「日本で宿泊」イコール
「ビジネスホテル泊」になりがちな現実

 観光庁観光産業課の「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」(平成31年1月28日)の「訪日外国人旅行者による宿泊割合(宿泊施設タイプ別)」を見ると、日本にやって来る外国人観光客の36.6%がビジネスホテルに宿泊している。シティホテル(34.5%)、リゾートホテル(13.2%)、旅館(10.6%)を抑えてトップだ。

 この利用率は大都市圏になるともっとハネ上がる。東京都は46.1%、愛知県は51.1%、福岡県にいたっては59.6%となっている。

 つまり、多くの外国人観光客にとって「日本で宿泊する」ということは、「ビジネスホテルに泊まる」ということとほぼ同じ意味になってしまっているのだ。

 なぜこうなるのか。日本のビジネスホテルは安いのに設備もキレイで交通の便もいいから、ということもあるが、何よりも圧倒的な勢い次から次へと供給されていることが大きい。

「みずほ総合研究所」のレポート「2020年東京五輪開催年のホテル需給の試算」(2019年11月29日)の中に、観光庁の「宿泊旅行統計調査」をもとに作成された「2018年タイプ別客室数(前年差)」という表がわかりやすい。

 ビジネスホテルが4万室にも届こうかという勢いでドカンと増えているのに対して、シティホテルは1万室弱でリゾートホテルも微増。旅館にいたっては減少しているのだ。

 このあまりに偏った「ビジネスホテル供給過多」が日本のインバウンドの勢いにブレーキをかけているのではないか、と個人的には思っている。

 外国人観光客の宿泊先をビジネスホテルに一極集中させてしまったせいで、本来ならば外国人観光客で大賑わいするはずのリゾートホテルや、日本の伝統的な宿泊施設である旅館や温泉宿が霞んでいる側面は否めない。「多すぎるビジネスホテル」のせいで、日本の宿泊施設の多様性が損なわれてしまっている恐れがあるのだ。