その中で最後に、
もしも一度外した骨に感染が及んでしまった場合、
抗生剤などを使っても感染は収まらないと書きました。
そうなってしまった場合は、
骨を外してしまって、廃棄するしかありません。
こう聞くと、
「骨を廃棄??廃棄したらそれからどうするの?生きていけるの?」
とたいていの人はおっしゃいます。
これは、
「頭を覆っている頭蓋骨がなくても人間は生きていけるのか?」
という問いと同じだと思います。
結論から言うと、
頭のふたの部分にあたる頭蓋骨がなくても人間は生きていけます。
実際に、
骨のない状態で生活している人も世の中にはいらっしゃいます。
頭蓋骨の存在意義のほとんどは、
脳を物理的に守ることなので、
脳を他の方法で守る事ができれば、必ずしも頭蓋骨は必要ありません。
もちろん、
脳を守る以外にも、頭蓋骨には骨髄があるので造血を行っていたりもしますが、
これらはそれほど大したことではないのです。
頭蓋骨の一部を外したままの状態であっても、
たとえば脳を守る帽子のようなものさえあれば生活することができます。
皮膚ごしに脳が押されないように注意する必要があり、
ある程度生活は制限されてしまいますが、
日常生活を送ることはできます。
創部感染によって骨弁を外さざるをえなくなってしまった人の場合、
骨弁を外した状態でとりあえず創が治るのを待ちます。
感染の温床だった骨弁を外し、
創がきれいに治るのを待つのです。
そうして、感染が落ち着いたと判断されるまで待つのです。
しかし、
ずっと頭蓋骨が一部ない状態での生活を送るわけにはいきません。
骨がない状態というのは当然その部分だけ凹んで柔らかい状態となっています。
この状態ではやはり不安ですよね。
頭蓋骨の再建術が必要になります。
ただ、
「再建と言われても、感染しちゃった骨は捨てちゃったんでしょ?」
と皆さん思われるでしょう。
その通りで、感染してしまった骨はもう再使用することはできません。
そこで、
骨はなくなってしまったのにどうやって再建するのかというと、
人工の骨を使う!
ということになります。
自分自身の骨で頭蓋骨を作る!というようなことも全く行われないわけではないですが、
一般的なのはセラミックなどで作った人工骨や、
チタンなどの金属を使う方法です。
形成外科の手術で一度、
「肋骨を採取して組み合わせて頭蓋骨にする」
という手術を見た事がありますが、これにはかなり度肝を抜かれました。
離れ業、という印象があります。
ただ、
こういった方法ではどうやっても元の頭蓋骨そっくりの形には出来ないので、
美容的な観点からいくと限界があります。
それに比べて人工骨の場合、
最近ではオーダーメイドで元の骨そっくりの形の人工骨を作ることができます。
CTなどの画像データを元に、
そっくりの人工骨が作れるんです。
チタンなどの金属でも同じように頭蓋骨そっくりに輪郭に作ることができます。
こうやってオーダーメイドで業者さんに作ってもらった人工骨を、
再度手術で頭に埋め込みます。
そうすると、外見上はそっくり元の姿にもどることになるのです。
しかし、
人工骨を使う場合はやはり感染に注意が必要です。
人工物である以上、
感染にはやはり弱いです。
埋め込む際には感染が完全に消失されている状態でなければいけませんし、
埋め込みの時も不潔にならない様に最大限注意しなければいけません。
再度感染してしまったら、
また取り除かなきゃいけなくなるので、元も子もなくなってしまいます。
ばっちり、清潔に埋め込まなきゃいけないんです。
一度でしっかり治さないと創部感染は泥沼化してしまうんです。。
我々としても、
創部感染は一定の割合で起きてしまうとはいえ、
骨弁を廃棄せざるをえなくなって、さらに人工骨までダメにしてしまうというのは絶対に避けなければいけません。
なので、
この人工骨を使った頭蓋形成術は、技術的には簡単な手術にしても、
気合いの入る手術です。
人工骨と簡単に言っていますが、
オーダーメイドで作る場合、値段も極めて高いです。
なんと100万以上することだってあるんです。
絶対に一回で治さなければいけないですよね。
頭の創部感染は命の関わるほど重症になることはほとんどないものの、
本当に患者さんにとっても医者にとっても、
辛い病気なんです。
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