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【経済】<原発のない国へ 福島からの風>屋根で発電 農業ハウス 会津電力の地産地消、今月稼働
東京電力福島第一原発事故から九年となる福島県の会津地方で、市民らが出資する再生可能エネルギー会社「会津電力」が今月から、必要な電力を全て太陽光から賄う次世代農業ハウスを稼働させる。福島では東北電力が「送電線に空きがない」として、再エネ発電の新規の受け入れを止めており、売電型の再エネ業者は苦戦している。会津電力は地産地消型を進めることで、電力の接続問題の壁を乗り越えて福島の自然エネルギーを拡大させる方針だ。 (池尾伸一、写真も) 白い雪をかぶった磐梯山を望む会津美里(みさと)町の田園地帯。屋根に黒い太陽光パネルをのせた農業ハウス(約二百平方メートル)が完成間近だ。 「雪深い会津では冬はほとんど農業ができない。このハウスなら冬でも作物がとれます」。会津電力の折笠(おりかさ)哲也常務は言う。 屋根の片側に張られたパネルは家庭なら十軒分が賄える約三十キロワットを発電する。これでハウス内の冷暖房やLED(発光ダイオード)照明を作動させ、作物を年中栽培できる。一部は蓄電池にため、夜間や雨天などに供給する仕組みだ。屋根の角度三〇度は発電量を確保でき、雪が滑り落ちる最適角度だ。送電線にもつなぐが売電はせず、蓄電池でも足りない緊急時に電気供給を受けるにとどめる。 今月下旬から一年間を実証期間とし、地元の若手農家と協力して、オリーブやコケなど観賞用植物のほか、トマトなどの野菜を栽培する。順調なら地元農家にハウス導入を提案していく計画だ。 会津電力は原発事故を機に地元市民らが「原発に頼らない電気を」と設立した会社。約八十カ所の太陽光発電所を建設してきた。固定価格で大手電力に売る売電型だったが、大手は二〇一四年から小規模発電しか受け入れない方針に転換。政府も太陽光の固定買い取り価格を下げ続けており、売電型は採算がとりにくくなっている。会津電力は地産地消型なら送電線への依存が少なく、再エネが拡大しやすいとみている。 一方、福島の農産品は放射能汚染の風評が残っており他県産に比べ全般に安い。折笠さんは「冬も営農できれば農家の生産性も上がる。再エネ拡大と同時に農家も支援する一石二鳥が期待できる」と話している。 PR情報
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