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【国際】<民衆の叫び 世界を覆うデモ>(7)韓国 実感 社会を変えた「若い世代 沈黙していては駄目だ」
昨年十二月半ば、ソウル中心部の光化門へと続く大通りを群衆が埋め尽くした。「文在寅(ムンジェイン)は退陣しろ!」とのシュプレヒコールとともに、無数の太極旗が揺れ、氷点下の空に熱を帯びた声が響く。 週末ごとに開かれる反政府集会に、毎回足を運ぶ金順徳(キムスンドク)さん(73)は「国の主権は国民にある。国が変わるまでデモに参加し続ける」と、白い息とともに吐き出した。 韓国は一九六〇年の李承晩(イスンマン)大統領の辞任をはじめ、デモが国を動かしてきた成功体験が、韓国民の心に根付いている。今も多い日にはソウル市内だけで数十カ所で開かれる。 八〇年代の民主化運動に参加した大学教授の金榕〓(キムヨンヒョン)さん(52)は、「学生だけでなく一般の市民も声を上げ、民主主義を取り戻そうというエネルギーが充満していた」と振り返る。当時の軍事独裁政権はデモを厳しく弾圧。大学生が拷問で死亡したことをきっかけにデモは全国に拡大し、民主化に結実した。自身も拘束経験がある金さんは「デモは民主主義の発露だ。自分たちの手で社会が変えられると実感した」と話す。 朴槿恵(パククネ)大統領(当時)を糾弾する二〇一七年の「ろうそく集会」は四カ月続き、民意の大きなうねりが弾劾へと追い込んだ。デモを最初に主導した革新系労働者団体の柳美卿(ユミギョン)さん(43)は、そのほとんどに参加した。「当初は弾劾までいけるとは考えていなかったが、実現した時には感動した」 実は文氏も、七〇年代の民主化運動や、朴氏の退陣を求めるデモでは参加者の一人だった。それが今では柳さんらから批判の目を向けられる立場だ。柳さんは「労働者のための政府だと言っていたが、実際はそうなっていない。国民の意思を政策決定権者に届けなければならない」と文氏を批判する。 一連の民主化運動で議会制民主主義が確立し、民意の代弁者として議員が存在しながら、国民はなぜ今でも自ら立ち上がるのか。市民運動に詳しい弁護士の呉敏愛(オミエ)さんは「大統領や議員は選挙で選べるが、政策や国の方向性が間違っていると感じた時に選挙以外に主張する場がない」と指摘する。大統領が強い権限を握るため議会の役割が制限されていることも理由だという。 政局の節目で重要な役割を果たしてきた韓国のデモも、その形態は時代とともに変化している。舞台の上で歌やダンスのパフォーマンスを披露し、祭りのような雰囲気がある。かつてのような暴力的な衝突もほとんど見られない。 参加者の中には親子連れの姿も目立つ。十二月の反政府集会に家族で参加した尹順英(ユスニョン)さん(48)は「これからの国を引っ張っていく若い世代が、沈黙していては駄目だ」と話す。娘の林世庚(イムセギョン)さん(21)は「たくさんの人が声を一つにして伝えることで変化は生まれる」。韓国に根付くデモの文化は、次代へと受け継がれていく。 (ソウルで、中村彰宏、写真も) ※〓は火へんに玄 PR情報
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