35:声優さんにどの程度リテイクを出せるのか。
またご質問いただけました、ありがとうございます。
早速いってみましょう。
■以前の声優さんの収録のお話で「リテイクの際に~」といった言及がありましたが
ノイズ・音量ブレなど単に音声データとして使用できないからリテイク、
ではなくライターさんが演技内容に不満があるからリテイクをかけるということは
できるのでしょうか?
また声優さんに渡される台本は純粋に
シナリオテキストの抜粋になるんでしょうか、
それとも「ここは~~なシーンなのでこういう演技で」といった
ト書きのようなものを入れたりもするのでしょうか?
少々前後するが、たぶんほとんどのライターはシナリオを書くときに、大事だったりや感情がわかりにくいセリフには、コメントアウトで(ゲーム上には表示されないようにして)「笑顔で」とか、「声を震わせながら」とか、簡単な指示を残す。
こだわる人であれば、質問のようにかなり細かい演技指導を残す人もいるんじゃないだろうか。
そういったメモ書き、指導は、台本に残した状態で声優さんにお渡しするので、ライターの希望もしっかりと伝わっている。
台本で指示することができる、ということは、収録時でももちろん演技指導は行える、というわけだ。
決して「プロの演技に文句が言えない」という状況ではない。
リテイクを嫌い不機嫌になるような人もいるが……そんな人は例外中の例外、極々少数なので、基本的に声優さんはリテイクに対してノーと言うことはない。
主にどんな台詞にリテイクを出すかだが、
・音が綺麗じゃない。
・演技の方向性が違う。
・イントネーションが間違っている。
・読み間違い。
・テキストの修正
以上のパターンだろうか。
ノイズは多少のリップノイズだったりは編集時に取り除けるためスルーするが、セリフに大きめの音がかぶってしまった場合は取れないので、リテイクをお願いすることになる。
結構多いのが「お腹の音」だろうか。収録は長時間に及ぶことがしょっちゅうで、どうしてもお腹が減ってしまう。でも食べたら食べたで消化音がしてしまうし……と、なかなか難しい。
収録中、「おはよ~、そろそろ起き(お腹ぐるぐる)……すみません、お腹鳴っちゃった……」と、声優さんが申し訳なさそうに演技を止める場面は、収録に立ち会ったことがある人なら「あるある」と思うんじゃないだろうか。
あとは若干音がかすれてしまったりしまった場合もリテイクをもらう。
この演技違うな~と思ったときも、当然もらう。
質問者が「この台詞ってそういう感じか?」と思ったのは、ライターが立ち会っていなかったからかもしれない。
俺もよくあるのだが、収録に立ち会えなかった作品は「あ~……そう録ったかぁ」とこちらの意図とまるで違う演技になっていたりする。
なので俺は仕事を受けるときに「収録にはできる限り呼んでください」とお願いしているのだが、知らないうちに終わっていることもあるから、まぁ……いろいろ都合があるのだ。申し訳ない。
ただ、これは俺だけではないと思うのだが、こちらの想定と違っていたら全部リテイクを出すかというと決してそんなことはなく、頻繁に声優さんがこちらの想定を超えた演技をしてくださるから、そういうときはそのままもらうことにしている。
イントネーションの違い、読み間違いでもリテイクして正しく直してもらう。
しかし些細な読み間違いでそのままでも意味が通る場合は、リテイクをもらわずテキストの方を直してしまうこともある。
読み間違いではなく文章自体が間違っていることもあって、その場合は声優さんの方から指摘があったり、いい感じに読んでもらったけどすみません……とリテイクをもらうこともある。
リテイクに関してはこんな感じだろうか。
それでは今回はこの辺で。
質問お待ちしております。