Book

「書評」ノンフィクションでもおかしくない! スマホを落としただけなのに 志賀晃

どんな話なのか?

麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され……。

引用元…宝島CHANNEL

フィクションだけど現実でもありそう

小説で起きる事件と言うと、「現実とはかけ離れている」というイメージがある。

小説でしかありえないような、突拍子もない事件ばかりだ。

しかし、このミステリ小説は「けっして他人事ではない」と思わせるほど

リアリティがある。

「小説=非現実」であるはずが、「小説=現実」であると錯覚するのだ。

作者の狙いは多分そこだろう。

「スマホを落としただけなのに」というタイトルも、現実感を演出するために

工夫されているように思える。

もともとは「パスワード」というタイトルだったのが、「スマホを落としただけ

なのに」に変わっていることからもそう予想される。

もし、「パスワード」のままだったらここまで有名になっていなかっただろう。

タイトルが「自分の事」だと思わせるほどのリアリティを持っているからこそ、

多くの人に注目されたのだと思う。

作者の狡猾さがよく分かる。

ブログのタイトルをつける際に参考にさせていただこうと思う。

いかに、「自分の事だと思わせるか」を意識してタイトルをつけるよう

心がけたい。

続編を先に読まないほうがイイ

映画化したことで有名になった、「スマホ落としただけなのに」を読んだ。

映画は見ていないので、犯人が分からない新鮮な状態だ。

しかし、続編の「スマホ落としただけなのに 囚われの殺人鬼」を先に読んで

しまったため、犯人をかんたんに予想できてしまった。

話の内容は独立しているのだが、先に知ってはいけない情報があったので、

順番を守らずに読むことはオススメできない。

僕の場合は充分たのしむことができたが、ネタバレが許せない人はゼッタイに

「スマホ落としただけなのに」から読むことをオススメする。

専門用語が多いのにすべて理解できてしまう

この小説は、パソコン関係の専門用語がよく登場する。

しかし、読者が置いてけぼりになることは絶対にない。

用語の登場とセットで、かならず丁寧な説明が書かれているからだ。

「分かる人にだけわかればいい!」ではなく、誰にでも分かるように工夫されて

いるのである。

また、それによって「俺もハッキングできるんじゃね?」というような錯覚に

おちいるようになっている。

この本を1冊読んだだけで、なぜかパソコン強者になった気分に浸れるのだ。

これはスゴイ。

犯人は意外な人

どんなミステリでも、犯人はだいたい怪しくない人と決まっているが、今回もそう

だった。

僕の場合、続編を先に読んでしまっていたため犯人は分かってしまったが、続編を

知らない人からすると分かる人は少ないかもしれない。

しかし、よく考えれば「やっぱりこの人しかありえないな」という犯人だった。

真剣に考えれば、誰でも解けるだろう。

また、この話は犯人の謎以外にも大きな謎(仕掛けみたいなもの)がある。

犯人を特定するよりも、そっちの謎を解く方が難しいかもしれない。

個人的にはそっちの謎を解く方が、この作品のおいては重要だと思っている。

つねに予想外

ミステリ小説を読むときは予想しながら読むのだが、今回はすべての予想が見事に

ハズれた。

また、中山七里の小説のような「どんでん返し」もあるため、終始ハラハラさせら

れる作品である。

途中でダレるようなシーンが1つもないため、イッキ読みできるだろう。

そのため、仕事のスキマ時間ではなく時間をたっぷり確保できる日に読むとよい。

そうしないと、おもしろすぎて読むのをやめられなくなってしまうからだ。

SNSの怖さが分かる

普段から僕たちが使っているSNS。

便利だ。

しかし、そのぶんリスクもつきまとう。

アカウントを乗っ取られたらめちゃくちゃ危険なのだ。

この小説は、そんなSNSに対する危機感を喚起させる小説でもある。

たぶん、作者の狙いの一つにふくまれているだろう。

この小説を読んだ人は、そんな「便利なネットワークにひそむ闇」について考える

機会を与えられたのだ。

この小説の事件は、たしかに滅多におこらないような内容だったが、絶対に

おきないとも限らない。

つねに、SNSを使う時は不審なアカウントに注意をして使っていきたいと思う。

映画も観たいとおもった

2020年2月21日に、「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」が映画化

される。

映画館で観ようと思う。

しかし、その前に前作の「スマホを落としただけなのに」も観なければいけない。

ネットの情報によると、原作と違うところがあるそうなので楽しみだ。

すべて原作と同じじゃなくて、ちょっと違うところがあった方が個人的にはうれしい

のである。