本当は日本旅館に泊まりたい
「親日外国人観光客」がガッカリ

 それを示すのが昨年12月25日の観光統計の「宿泊施設タイプ別客室稼働率推移表」だ。外国人観光客がはじめて1000万人を超えた2013年(平成25年)のビジネスホテルの客室稼働率は69.5%。一方、リゾートホテルは52.3%、旅館は33.4%となっている。

 ここから現在にいたるまで右肩上がりで外国人観光客が増えていくので、理屈としてはすべての宿泊施設で稼働率は上がっていくはずだが、明暗がくっきりと分かれていく。

 ビジネスホテルは70%代まで上がって昨年11月には80.2%(第1次速報値)となっているが、リゾートホテルは50%代をウロウロして昨年11月の客室稼働率は56.4%。旅館も30%代が多くて昨年11月には40.6%(ともに第1次速報値)にようやく届くありさまだ。

 つまり、爆発的に増えている、右肩上がりだ、と景気のいい話ばかりが伝えられる外国人観光客だが、本当なら外国人観光客が大挙して押し寄せていなくてはいけない「観光ホテル」の利用者は、それほどドカンと増えていないのだ。

 このような観光客と宿泊施設のミスマッチは近い将来、日本のインバウンドにブレーキをかけることになる。日本に憧れを抱いて訪日するような「親日外国人観光客」を失望させることになるからだ。

 海外に日本の魅力をPRするプロモーション動画などをご覧になっていただければわかるが、外国人観光客が日本の伝統的な旅館や、温泉宿に宿泊して、日本人と触れ合うみたいなシーンがお約束となっている。

 しかし、現実はこれまで述べたように、ビジネスホテルで狭い部屋やユニットバスで泊まるのが一般的となっている。期待が大きければ大きいほど、裏切られた気持ちは大きいものだ。

 実際にそれをうかがわせるようなデータもある。前出「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」の中の「訪日外国人旅行者が希望する宿泊施設及び実際の宿泊施設」によれば、外国人観光客の70%が「日本旅館」での宿泊を希望しているが、実際に宿泊できるのは55%にとどまっている。

 この理想と現実のギャップは、旅館の廃業が進み、ビジネスホテルが増えていけばさらに広がっていくだろう。それはつまり、日本にガッカリして帰国する外国人観光客も増えていくということなのだ。