吉田豪が選ぶ2019年の年間ベストソング

吉田豪

Rolling Stone Japanでは昨年に引き続き、プロインタビュアー・吉田豪氏に2019年のベストソング10選を挙げてもらった。

昨年に続いて、またRolling Stone Japanで年間ベストを選ぶことになりました! 昨年同様、アルバムとかシングルとかに限定しない、CD-RやリリースされてないCMソングも含めた、おそらく他の識者が選ぶベスト10とはまず被らないような、ジャンルも限定しない邦楽の好きな曲ベスト10です……って、そもそも去年のベスト10に選んだ人が誰も入ってなかった!


1. 大森靖子「LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ-- feat. 平賀さち枝」

山戸結希監督の映画『21世紀の女の子』主題歌。アニメ『食戟のソーマ』のエンディングテーマを頼まれたとき、「『少年ジャンプ』といえばライバル、私のライバルといえばさっちゃん(平賀さち枝)!」と思って「さっちゃんのセクシーカレー」という名曲を本人に無許可で作ったりしてきた大森さんが、山戸監督から「(大森さんが苦手にしている)某女性アーティストか(大森さんが一時期共演NGにしていたぐらい複雑な感情を抱いている)平賀さんのどちらかと共作して欲しい」と無茶振りをされ、腹を括って作り上げた、これまた名曲。同時期に同じライブハウスで同じようなスタイルでデビューしたものの、外見的にも音楽的にも可愛らしい平賀さんが先に浮上していった時期のことを、「あなたの歌は真っ白で、それがとても怖かった。私の歌はうるさいでしょ、だって正攻法じゃ無理だもの」と歌うリアリティ。複雑な感情を抱きながら、「でも、さっちゃんの良さをいちばん引き出せるのは私」と自負するのも納得。




2. SAKA-SAMA「おやすみジュディ」

いい曲は多いのになかなかメンバーが定着しないせいでリリースが少なかったのが、最高のメンバーが揃っていいアルバムを出して売れそうな空気も出てきて、これからというタイミングで寿々木ここねを1人残して全員脱退……。かなり残念でしたけど、サポートメンバーに朝倉みずほ(元BELLRING少女ハート〜夏の魔物〜THERE THERE THERES)を加えた2人体制のSAKA-SAMAも相当いいんですよ。「Lo-Fiドリームポップアイドル」というキャッチフレーズそのもののグループにようやくなったというか。「空耳かもしれない」&「おやすみジュディ」のデモCD-Rのほうが個人的には好きなんですけど、全国流通&サブスク対応したヴァージョンでも是非。




3. avandoned「マーガレット」

とにかくポジティブなつるうちはな楽曲にRocketship感あるアレンジを加えたら、そんなの良くなるに決まってる。出雲にっきの危うい歌声も最高。なお、これは完全にRocketshipとかボクがTwitterで騒いでいたら、最近はライブのSEがRocketshipになってました。




4. 桜エビ~ず「can’t go back summer」

2019年にいい曲を最も大量に生みだしたのは桜エビ〜ず(現ukka)じゃないかと思います。毎月リリースされた配信曲をまとめたアルバム『octave』(Have a Nice Day!浅見北斗作の「リンドバーグ」やONIGAWARA作の「それは月曜日の9時のように」など、年間ベスト級の曲を複数収録)も最高だったんですけど、現時点での最新曲となる「can’t go back summer」(作詞/ヤマモトショウ、作曲/永塚健登、編曲/ONIGAWARA)が個人的には大好き。スタダの勝ち抜きバトル企画『ライブスタイルダンジョン』でこの曲に投票したのはボクだけでしたけど!




5. 寿々木ここね「スイート・セレブレーション!」

SAKA-SAMAは生誕ライブ時にリリースされるメンバーのソロも全部良かったんですけど、特にこれ。佐々木喫茶楽曲がいいのは当然として、小倉優子ファンだという寿々木ここねが、やり過ぎなぐらいに作り込んだ声で歌ってるからスイートすぎて脳味噌とろけそうになります。


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浅野忠信率いるSODA!を吉田豪が直撃「バンドの運気が上昇している」

SODA!のライブ写真(Photo by Masanori Fujikawa)

俳優の浅野忠信(Vo)が率いる4人組ロックバンド、SODA!をプロインタビュアーの吉田豪が直撃。メンバーの高松優(Gt)、松丸裕二(Ba)、村山尚也(Dr)も交え、通算5作目となるニューアルバム『MELODY!』や、浅野の音楽/人生観を掘り下げてもらった。

─御無沙汰してます! 浅野さんと最後にお会いしたのは18年前なんですよね。趣味が近そうなんで、ボクのオススメ漫画を貸すというのが企画になったりして。

浅野:『ばらの坂道』とか。

─そうそう、ジョージ秋山先生のレア作品とかお貸しして。

浅野:「きちがいだから、きちがいだから」ってページがあるんですよね(笑)。

─完全にどうかしてる大好きな作品です(笑)。それっきり接点もないままだったんですけど、SODA!のメンバーの方々と会うのは初めてなので、浅野さんから紹介してもらえますか?

浅野:僕はずっと横浜で生まれ育って。磯子高校っていうローカルな高校に通っていて、その隣に釜利谷高校っていうのがあったんですよ。当時はバンドブームじゃないですか。僕もそうだし、釜利谷に通っていた彼(松丸)もバンドをやってて。そのへんの地域の学校はよく一緒に対バンイベントをやってたので、そこから今のバンド仲間とも知り合って、一緒によく遊ぶようになると。

松丸:それで一緒にバンドをやることになって。

浅野:SAFARIっていうバンドをこの3人(浅野、松丸、高松)とブライアン・バートンルイスでずーっとやってたんですけど、その流れでファンクバンドもやろうとなり、この2人に声をかけて組んだのがSODA!。あと、SAFARIとして対バンツアーを回ってたときに、COKEHEAD HIPSTERSのメンバーでLO-LITEというバンドもやってた村山と意気投合して。彼にドラムをお願いしました。



─じゃあ横浜のハードコア仲間な感じだったんですか? PILE DRIVER周辺というか。

浅野:そうですね、まさに!

─浅野さんが組んでいたPEACE PILLは、ボクもCDを結構買ってて。

浅野:ありがとうございます!

─その頃から浅野さんの音楽活動は、基本的に難解なことをやってるイメージだったんですよ。

浅野:ハハハハハハ!

─で、SODA!もいわゆるハードコアな方々との対バンが多いから、そういう音かと思ったら全然違うじゃないですか。

浅野:そうなんですよ。そっち経由の話で言うと、当時それこそPILE DRIVERとかとつるんでた頃、新宿アンチノックにTHE FOOLSが出たんですよ。THE FOOLSってハードコア周辺の人からすると、やっぱりサウンドはロックじゃないですか。それを観た時に、「ハードコアと同等のパワーで、ロックンロールバンドをやってる人がいる!」と衝撃を受けて。

─ハードコアを通過したロックンロールなんですよね。

浅野:「あっ、こういう事できるんだ!」と思って。あの人たちとやるには、対等のエネルギーを出さないと認めてもらえないんで。そういう意味では、SODA!はそこをかなり意識してます。ハードコアとかパンクっていうものをサウンドの面で打ち出すんじゃなくて、フィーリングの部分で同等のエナジーで立ち向かって、一緒にやるっていうのは重要でしたね。


THE FOOLSが2015年に発表した未発表ライブ音源&映像集『On The Eve Of The Weed War』トレイラー映像

─THE FOOLSはハードコアと対バンやっても、本当に何の違和感もないバンドですよね。

浅野:バッリバリですもんね。

─ハードコアと同等の不良の匂いもするバンドですからね。これは勝てない!っていう悪い空気が出ていて(笑)。

浅野:実際、悪い人たちでしたしね(笑)。何人も亡くなっちゃってるし。

─そこが発端だったんですね。

浅野:あの衝撃はデカかったです。パンクとかハードコアをそれっぽいファッションやサウンドでやるのは、まあ楽しみやすいとは思うんですけど。そうじゃない形であのシーンでやるとなったら、それ相応でいかないと食らっちゃうんで。

─SODA!でハードコアの方々と対バンしても、違和感はそんなに出ないですか?

浅野:おかげさまで、いい意味で揉まれてきたっていうか。今はもう抜けたんですけど、KATSUTAさん(元鉄アレイ〜元EXTINCT GOVERNMENT)とバンドをやってたこともあるので。

─Rのことですよね。すごいことになってるなーと思ってました(笑)。

浅野:そこから、SODA!もKATSUTAさんの「KAPPUNK」に呼んでもらって。こっちのエネルギーがピュアだから、パンクの人も喜んでくれるんですよね。そうするとやり方もわかったというか。やっぱ、動じないことが大事だったんだなって。そこからは全然大丈夫です。

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