男系男子天皇にこだわる社会は、女性全体に苦痛
菅野朋子弁護士に聞く「男を産むことを強いられるプレッシャー」
矢部万紀子 コラムニスト
令和になって「愛子天皇待望論」がヒートアップしている。愛子さまが大変優秀で、人望も厚いと強調し、週刊誌には「雅子さま、愛子さまへの天皇教育を決意」などという見出しも踊る。背景にあるのは、各種世論調査から浮かび上がる「女性天皇」容認の声だろう。共同通信が2019年10月末に実施した調査では、81.9%が「女性天皇を認めることに賛成」と答えている。
一方、安倍政権は皇位継承問題を先送り中だ。天皇退位特例法が付帯決議で、速やかに検討せよとした「女性宮家の創設等について」さえスルー。首相の主たる支持者が「男系男子による継承」に強くこだわっているからだ。
19年11月にオンエアされた「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)は、竹田恒泰さんをゲストに皇位継承問題を取り上げた。神武天皇以来の「男系男子」を守るべきで、「旧宮家の皇籍復帰」で安定的皇位継承はできると解説する竹田さん。保守派のいつもの主張だったので聞き流していたが、1人のコメンテーターの意見に驚いた。
レギュラーコメンテーターで、弁護士の菅野朋子さんがこう言っていた。「私が一つ申し上げたいのは、女性・女系天皇を認めないということがどれだけ女性にとって苦痛か、女は男を産まなければいけないんですか。そこを強いられることになるんですよ」。
天皇は「国民統合の象徴」だから、「女性・女系天皇」についても国民自ら考えねば。そういう「べき論」はたくさん聞き、たくさん読んだ。だが、「女性・女系天皇を認めないことが、女性の苦痛になる」とはっきり聞いたのは初めてで、そこからじっくり見始めた。
「今は1人の女性だけだが、どこかで(男子が)生まれればいい」ので旧宮家復帰なら大丈夫。そういう趣旨を語る竹田さんに、菅野さんは「女性にとって男子を産まなくては認められない。そのことを突きつけられる。その価値観というものは、今は国民になかなか受け入れられないのではないですか」と反論していた。
菅野さんの言葉は「皇室は国民と地続き」で、その延長線上に女性・女系天皇問題があるという指摘だと思った。皇后雅子さまが受けた「男子出産」圧力については考えたことがあったが、それが国民に与える影響については考えたことがなかった。菅野さんの考えをもっと知りたくなり、インタビューを申し込んだ。
長い前置きになった。ここから菅野さんのインタビューを紹介する。

菅野朋子(かんの・ともこ) 1970年生まれ。立教大学社会学部卒。結婚、出産、離婚を経て、東京大学法科大学院在学中、旧司法試験合格。企業内弁護士などを経て、2011年に独立。レギュラーコメンテーターとして毎週火曜日に「羽鳥慎一モーニングショー」に出演している