【ラスベガス=白石武志】世界最大のデジタル技術見本市「CES」が7日、ラスベガスで開幕した。会場内ではプライバシーをめぐる討論会を開き、消費者保護を担当する米連邦取引委員会(FTC)の幹部、フェイスブックやアップルのプライバシー責任者が登壇。個人情報保護の達成状況をめぐっては、規制当局と企業の間の認識の違いも浮き彫りになった。
フェイスブックは2018年3月に発覚した最大8700万人分の個人情報の不正流用問題に関連し、FTCから個人情報保護の不備を理由に過去最大規模となる50億ドル(約5400億円)の制裁金を科されている。討論会は約400席の会場に立ち見が出るほどの参加者が集まった。
フェイスブックは過去の不祥事の反省から収集する個人データを絞るなどの対策を進めているといい、同社でチーフ・プライバシー・オフィサー(CPO)を務めるエリン・イーガン氏は「今日、フェイスブック上でプライバシーは保護されている」と強調。一方、FTCのレベッカ・スローター委員は「特定のサービスについては話さない」としつつ「一般論として消費者のプライバシーが守られているとは思わない」と述べた。
約30年ぶりにCESに参加したアップルからは、プライバシー問題を統括するシニアディレクターのジェーン・ホーバス氏が参加。スマートフォン「iPhone」がネットワークの先にあるサーバーと情報をやりとりする際の暗号化技術など、個人情報保護の取り組みを紹介した。
討論会では1月1日に施行した全米初の包括的なプライバシー保護ルールとなる「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」も話題となった。ニューヨーク州など他の州でも類似のルールを導入する動きが広がっているが、米企業の間では州ごとに異なる規制が設けられることへの警戒感が強まっている。アップルのホーバス氏は「どこに住んでいるかに関わらず、消費者は同じ保護を受けられるべきだ」と述べ、連邦政府レベルの統一した規制が必要だとの認識を示した。
CCPAは消費者が企業に対し保有する個人データの売却停止を請求できる権利などを定めており、フェイスブックのネット広告事業への影響が懸念されている。ただ、同社のイーガン氏はターゲティング広告に個人情報を使うことは「データの売却に当たらないのは明らかだ」と従来の立場を繰り返し、会場内から失笑が漏れる場面もあった。
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