2020年01月10日
【思考術】『問題解決力を高める「推論」の技術』羽田康祐 k_bird
問題解決力を高める「推論」の技術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で大人気だった思考術本。お馴染みの「帰納法」と「演繹法」、さらには「アブダクション」の3つの推論法が身につく1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
3つの基礎が最強の武器になる!ビジネスを事例に基礎から応用まで徹底解説。外資系コンサルティングファーム×大手広告代理店ハイブリッドキャリアが教える、答えなき時代の仮説と成果のつくり方。
中古が定価よりも1000円以上高い以上、「25%OFF」のKindle版がお買い得です!
Business woman working on laptop in her office / perzonseo
【ポイント】
■1.推論力が必要なワケ:伝えたいことが伝わるコンサルティング業界ではよく、新米コンサルタントの訓練として「雲・雨・傘」というフレームワークが用いられる。このフレームワークは、問題解決やコミュニケーションの際の論理の一貫性を鍛えるために、雲「空は曇っている」(前提)という思考パターンを定着させることを目的に開発されたものだ。この「雲・雨・傘」のフレームワークを見ても「前提」と「結論」をつなぎ、論理的な一貫性を保つために重要な役割を果たすのが「推論」であり、話を伝わりやすくする上で非常に重要な要素であることがおわかりいただけるはずだ。
雨「よって、雨が降りそうだ」(推論)
傘「だから、傘を持っていくべき」(結論)
このように、ビジネスの世界では、●話全体の中で、相手はどの部分のことを聞きたがっているのか? 「前提」の話か? 「推論」の話か? それとも「結論」の話か?という2つのポイントを押さえておけば「伝えたいことが伝わらない」という状態を回避できる。この2つのポイントを押さえる上で要となるのが「推論力」だ。
●自分が伝えようとしている事柄は「前提(雲)」→「推論(雨)」→「そこから得られる結論(傘)」の筋道が論理的か?
■2.VRIOと推論力
戦略論の世界には、VRIOという、企業の競争力を整理するフレームワークが存在する。VRIOとはValue(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(運用力)のアルファベットの頭文字を取ったもので、これらのすべてを満たすことで、持続的な競争優位が築けるとされる。
このVRIOに「推論力」を当てはめてみると次のようになる。Value(価値): 推論力は「情報」や「知識」と異なり、あなた独自の価値を生み出せる能力である。こうしてVRIOフレームワークに当てはめてみると「推論力」はこれからのビジネスに役立つ重要な能力であることがわかる。
Rarity(希少性): 推論力は「情報」や「知識」と異なり流通しにくいため、情報洪水時代に希少価値となる能力である。
Imitability(模倣困難性): 推論力は目に見えず、長期的に身につける必要があることから、いったん確立すれば真似されにくい能力である。
Organization(運用力): 推論力は「ビジネス思考力」「分析力」「コミュニケーション力」「生産性」「提案力」の向上に影響を与える中核能力である。
■3.直接的な答えがない「洞察的帰納法」
「洞察的帰納法」は、共通点を発見する際に知恵を絞る必要がある。なぜなら「得られた複数の事実」の中に、直接的な「答え」が含まれていないからだ。
こちらも、前述した例を元に解説しよう。事実①: 水は「飲めるもの」である。これらをご覧になるとおわかりの通り、この3つの事実の中に「直接的な共通点」は含まれていない。この3つの共通点は、
事実②: 水は「洗えるもの」である。
事実③: 水は「火を消せるもの」である。共通点の発見: この3つの共通点は、モノ(=水)を抽象化して「コト」として捉え直したことである。だったが、この共通点を「発見」するには「洞察力」が求められる。
洞察力とは、目に見える事実を手掛かりにしながらも、その奥底にある「目に見えないもの」を見抜く力を指す。「目に見えないもの」とは「概念」や「関係」あるいは「原理」「本質」などだ。
これらの「目に見えないもの」は、目に見えないだけに、なかなか気づきにくいのが難点だ。しかし「気づきにくい」ことは他の人も同様なのだから、もしあなたが「目に見えないもの」の共通点を発見できれば、他の人の一歩先を行く競争力になりやすい。
■4.演繹法では隠れた前提を見抜く
ここまで再三指摘したように、演繹法を成り立たせている最も重要な要素は「前提となるルール」だ。別の言い方をすれば「前提の扱い方の上手い下手」が、演繹法をマスターするカギと言っても過言ではない。
たとえば、「人を殺しても、罪に問うべきではない」という主張があったとしよう。
もし「人の道理として考えたときに」という「前提」があれば、「人を殺しても、罪に問うべきではない」という主張は、決して受け入れることができない主張になるはずだ。
しかし「正当防衛として」という前提であれば「人を殺しても、罪に問うべきではない」という主張は受け入れられることもありうる。
このように、時に「前提」は「暗黙の前提」として、裏に隠れてしまっていることがある。そして「裏に隠れている前提」を見抜き、応用する力こそが、演繹法を使いこなす最大の武器となる。
もしあなたが演繹法をマスターしたいなら、「日常業務で演繹法を使う」「ビジネス理論を自社に当てはめる」と並行して「さまざまな主張から、隠れた前提を見抜く」トレーニングをしよう。
■5.物事の背景を見抜くアブダクション
あなたは「実体論」と「関係論」という2つの考え方をご存じだろうか? 「実体論」とは、たとえば金の延べ棒のように「実体そのものに価値がある」とする考え方だ。一方で「関係論」とは「価値は関係の中に表れる」と考える。たとえば紙幣は「関係論」の典型だ。
紙幣そのものは、実体論で捉えれば「原価20円の紙切れ」に過ぎない。しかし関係論で捉えれば、多くの人々が「この紙切れは、モノと交換できる」という前提を共有している。このため、たとえ「原価20円の紙切れ」に過ぎないとしても「紙幣」としての価値が生まれる。
そして「関係論」の立場に立つと、あらゆる物事は、・実体(例:紙切れ)という2つの側面に分けて考えることができる。この世の中には、紙幣のように「実体(紙きれ)」には価値がなくても「背景(モノと交換できる)」には価値がある場合があるが、アブダクションは「背景に存在する価値」を発見する際に有効だ。
・背景(例:モノと交換できる)
なぜなら、アブダクションは「起こった現象から原因となる仮説を導き出す推論法」だが、これは別の言い方をすれば「実体から背景にある価値を見抜く推論法」ともいえるからだ。
【感想】
◆上記ポイントだけだと分かりにくいのですが、コンサルタントさんが書かれた、というのが納得できる作品でした。というのも、構成が極めてロジカル。
下記目次の第2章から第4章までが、それぞれ帰納法、演繹法、アブダクションの3つの推論法について述べられているのですが、実はその節は3つの章とも
・〇〇とは何かとなっており、「〇〇」の部分にそれぞれ推論法が入る仕様です。
・〇〇を扱う際の留意点
・ビジネスで〇〇を活用する□つの局面
・〇〇の頭の使い方△ステップ
・ビジネスに〇〇を活かす方法
・〇〇をトレーニングする方法
もちろん、「□つの局面」や「△ステップ」に入る数字は異なるのですが、構成として考えるとどれも同じ。
そこからハイライトを引いた気になる部分を「ポイント」として抜き出していますから、推論ごとにフォーカスしている部分が異なるのはお許しください。
◆さて、それ以外の部分である第1章からは、まずは上記ポイントの1番目の「推論力の必要性」をセレクト。
ただしこれは、「なぜビジネスに推論力が必要なのか?」という小見出しに含まれる、5つの項目の中の1つになります。
またそれ以外の項目も「分析力の向上に欠かせない」「生産性の向上に役立つ」等々、このポイントの1番目と同じくらい重要ですから、できれば本書にてご確認いただきたく。
さらに、同じ第1章から抜き出した上記ポイントの2番目も、ビジネスパーソンとしては見逃せません。
ちなみにお恥ずかしながら「VRIO」というフレームワーク自体は、当ブログ初登場なのですが、Wikipediaでも日本語のページがない(?)みたいですね。
VRIO - Wikipedia
一応、日本語で解説されたページがありましたので、こちらも挙げておきます。
VRIO分析とは何か? バーニー教授が考案、「企業内」の経営資源の強みと弱みを知る 事例や図解でフレームワーク解説|ビジネス+IT
◆続く第2章は、帰納法について。
上記で触れたような「節」で構成されているのですが、ここからは上記ポイントの3番目の「洞察的帰納法」を選んでみました。
なお、これに対応するのが、単純に「観察」によって共通点を発見する推論法である「観察的帰納法」です。
もちろん「洞察的帰納法」の方が、「抽象化」が必要な分、テクニックとしては高度。
ポイントでも触れているように、
もしあなたが「目に見えないもの」の共通点を発見できれば、他の人の一歩先を行く競争力になりやすいワケですから、この「洞察的帰納法」はぜひマスターしたいところです。
◆一方、第3章の演繹法からは、「演繹法のトレーニング」の1つである上記ポイントの4番目をセレクト。
その冒頭で「ここまで再三指摘したように」とあるように、確かに演繹法では「前提」が非常に重要です。
たとえば具体的に演繹法の思考パターンを1つ抜き出してみたとして。
前提となるルール①:「働きがい」の向上は、我が社の方針だ。前提となるルールが違っていたら、まさに卓袱台返しになりかねません。
当てはめる物事②: 社内表彰制度の導入は、働きがいの向上に貢献する。
導かれる結論③: よって、社内表彰制度を導入すべきだ。
なお、それ以外の「演繹法のトレーニング」2つも要チェック項目なのですが、それを言ったら、そのほかの節にもハイライトを引いた部分が多々あるという……。
◆そしてさらに押さえてきたいのが、第4章のアブダクションです。
上記のVRIO同様、実はこのアブダクションも、当ブログ初登場。
アブダクション - Wikipedia
当ブログの読者さんにも、知らなかった方がいらっしゃると思いますので、この第4章はぜひ熟読してください。
小見出しにもあるように、上記ポイントの5番目は、もちろんこの第4章から抜き出したのですが、アブダクションが何たるかを知らないと、ここだけ読んでもピンと来ないかも。
ちなみにアブダクションは理論構成が、演繹法と似ているのですが、両者の違いについて本書ではこのように述べられています。
演繹法は「正しいとされる前提」に「目の前の物事」を当てはめることで今後を予測したり、あるいは検証するときに使うものだ。一方でアブダクションは「起こった現象に」「正しいとされる法則を当てはめて」「原因となる仮説を導き出す」ために使う。個人的には思考の矢印の向きが逆なのだと理解していますが……。
これからのビジネスパーソンに必須の推論力を得るために読むべし!
問題解決力を高める「推論」の技術
まえがき 「正解」から「可能性」へ
第一章 可能性を広げる推論力 今後希少性が高まるスキル
第二章 「優れた洞察」を生み出す推論法 帰納法
第三章 「予測と検証」を可能にする推論法 演繹法
第四章 「仮説」を生み出す推論法 アブダクション
第五章 成果を倍増させる「推論力の合わせ技」
あとがき 未来をより幸せなものに変える力
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【これは分かりやすい!】『コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング』下地寛也(2013年02月13日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。2時間でざっくりつかむ! 中小企業の「システム外注」はじめに読む本
この本、読み人を選びそうとはいえ、Kindle版が1000円以上お得。
チームの力 ――構造構成主義による“新”組織論 (ちくま新書)
それよりは当ブログ向きといえる作品は、送料を加えるとKindle版の方がお求めやすくなります。
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