【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は8日の演説で、イランがイラクの米軍駐留拠点を攻撃したことの報復措置としてイランに追加の経済制裁を科すと表明した。「各国はイランによる中東での破壊的で不安定化を招く行動を許容してきた。その日々は終わった」と強調し、イランに対する強硬姿勢を崩さなかった。一方で報復攻撃には触れず、イランとの対立激化を望まない考えも示した。
米国防総省によると、イランは8日にイラク中西部アンバル州のアサド空軍基地と北部アルビルの基地を弾道ミサイルで攻撃した。トランプ氏はこの攻撃による米国の死傷者が出なかったと明らかにした。「イランが身を引いているようだ」とも語り、イランがこれ以上の事態悪化を望んでいないとの見方も示した。
トランプ氏は対抗措置に関し、イランに追加制裁を科し「イランが行動を変えるまでこれらの強力な制裁は続く」と訴えた。ただ米国はイランのエネルギーや金融部門をすでに制裁対象にしており、同国経済に打撃となる制裁の選択肢は限られるとの見方が多い。
一方で報復攻撃には言及しなかった。極超音速ミサイルの開発などをあげて米軍の軍事力を誇示したが「使うことは望んでいない」と語った。中東情勢の一段の緊迫を招く報復攻撃に慎重な立場を示した発言とみられる。トランプ氏はこれまでにイランが中東地域の米軍などに報復攻撃を仕掛けた場合にイラン関連の52カ所を標的に反撃する可能性に触れていた。
イランとの対話のシグナルも送った。「イラン国民や指導者に告ぐ。我々はイランのすばらしい未来を望んでいる」と語った。過激派組織「イスラム国」(IS)はイランの敵でもあると指摘し「我々はこの問題に加え、その他の優先度の高い課題に関して協力すべきだ」と呼びかけた。
今後の中東政策を巡っては、北大西洋条約機構(NATO)に関与の拡大を求めると表明した。米国内のシェール革命を受けて、中東の原油依存度が下がり「我々の戦略的優先度が変わった」と説明。米国が中東安定に関与を薄める考えを改めて示した。トランプ氏はかねてから地理的に中東と近い欧州諸国が中東の安定に向けて、軍事・経済面で貢献を高めるべきだと主張していた。
初割実施中!無料期間中の解約OK!
日経電子版が最長2月末まで無料!