧の必要性はありません。したがって、上に述べたような患者さんにとって不利益な状態を改善するためには、頭蓋形成術を行って元の生理的頭蓋腔に戻す必要があります。

我々の計画している治療法について

治療の目的はあくまで 頭蓋形成術 によって、患者さんの頭を元の生理的頭蓋腔に戻すことです。したがって元の病気によって生じた神経後遺症を改善するものではない事をご理解ください。これは頭蓋骨の欠損部分をセラミック製プレートやチタン製プレートなどの手術材料(人工骨)を用いて元の頭蓋の形にする外科的治療です。

頭蓋形成術の危険性について

1)手術中に起こりえること
頭蓋形成術をおこなうためには、前回と同じ皮膚切開を加えてさらに皮膚弁を脳を覆っている硬膜から剥離・反転する必要があります。前回の手術によって硬膜と硬膜直下の脳とがしばしば癒着していることがあります。このような場合には皮膚弁の剥離の際に、脳の表面を傷つけることがあります。また、損傷した脳から予期せぬ出血が起こる可能性もあります。そのために術前には存在しなかった神経症状が新たに出現する可能性があります。

2)手術後に起こりえること
われわれは閉頭時には手術野の止血を十分に確認しますが、術後に思わぬ場所から頭蓋内に出血をきたして、血腫が徐々に脳を圧迫して命取りになる場合があります。このような事が起こらないようにするには、術後十分な経過観察とCTスキャンなどの経時的な検査が必要となります。
頭蓋形成術 で用いられる 手術材料 (人工骨)は十分安全性が確認されているものですが、生体にとって異物であることには変わりありません。非常に希ではありますが、手術材料そのものが異物反応やアレルギー、 感染を生じさせることがあります。このような事態が起こった場合はすみやかに再手術によって 手術材料を取り除く必要があります。

3)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際に微生物の侵入を100%ゼロにすることは現在の医学水準からは困難です。従って、術中、術後にわたりこうした微生物を死滅させる薬剤すなわち抗生物質を投与します。多くの患者さんではこうした治療により術後感染の問題は生じませんが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生剤の効き目が悪かったりすると術後、細菌性髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる可能性があります。特に 頭蓋形成術 のように異物を体内に埋め込むような手術ではその危険性が高いことをよくご理解ください。また、意識障害の強い患者さんの場合、喀痰の排出が不十分で容易に肺炎などの肺合併症を起こしてそのことが命取りになる場合もあります。

4)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬、抗生物質をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応ショック(薬剤アレルギー)や予期せぬ副作用を生じることがあります。
手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります。輸血用の血液は病院で用意します。これらの血液はすべてB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、エイズウィルス、梅毒の検査がすべて陰性のものです。しかし、これらの検査は100%完全ではなく稀に輸血によってこれらの感染症にかかることがあります。

5)糖尿病、高血圧、肺気腫、胃潰瘍、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など様々なこれまで顕在化していなかった疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っていた病気がより重くなることもあります。  

6)その他予想外の合併症
我々は厳重な術中、術後管理にてこうした合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が起こってこうした合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡したり、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。

手術は気管内に人工呼吸のためのチューブを挿入して、全身麻酔により行いますので、手術に伴う痛みは感じません。しかし、この影響により手術後に喉の不快感や声が一時的にかれたりすることがあります。

患者さん、家族の方が我々の計画している治療法を拒否され別の治療法を選択されても、拒否したことにより不利益は被りません。すなわち治療途中で退院を早めるとか、あるいは今後、診療治療を行わないなどのことは決して我々はしません。また、いったん我々の予定している治療法に同意された後でも患者さん、家族の方がこれを拒否され別の治療法を選択されてもその理由で患者さんには不利益は被ることはありません。