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【社会】

ゴーン被告、レバノンで会見 「日産幹部の陰謀」「迫害から逃れた」

8日、レバノンのベイルートで、会見場入場を巡り警備員と交渉する各国の報道陣(竹田佳彦撮影)

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 【ベイルート=竹田佳彦】保釈中にレバノンに逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(65)が八日午後(日本時間同日夜)、首都ベイルートで会見を開いた。日本政府が国際刑事警察機構(ICPO)を通じてレバノン政府に拘束を要請する中での異例の会見で、被告は「日本で拘束され、人権と尊厳を奪われた。私は逮捕されるべきではなかった」と改めて潔白を主張した。

 二〇一八年十一月の逮捕以来、被告が公の場で発言するのは初めて。しかし、メディアの参加を制限したり、質問の回答を拒否したりするなど、会見は「独演会」の様相を呈した。

 ゴーン被告は約一時間かけ、拘束されてから現在までの状況などを説明。逮捕は一部の日産幹部らの「陰謀だった」として、前社長兼最高経営責任者(CEO)の西川広人氏らの実名を挙げた。起訴内容に反論し、「無実の証拠」として役員らがサインした書類などを示してみせた。

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 日本の司法制度の批判も繰り返し、「取り調べでは『罪を告白すれば拘束は終わる』と言われ、拘束は地獄のような体験だった」と振り返った。刑事裁判での高い有罪率などを例に挙げて「日本の司法制度には欠陥がある。公正な裁判は受けられない」と述べた。

 保釈中の違法な出国は「不当な迫害から逃れてきた。家族にも会えず、他に選択肢はなかった」と正当化し、詳しい出国方法を問われると「話すつもりはない」と回答を拒否した。大半の日本メディアの参加を許さなかった理由を質問され、「締め出してはいない。客観的に報道できる人が招かれた」と強調した。

 ゴーン被告は昨年十二月二十九日夜、関西空港から音響機材の箱に身を隠してプライベートジェットで出国し、三十日にベイルートに到着したとされる。日本とレバノン間に犯罪人引渡条約がなく、拘束と引き渡しは困難とみられる。

 ゴーン被告は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されて以降、一貫して無実を訴えてきた。一度目の保釈後に会見を予定したが会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕されて実現せず、二度目の保釈後の一九年六月にも予定したが、直前に「家族の反対」で中止した。

保釈中にレバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告が8日、ベイルートで記者会見を開いた。ゴーン被告は「日本で拘束され、人権と尊厳を奪われた」と改めて潔白を主張した=ロイター・共同

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◆東京地検コメント「自らの行為を不当に正当化」

 ゴーン被告の記者会見をインターネット中継などで見守った検察幹部らからは、「自分に都合のいいことをまくし立てているだけだ」「無実なのであれば、逃げるのではなく、法廷で訴えるべきではないか」などと非難する声が上がった。

 身ぶり手ぶりを交えて捜査を批判し、潔白を訴えたゴーン被告。検察幹部の一人は「多弁に語っているが、主張に具体性がない」と冷ややかに話した。

 別の検察関係者は「検察を恨んでいることだけはよく分かった」と苦笑い。

 幹部の一人は「海外の同情を引くためのパフォーマンスでしかない。正々堂々と法廷で白黒を付けるべきではないか」と強調した。

 東京地検の斎藤隆博次席検事は九日未明に「被告は法を無視して逃亡した。会見内容は自らの行為を不当に正当化するものにすぎない」とのコメントを出した。 (山田雄之、山下葉月)

◆日本人記者の取材制限

 【ベイルート=竹田佳彦】会見に世界中のメディアが集まる中、ゴーン被告は大半の日本メディアの参加を拒否した。会場へ続く通路は白い柵でふさがれ、警備員が出席を許された記者の名前を一人ずつ読み上げて通過させた。名簿に名前がない記者が交渉を求めても「名前がないと通せない」と繰り返し、広報担当者への取り次ぎも拒否した。

 仏テレビ局の記者は「日本に関わる問題で排除は理解に苦しむ」と被告側の対応に首をひねる。ヨルダン紙の記者は「会見を開く以上、全社に出席を認めるべきだ」と指摘した。

 仏報道専門局BFMTVは「会見は日本人記者を排除」と報じ、出席者は被告自身が選んだと説明。日本メディアが被告について厳しく報じた背景が理由にあると示唆した。

 

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