無職なのにメンタルを病まない夫は、最高

転勤についていくのは無理!と、旦那さんに仕事を辞めてもらった下田美咲さん。旦那さんは完全に無職になり、家でひたすら育児をすることに。ずっと育児をしていると「外に出て働きたい」「社会とつながりたい」と思う人も少なからずいます。それゆえ下田さんは旦那さんが心のバランスを崩してしまうのではないかと心配していました。しかし、それは完全に杞憂に終わったそうです。

夫が無職になってから4ヶ月が経った。

新生活が始まる前は「どうなるのだろう」という思いでいっぱいで、以前にも書いたように、どちらかといえば「最初は難航しまくるのだろう」という予想をしていた。

夫が無職になるにあたって、グータラ問題と同時に心配していたのが「やっぱり男の人だから、どこかに勤めていないと心のバランスを崩してしまうのでは」「家の外で働かせてあげないと病んでしまうのでは」ということだった。

仕事の意義はお金だけじゃない

一般的に、多くの成人男女は、仕事をしていないとそんな自分に対して焦りを感じ始める。女の人でさえ、主婦業だけに集中をすることは難しく、家事育児だけの毎日を送っていると「自分は誰からも認められていない」と思って病んだりしているイメージがあるし、男の人に至っては、たまの休日の育児でさえも「子どもと遊ぶのって単調で退屈だな」と感じて、仕事に逃げているイメージがある。(本当に仕事が忙しくて育児にまで手が回らない、という人もいるだろうけど、仕事を言い訳にして育児から逃げているビジネスマンも一定数存在している気がする。)

「共働きしないと経済的に厳しい」という家庭も多いのだろうけれど、実はお金の問題だけではなく、「働かずにはいられない、無職だとメンタル的にきつい、プライドが保てない」という大人ってきっと多くて、仕事をすることってメンタルバランスを整える効果が高いのだと思う。

だから、心配していた。育児と、私の仕事の手伝いだけの日常になったら、彼は病んでしまうのではないか、と。しかもいざ彼に仕事を手伝ってもらったら、クソ三流すぎて瞬く間に仕事から降りてもらうことにもなってしまったから、もはや彼の役割は育児だけになってしまい、「働き盛りの健康な男が、育児だけの毎日を送って楽しく暮らせるものなんだろうか」と心配はつのっていた。

夫の感受性は私にとって想像を絶するものだった

結論から言うと、めっちゃ大丈夫だった。正直未だに驚き続けているのだけれど、夫は、育児をかなり楽しいと思っているようで「ずっと育児をしていたいから4年おきくらいに産めるだけ産んでほしい。そしたら俺の役割があるじゃん」とまで言いだしている。

私自身は、仕事をせずにはいられないタイプで、ワンオペ育児をしながらも一般サラリーマンの10倍の月収を維持していたくらいにストイックな仕事人間であり、価値観というよりはもはや細胞レベルで「生産性、命!」みたいな生き物だから、夫の生き方や感受性は私にとって本当に想像を絶するものなのだけど、どうやら彼は、仕事をしていなくても病まないらしく、延々と生産性のない行動だけを取りながら生きていけるタイプらしい。私には信じがたいけれど、例えばアニメを観続けたりゲームをしているだけの毎日を送ることが平気らしい。

先日、改めて「なぜあなたはイクメンとして暮らしているのか」と訊いた時にも「楽しいから」と即答し、「育児が楽しくなかったら、美咲ちゃんがなんと言おうとどうにかして働きに出るよ。そりゃそうでしょ。だけど、毎日子どもと遊ぶ暮らしは俺にとって楽しいから、ぜんぜん働きたくない。一生就職したくないでーす」とのことだった。

彼がメンタルを病まない理由

ただ、彼がメンタルを病まずに育児を楽しめているのは、もしかしたら、社会が彼のことを必要としたり評価したりする以上の勢いで、私が育児をする彼に対して関心を持ち褒めまくっていることも影響しているのかもしれない。

息子は家にいると私にベッタリで、「ママじゃなきゃダメ」なことだらけなため、夫には主に【昼間の外遊び】の育児を担当してもらっていて、【私が原稿を書いている間、2人には冒険に出かけてもらう】というのが最近の我が家の定番なのだけど(そして週2~3は私も冒険に参加)、彼らが出かけている間中、私はマメに連絡をしては画像や動画を要求し、息子が可愛く撮れていたり、幸せそうに動いていたら「天才、最高」と称賛する。

帰ってきた後も離れていた時間を埋めるように「今日はどんなことがあったのか」「2人で何をしたのか」「どう可愛くて、どう楽しかったのか」などと根掘り葉掘り訊いている。

また、息子の様子に少しでも成長が垣間見られたら「あれ?!もしかしてこれ、あなたが教えたの?!!」と確認し「素晴らしいですね!」と絶賛している。

興味があって仕方がないから聞いているし、本当にそう思っているからそのまま声に出しているだけなのだけど、冒険から帰ってきた2人に対してはいつも「今日も1日冒険活動お疲れ様でした!ありがとうございました!おかげでたくさん原稿が書けました!」と言い、夫には「最高の旦那さんです!」とも伝えている。

夫婦の子どもというより、圧倒的に「私の子ども」

私にとって息子は、夫婦の子どもというより、圧倒的に「私の子ども」という意識があるため(この感覚は特別なことではなく、多くの女性はそうなんじゃないだろうか)、私の大切な宝物である息子を私と同じくらい大切に思ってくれて、毎日いろんな冒険スポットに連れて行って、女の私にはできないアクロバティックな遊び方をして楽しませてくれている彼には感謝しかない。2人で作った子どもだけど「私の大切な息子と仲良くしてくれてありがとう!」という気持ちがある。

ちなみに、夫が平日に子どもパークに行っているという話を人にすると、「パークに来ている父親が自分1人しかいなくても、旦那さんは平気なの?」と訊かれることがあるのだけど、そういうことを引け目に感じる感覚は夫には皆無だと思う。

なぜかといえば、これは私も最近まで知らなかったことなのだけど、彼は子どものオモチャがかなり好きらしく、彼自身が子どもパークを楽しんでいるから。ちなみに子ども向けのアニメや歌番組も全体的に好きらしく、息子が観ていないと思って消すと「え、俺観てたのに!」となるし、歌のお兄さんやお姉さんの名前や特徴、歌詞や振り付けなども、驚くほど詳細に覚えている。アニメのキャラの名前やプロフィールや主題歌も、ほとんど覚えている。(ワンオペを2年間やっていた私はそのどれも覚えられなかった。)

また夫は、自分自身がお金を稼いでいないことに対しての引け目も一切感じておらず、「俺はアゲチンだから!俺がいることで美咲ちゃんは稼げるから」と自信を持っていて、「俺がネタを提供したり、子どもと遊んで原稿に集中できる環境を作ってるから、それは俺の稼ぎでもある!」と言い切ってさえいる。収入が0になったことによって、むしろ堂々と私の経済力に乗っかってくるようになったフシもある。

それについては「好ましい展開だ」と感じている。変に遠慮されてしまうよりも、図々しいくらいの方が扱いやすいし、私自身が欲しいものをバンバン買っている以上、彼にも「俺はあれが欲しい!買って!」と言ってもらえた方が気が楽。

20万円の上着を買ってほしいとお願いされて

ちなみに新生活が始まってすぐの頃、モンクレールの20万円の上着を買って欲しいと言われたので、それは却下した。

「新生活が始まって、ここからの経済状況が見えない時に、贅沢品なんて買うわけないでしょ!私はエッセイストなんだよ。暮らし方が変わったら作風が変わるから、一気に売上が落ちるかもしれないんだよ!もしかしたら今までの人気は、私がサラリーマンの妻でワンオペ育児をしていたからこそ書けた文章の賜物かもしれないんだよ。2オペ育児で夫が無職なんて浮世離れをしたプロフィールになっても稼げるかどうかは未知なの!!!そんなタイミングでモンクレールの上着は買いたくない」と。つまり、堂々とねだってくれた方が、こうしてハッキリと断ることもできるから助かる。

「ハイブランドっていうのはね、ちゃんと稼げている人が余裕を持って買うものなの。無理して買うハイブランドなんて、ダサいだけなの。経済的に不安定な人が持っててもカッコ悪い。もはやキモい。だから今じゃない!また私が自分の経済力に安心をして、気分よく買える時が来たら買ってあげるから、待っててください」

そんな話をして「はーい、わかりました」となっていたのだけど、その後、無事に新生活でも売り上げ目標を達成することや、新しいプロジェクトを軌道に乗せることができたため、おねだりされた上着は無事に買ってあげることができた。軽くて暖かいモンクレールのダウンを着て寒空の下ウキウキと息子と手を繋ぎ大冒険に出かけていく夫を見ながら「すごく私らしい人生を手に入れたな」と思っている今日この頃です。


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下田美咲の口説き方

下田美咲

下田美咲さんという女性をご存じでしょうか。13歳からモデルをしながらも事務所には所属せず、自宅の車を宣伝カーに改造してゲリラパフォーマンスを行ったり、「飲み会コール動画」などのオリジナル動画を180本以上手がけてYouTubeにアップ...もっと読む

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