ゴーン会見に日本人が納得できない4つの理由

論点すり替え情報隠し自画自賛で日本を疎外

もちろんこれはゴーン氏の狙いであり、実際に欧米メディアが日本の司法制度に疑問の目を向けたことから、一定の成果を得たとも言えるでしょう。しかし、その欧米メディアですら、「日本の司法制度の問題とゴーン氏の罪は別の話」という冷静な論調が出ているように、自身のイメージ回復にはつながっていません。

「すべての情報を開示しない」スタンス

ゴーン氏は日本の司法制度を批判した一方、自らの罪については認めませんでした。

「罪の根拠はなく、日産から支出された資金は正当なもの」「日産と検察が共謀して私を陥れた」などと話したのみで、裏付けとなる証拠は提示されず。当然ながら証言の信憑性はなく、司法制度を批判していたときの冗舌さもありませんでした。

さらに歯切れが悪かったのは、逃亡劇に関する質問。「日本から出た経緯については話しません。それが迷惑をかけることにもつながるからです」「私は『なぜ脱出したのか?』を語るために来た」と語るだけでした。

また、事前に「日本政府内で何が起きていたのか、名前も出せる」と豪語し、海外メディアの焦点ともなっていた政府関係者の実名も語らずじまい。ゴーン氏はその理由に「レバノン政府や国民の不利益になることはしない」を挙げていましたが、「今後の切り札となる情報だから、まだ温めておく」という可能性も多少はあるでしょう。いずれにしても、すべての情報を開示しない姿勢が「この日の会見はもともと疑惑を晴らすためのものではなかった」ことを物語っています。

ゴーン氏はテレビ東京の記者から無断出国の是非を問われ、「私が日本を出国したことは明らかに法律違反でそれは問題ですけれども、日本の検察が10件の法律違反を犯しているのは問題ではないのでしょうか?」と返しました。

次ページ多少の矛盾点はあっても…
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  • AJRAbdebf3631e11
    こういう人、身近にいるんだよね…意外と。
    up12
    down2
    2020/1/9 17:28
  • ST4ec25b3d4a3f
    東洋経済さん、こんなタイトルの記事載せてるから会見呼ばれないんですよ。呼ばれなかった腹いせみたいで大人気ない。東洋経済なんだから頼みますよ。

    わたしも昨日の会見は退屈てした。新しい内容なし。日本で意見表明できないのだから、日本のメディアこそ招待すべきだったと思います。

    とはいえ最初の金融商品取引法違反は司法取引なしには無理ある逮捕。だって首謀の西川元社長が自分で承認した日産として決議した内容。会社が罪に問われるのではなく、ゴーン氏とケリー氏だけ個人として逮捕。司法取引して逮捕したものの、なかなか罪に問えず無理矢理勾留を延長。その間に何とか特別背任容疑になりそうなものを調査。検察も日本の恥さらし。ゴーン氏も検察も自己正当性の主張。逮捕も会見も声明も茶番です。
    昨夜は米国イラク問題に比べたらこいつは小さい問題。野次馬的なネタですね。
    up13
    down5
    2020/1/9 18:32
  • マンネルc37aa0c9c09f
    日本政府と日産の共謀の証拠を期待していたひとやメディアにとっては、確かに肩透かしだっただろう。

    でも、ゴーン氏の残りの人生をかけて汚名を注ぐという気迫は十分に伝わった。まだ判断するには時期尚早だと思う。

    彼はグローバルな経済人であるが、レバノン系でもある。中東では名誉は命よりも重んじられる伝統があり、もはや失うものがない彼は、覚悟を決めたのだと思う。
    up13
    down5
    2020/1/9 18:06
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