「ふるさと納税」法改正でも止まらない税金流出

独自試算!実質住民税「流出額」ランキング

和歌山県有田市は、特産品の「有田みかん」を生かし、法改正後も寄付を伸ばした(記者撮影)

「2019年は『ふるさと納税』を取り巻く環境が激変した1年だった」――。ふるさと納税に関わるポータルサイト運営会社や自治体の関係者は口をそろえてこう語る。

激変の1つが、2019年6月に行われた法改正だ。従来は、ギフト券やうなぎなど地場産品ではない返礼品を送る自治体によって、返礼品競争が過熱していた。地域の経済には寄与しない、金を集める手段としての返礼品に国民の税金が流れたことが問題となり、総務省が主導して法改正に踏み切った。

国が規制を強める形となったが、意外にも多くの自治体は歓迎した。それまでは法律で定められていなかったため、ギフト券を返礼品に出して”抜け駆け”する自治体に対し、多額の寄付が集中していたからだ。節度を守ってきた大多数の自治体は、法律ができたことでフェアな競争環境になったことをよしとしたのである。

実際、ポータルサイト大手のさとふるが自治体にアンケートを取った結果では、法改正の6月以降、「前年と比べて寄付額が増えた」と回答した自治体が6割に上った。2019年のふるさと納税の寄付総額は、2018年度の5127億円からさらに増加し、過去最高を更新する見通しだ。

寄付者が多い自治体ほど住民税が入らない

その反面、改善の兆しが見られないのが、都市部の自治体における住民税の「流出」だ。ふるさと納税では自己負担の2000円を除き、一定の上限額(住民税の20%)までは、寄付した金額の全額が翌年の住民税から控除される。例えば住民税を年間50万円納める人であれば、約10万円までの寄付は、翌年の住民税の減額という形でほぼ全額が返ってくる。

そのため寄付者が居住する自治体では、本来入るはずの住民税が失われることになる。人口が多く、所得層の高い都市部の自治体ではとくにその影響が大きく、その深刻さは年々増している。

総務省が公表する統計資料によれば、2019年に最も住民税控除額が大きかった市区町村は136.7億円の横浜市。以下、名古屋市大阪市など、大都市が並ぶ。だが、これらの市は地方交付税による補填が受けられるため、実質の流出額はその4分の1にとどまる。

横浜市をはじめ多くの自治体が補填を受ける一方、独自の税収で財政運営ができる東京23区川崎市などは地方交付税を受けておらず、ふるさと納税で多額の住民税が流出しても補填がない。

そこで今回、地方交付税による補填を考慮した、「実質流出額」を独自算出した。

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  • 何がやりたかったの?ceb9fae790cb
    仲介業者だけは笑いが止まらない。即刻廃止にしたほうが良い。
    こういう事態想定できなかったのか、それとも、業者と裏でつながっているのか。
    up49
    down29
    2020/1/8 06:12
  • 今日のご飯はf81b0319ab5a
    私は、ふるさと納税に矛盾を感じていたので、当初は行っていませんでしたが、あまりにもお得なので最近は行っています。

    けっして悪い精度ではないので、以下のように見直すことをおすすめします。
    ①仲介会社の手数料を5%程度にする。(現在15%程度と聞いています)
    ②返礼品の還付率が高すぎる。(15%程度で良いのではないでしょうか)
    ③返礼品は、「特産品」に限る。(一応そうなっているようですが)
               以上
    up22
    down12
    2020/1/8 09:19
  • マヒロ7c75c1de0ce1
    純粋に税金の使い道を選ばせたいというのであれば、返礼は経済的価値のない名誉だけとし、税控除も他の寄附と同様に定率とするべき。
    寄附と言いながら物品で返礼を許すなど、ふるさと納税制度の実質は、税金を使った割引付の通販に過ぎない。しかも、この割引は高額所得者に大きい。不公正・不平等を助長する政策を象徴するものとなっている。
    不公正・不平等は、多くの関係者に損をさせるが、その陰に隠れて甘い汁を吸っているものも存在する。多くの国民にとっての損害は自治体財政の窮乏化を通じた政策の希薄化であるため、間接的で気づきにくい。
    一方、直接潤っているのは返礼品を扱う通販業者、上手く時流に乗れた自治体、税のキックバック額が大きい高額所得者などであるが、一番質の悪いのは、公正さを欠いた政策で支持を得ようとしている政府。与党。
    冒頭記した見直しができなければ、廃止すべき。
    up18
    down10
    2020/1/8 09:44
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