CES 2020:Bluetoothの新しい音声規格が、ワイヤレスイヤフォンをもっと便利にする

Bluetoothの新しい音声規格として、「Bluetooth LE Audio」が発表された。オーディオを送受信する際の消費電力が少なくて済むので機器のバッテリーがもつようになるほか、複数のデヴァイスとの接続によってイヤフォンなどが使いやすくなる。なかでも注目していいのは、多数の機器へのオーディオの同時配信や、補聴器の利便性の向上だ。

Bluetooth

ANDREY RUDAKOV/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

自分だけのサイレントディスコを始めたい、もしくは遠く離れた場所にあるテレビの音声が耳に届いたら──と思ったことはないだろうか。そんな願いに応えるBluetoothの新しい音声規格が登場する。

Bluetooth規格の推進団体であるBluetooth SIGが1月6日(米国時間)、オーディオ機器の接続通信規格である「Bluetooth Audio」の次世代規格として、「Bluetooth LE Audio(LEオーディオ)」を発表した。この「LE」とは「Low Energy(低消費電力)」を意味する。

今回のアップデートの目的は、スマートフォンやスマートウォッチ、ヘッドフォンのバッテリーを消費しすぎることなく、Bluetoothによる複数デヴァイス間の音声ストリーミングの管理や共有をしやすくする点にある。

ワイヤレスオーディオの再生時間は約2倍に

この「LEオーディオ」という名称に見覚えがある人もいるかもしれない。これは2012年以降、Bluetooth規格において低消費電力(LE)の機能が有効になっているからだ。

以前は「Bluetooth Smart」や「BLE」と呼ばれていた低消費電力なBluetoothによって、ウェアラブル端末やフィットネストラッカー、環境センサーといった低帯域幅ネットワークを用いるデヴァイスは、以前ほどバッテリーを消費せずに接続を維持できるようになった。これに対してワイヤレスオーディオは高帯域幅を必要としており、消費電力も多いままだった。

LEオーディオを利用すると、その名の通りデヴァイスが低消費電力でオーディオをストリーミングできるようになる。ただし、新しい圧縮アルゴリズムを採用したことで、現在のBluetoothを利用したときと同等の音質を維持できる。

この新しい仕様に対応した製品をメーカーが開発すれば、ワイヤレスオーディオの再生時間を現在のほぼ2倍にしたり、逆にバッテリーを小型化してデヴァイスを小さくしたりもできる。

複数のオーディオ機器との接続が可能に

これはアップルの「AirPods」のようなワイヤレスなガジェットの人気が急上昇したことに伴う動きだ。Bluetooth対応機器がいたるところで使われるようになるにつれ、この技術の複数の機器への適応力は弱まっていたからだ。

「最近の技術的な進歩によって、開発者たちはBluetoothオーディオの可能性を限界まで引き出しています」と、Bluetooth SIGのマーケティング担当ヴァイスプレジデントのケン・コルダラップは語る。「イヤフォン使用時の音声コントロールなどの新しい機能を提供するために、ヴェンダーはBluetoothの規格を本当に工夫して使う必要がありました」

例えば、両耳に使うワイヤレスイヤフォンを考えてみよう。通常、左右のイヤフォンが同時に信号を受信することはない。シングルストリーム接続として知られている現在のBluetoothでは、片方のイヤフォンがオーディオ送信機器と接続し、その信号をもう片方のイヤフォンへと飛ばす。

この方式では、左右で音ズレが発生したり、音声が途切れたり、接続が切断されたりしがちだ。それにシングルストリームでは、新たなオーディオの発信元が検出されると再生中のオーディオを中断する。

これらすべての問題を解決することが、LEオーディオの目的となる。マルチストリームをサポートすることで、すでに接続されているオーディオのストリーミングを切断することなく、同時に複数のオーディオ機器(またはイヤフォン)に接続できるようになる。したがって、オーディオ発信元の切り替えがスムーズになるはずだ。この方式ではスマートフォンから流れる音楽を聴きながら、「Alexa」の声も耳に入ってくる。

マルチストリーミングにも対応

マルチストリームのサポートによって、Bluetoothを利用した“放送”のようなことも可能になる。理論的には音源となる1つの機器から、無数の機器へとオーディオをストリーミングできるのだ。

想像力次第で可能性は無限にある。映画館で同時通訳の音声を送ったり、自分だけの秘密の“ラジオ局”を始めたりもできる。Bluetooth SIGのコルダラップは、公共空間のあらゆるデヴァイスからBluetoothの信号が発信され、それを誰でもいつでも受信できるような世界を思い描く。あとは表示される何百もの「利用可能なデヴァイス」から、好きなものを選ぶだけだ。

「空港やラウンジ、スポーツバーやレストラン、体育館や待合室などの多くにテレビが設置されていますが、そのほとんどは音声が消されています」と、コルダラップは言う。「こうした場所でテレビの音声を手元のヘッドフォンでスキャンして、受信できるような状況を想像してみてください」

補聴器の利便性が向上

こうしたBluetoothの新機能の恩恵を受けられるのは、レイヴの礼儀正しい参加者や、混雑したスポーツバーでヘッドフォンの利用する人たちに限らない。小型で長持ちするバッテリーと、考えうるほぼすべてのオーディオに接続できる能力は、聴覚障害者のアクセシビリティに新時代の到来を告げることになるかもしれない。

例えば、補聴器は外部からの音を増幅するだけでなく、同時にオーディオ機器などからのストリーミングも受信できるようになるかもしれない。コルダラップによると、LEオーディオの仕様は補聴器の規格を完全にサポートするように設計されているという。

「つまり究極的には、通話や音楽鑑賞、テレビの音声などの利用といったBluetoothオーディオの恩恵すべてを、補聴器のユーザーにもたらすことができるのです」とコルダラップは語る。新しい規格に対応した製品は2020年後半に登場し始め、今後3年ほどでLEオーディオに対応した機器がさまざまな場所で利用できるようになるという。

※『WIRED』によるCESの関連記事はこちら

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米国への報復に動いたイランは、「核の大国」への道を歩み始めるのか?

米軍がイラン革命防衛隊の対外精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害したことを受けて、イランが米軍の施設を攻撃するなど米国との対立が激化している。こうしたなか、イラン政府が合意の制限を破り、ウランの濃縮活動を無制限に進めると宣言した。これは核兵器の開発へとイランが急ピッチで向かうことを意味するのだろうか?

TEXT BY DANIEL OBERHAUS

WIRED(US)

Iran

イラン南西部にあるブーシェフル原子力発電所の様子。RAMIN TALAIE/CORBIS VIA GETTY IMAGES

イラン政府が1月5日(米国時間)、2015年に結んだ合意(包括的共同作業計画)の制限を破り、ウランの濃縮活動を無制限に進めると宣言した。この発表は、米軍がイラン革命防衛隊の対外精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害したことに反応したものとみられている。だが専門家らは、米国のトランプ大統領が2018年に核合意からの離脱を表明したことに端を発していると指摘している。

今後のイランは、核兵器の開発競争へと飛び込んでいくことになるのだろうか? おそらくそうではないだろう。だが現在のイランは、この5年で最も核開発に近い位置にいる。

イランは2015年の核合意から完全に離脱したわけではないが、ウランの濃縮レヴェルや遠心分離機の稼働数、濃縮ウランの在庫量などの制限を遵守しないと宣言している。核で武装した“大国”になる道は、イランにとって一度は閉ざされていた。それがいま、開き始めているのだ。

イランが核兵器を開発するまでに必要な時間

ここで悩ましい問題が生じる。イランが実際に核開発に踏み出すことを決断すれば、核兵器をつくるためにどのくらいの時間が必要になるのだろうか?

その期間は「ブレークアウトタイム(核兵器1個分の核燃料の製造にかかる期間)」として知られており、ミドルベリー国際研究所の核兵器管理の専門家であるマイルズ・ポンパーは、いまのところ少なくとも1年かかると推定している。これは、イランが核インフラを2015年以前のレヴェルに戻すために必要な作業量のみを基に計算されている。

ブレークアウトタイムを推定する際は、イランがどれほど積極的に動くかによって見通しが異なるため、さまざまな要素を考慮して計算しなければならない。「イランが核兵器1個分に必要な核燃料を取得するまでどの程度の時間が必要なのか計算するのは、非常に複雑な作業です」と、シンクタンクである軍備管理協会(ACA)所長のダリル・キムボールは指摘する。

そしてイランのブレークアウトタイムは、おそらく短縮するだろう。だがキムボールによると、いつ、どのくらい短縮するのかはわからないという。

ブレークアウトタイムは1年?

問題になるのは、現状は原子力発電所の建設に必要な低濃縮ウランを保有するウランが、兵器級となる高濃縮な核燃料へと、いかにステップアップしていくのかだろう。

15年の核合意の一環として、イランのウラン濃縮度は3.7パーセント、貯蔵濃縮ウランは300kgに制限されている。また、ウラン鉱石の濃縮に必要となる基本的な遠心分離機の稼働数は、約5,000台に限定される。これは合意前に保有していた19,000台には遠く及ばない。

これらの条件下でも、イランは原子力発電所を稼働することができるだろう。そして核合意からの離脱を実行に移せば、ブレークアウトタイムは1年になるとみられている。

イランは19年5月にウラン濃縮度を4.5パーセントに引き上げると発表したが、これだけではイランが核兵器の保有に向かっているとは言えない。4.5パーセントという濃縮度は、核兵器の製造に必要な約90パーセントにははるかに及ばないからだ。

しかし、核兵器の保有に向けた一歩であることには変わりない。15年の核合意以前、イランは濃縮度20パーセントを達成していた。これは兵器級ウランへの道のりにおいて重要なしきい値であると、軍備管理協会のキムボールは指摘する。ウランの濃縮度を1パーセントから20パーセントにするほうが、20パーセントから90パーセントにするよりずっと困難といえるからだ。

遠心分離機の数がカギに

こうした濃縮度のマイルストーンを達成するために必要な時間は、イランの遠心分離機の質と数に依存する。採掘された時点のウランはウラン238と呼ばれる同位体でほぼ構成されるが、これは核兵器の製造にはほとんど適さない。核分裂を起こしやすく兵器に利用できるウラン235は、自然界にはわずかしか存在しないのだ。

そこで科学者が遠心分離機を用いて、ウラン238とウラン235を分離するのである。このプロセスを何度も繰り返すことで、ウラン235の濃縮度を1パーセント未満から90パーセントを超えるレヴェルにまで高めることができる。

イラン政府は、何台の遠心分離機を追加するのかまだ発表していない。現時点でイランで稼働している遠心分離機はかなり基本的な機器だが、ミドルベリー国際研究所ポンパーによると、イランはさらに高速かつ高度な遠心分離機の開発に着手しているという。

そのために利用する研究用原子炉を稼働させるか、稼働状態の遠心分離機を大幅に増やした場合、イランのブレークアウトタイムは短縮されることになる。「しかしいまのところ、そのために必要な数の遠心分離機は設置されていません」と、ポンパーは指摘する。

次のステップはどうなる?

つまり、結論はこういうことだろう。「イランが核兵器の製造に突き進もうとしていないことは、非常に明らなことです」と、軍備管理協会のキムボールは語る。

イラン政府は15年の核合意で定められたウラン濃縮に関する多くの制限を遵守しないと宣言したが、国際原子力機関(IAEA)による核関連施設への査察の受け入れは継続すると表明している。これはイランが核兵器の保有に向かっていないことを、世界のほかの国々が再確認できる重要なポイントと言っていい。

「イランは性急にことを進めず、反応を待っているようです」と、軍備管理不拡散センターのシニア政策ディレクターを務めるアレクサンドラ・ベルは説明する。「この状況をさらに悪化させない方法をイランが模索していることを示していると思います。米国と戦争を始めることは得策ではありませんし、米国にとってもイランとの戦争は国益にかないません」

イランと米国の両政府が今後数週間のうちに下す決断によって、イランの次の動きがどれほど攻撃的なものになるか明らかになる。15年の核合意は核不拡散への道のりにおける重要かつ暫定的な処置だった。この合意は完全に破棄されたわけではないが、「崩壊の瀬戸際にあります」とキムボールは指摘する。

この核合意に関して、フランス、ロシア、ドイツ、中国は、引き続き合意を維持する意向を示している。イランは外交による解決の道を閉ざしていないが、トランプ政権が交渉のテーブルにつくことに同意するのが前提条件になる。

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