24:エロゲとラノベ
前回触れた通り、今回も質問にお答えさせていただきます。よろしくお願いします。
■ライトノベル市場についてはどのようにお考えでしょうか。
かっこつけずに正直に答えますと、よくわかりません。
ラノベで活躍しているようなライターであればラノベ市場のこともよくわかっているのだろうが、いかんせん俺はラノベなど書いたことがない。だからラノベ市場のことは全然わからない。
ただ、飲み会の席などで出版社の方だったりラノベ編集の方とお話しする機会は何度かあって、その編集さん曰く、エロゲとラノベは近しい関係にある、とのことだ。
なので読者層、ユーザー層が被っていて、より価格の安いラノベ市場にエロゲユーザーが流れている、というのもあながち間違いではないのだろう。
が、ラノベがエロゲユーザーを吸収したからエロゲが売れないというのは、果たしてそうだろうかと首を傾げてしまう。
もちろん完全に否定することはできないのだが、統計的なデータがない以上、「エロゲが売れないのはラノベのせい」と断じることは決してできないだろう。
以前も述べたが、エロゲが売れなくなったのはラノベなどの他業界の影響よりも、ブームが去ったことが大きいように思う。
以前は二次元のエロを楽しみたいならエロ漫画やエロゲを買うしかなかった。今はネットで画像検索でもすれば一発だし、違法ダウンロードなんてものも存在している。
そしてブームが去った要因として個人的に無視できないのが、エロゲが十年前からさほど進歩していないどころか、一部退化していることだろう。
昔はアドベンチャーでも探索したり選択肢が非常に多かったりなど、ゲーム性を持たせたエロゲが結構あった。
しかしコストの問題からかそういったゲームは消えていき、簡単な選択肢で分岐するだけのゲームが主流となっている。
紙芝居なんて揶揄されることもあるが、ただ読むだけのゲームが徐々に飽きられていくのは当然のことのように思う。
もちろん紙芝居なんて言えないような、たとえばニトロプラスの「凍京NECRO」だったり、Loseの「まいてつ」だったり、3Dをふんだんに使ったりE-moteで立ち絵やCGが可愛らしく動く演出の凝ったゲームもあるのだが、体力のあるメーカーしかあんなことはできないので、凝った演出が当たり前になることはまずないだろう。
要するに、エロゲに一万円ポンと払えるような時代ではないのだ。
ただ雑誌のランキングなどには出てこないが、ロープライスの作品はダウンロードで数万本売れていたりするので、エロ自体はやっぱり強いのだろう。単純にフルプライスが高すぎるのだ。エロにもっとも飢えている若い子が気軽に買える値段ではない。
とはいえ、売上本数的に値段を下げるわけにもいかないのが現状だ。ラノベとは関係なく、エロゲ不況はしばらく続くのではないだろうか。
そもそもではあるが、エロゲというかエロというのはアングラなもので、ラノベとは市場規模が全く違うので並べて語るのもおかしいという気もする。
もしエロゲがラノベと競り合えるような巨大コンテンツならば、エロラノベもそれに匹敵するコンテンツに成長しているはずだろう。バンバンアニメ化されていてもおかしくない。
エロコンテンツは本来ひっそりとしているもので、「Fate」などで盛り上がった時期が異常なバブルであり、それが弾けた今が正常な状態なのかもしれないとも思う。
そんなわけで、繰り返しにはなるがエロゲの売り上げにラノベの影響があったとしてもそこまで大きくないんじゃないの? と俺は思っている。
そしてもう一点、著名なエロゲライターがラノベに流れていくことだが、これは商売的な意味では当然のことだろう。
ゲーム一本作ってもせいぜい数百万、大御所クラスなら一千万いくかもしれないが、ラノベならゲームよりも圧倒的に少ない文章量で一千万以上稼げる可能性がある。
それに、これは俺が勝手にそう思っているだけだが、やはりライターとして「自分だけの作品」が欲しいという気持ちもあるだろう。
企画・ディレクターとしてゲーム制作に関わっても、その著作権はメーカーが有しているので、ライターはなんの権利も持っていない。
タカヒロ氏と「つよきす」を例にあげればわかりやすいだろうか。
「つよきす」の権利はきゃんでぃそふとが持っているため、タカヒロ氏は自分が主導で作り上げた作品にも関わらずみなとそふとでは「つよきす」を作れないのだ。
まぁこれはラノベでも(たぶん)同じことでA社で書いた作品をB社でも書くなんてことは(おそらく契約上)できないはずだが(追記:できるそうです。ご指摘ありがとうございます)、仮にアニメなどになった際、「原作:きゃんでぃそふと」ではなく「原作:タカヒロ」になるのは結構大きいように思う。
このようにエロゲというのはメーカーの作品であって、ライター個人の作品ではない。チーム制作なのだから当たり前だが、一人でやっていける力を持ったライターがラノベに流れてしまうのは、やはり当然なのかなと思う。
重ねて言っておくが、俺はラノベなんか書いたことないし出版社からオファーが来る気配もないので、無名ライターからはこんな風に見えてるよ、くらいにとどめておいてくれると嬉しい。
もう一つ質問をいただけたので、次回は声優さんのことについて話そうと思う。