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“堕ちたカリスマ”ゴーン被告の「悪あがき会見」…結局誰が悪いのか

司法制度批判するのもいいけれど…

堕ちたカリスマ

世界から賞賛されたプロ経営者のカルロス・ゴーン被告が、国家から見放され、「堕ちたカリスマ」になったことを痛感させられたのが、レバノンの首都ベイルートで、8日午後3時(日本時間午後10時)から開かれた記者会見だった。

押し出しが良く、オーバーアクションを交えつつ論旨は明快。よどみなく日本の司法制度を批判して無実を主張、西川広人社長(肩書は当時、以下同)など日産幹部が日本政府や検察と組んだクーデターであるとして、その詳細を語り、「逃亡」はやむを得ないことで、逃げたのではなくの冤罪に陥れられることを拒否する緊急避難であると強調した。

会見で語られたことに新鮮味はない。取り調べに弁護士の立ち会いがなく、逮捕すれば罪を認めるまで勾留を続ける「人質司法」の問題点は、これまで散々、指摘されたし、事件が、18年6月に施行された「司法取引」を利用した「コンプライアンス(法令遵守)・クーデター」であることは、周知の事実であり、この種のクーデターで失脚させられるのは、ゴーン被告に限ったことではない。

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要は、ゴーン被告は日仏両国の国策に翻弄されて除外されたのであり、20年にわたる日産支配の間に会社を私物化、排除される隙を与えてしまった。事件は、権力闘争劇の一環と捉えれば分りやすく、その自覚があるから国も企業も、組織の長には任期を設け、長年の支配を許さない。

ゴーン被告が最初に逮捕されるきっかけの巨額報酬批判を避けるために後払いにする過少申告の不実記載も、中近東の友人にCEOリザーブという名の別の財布をつくり、そこから拠出させた販売奨励金をキックバックさせる手法も、ベンチャー投資名目の子会社・ジーア社を連結決算から外し、その孫会社でベイルートやリオデジャネイロの邸宅を所有するという手法も、「合法」のしつらえを装った脱法行為による会社私物化である。