13:なぜクソゲーは生まれるのか
前回でクソゲーという単語を出したわけだが、ユーザーにしてみればなぜクソゲーが生まれるのか不思議なのではないだろうか。
普通の感性をもっているならば、少なくともシナリオが上がり始めた時点で「これはやばいぞ」と感じるんじゃないか。そこから軌道修正を図るのではないか。なぜそうせず発売に踏み切ってしまうのか。
答えの一つとして『軌道修正が容易ではないから』というのがあげられる。
まずシナリオがやばかった場合。代わりの、かつ、腕のいいライターなどすぐには見つからないのだ。
そこそこ名前が売れているライターは、まず間違いなく数ヶ月先、下手をすると1年以上先までスケジュールが埋まっている。だから急に「すぐに仕事に入ってくれませんか」と依頼しても、当然「無理です」としか言われないわけだ。
よほどの大手メーカーであっても、「じゃあこのライターさんのスケジュールが空くまで待とう」などと余裕を持って構えるのは難しい。制作費の大部分は人件費であるから、発売日が延びれば延びるほどコストが膨らんでいく。
運よく有名ライターのスケジュールが空いていたとしても、単価が1kbあたり2000円と高額だったりして予算的に無理ということだってある。
だからライターを交代するのであれば「現時点でスケジュールの空いている無名に近い(かつギャラの安い)ライター」しかいなくなる。
そんなよくわからないライターに頼むのならばこのままで……となってしまうのは仕方ないだろう。
そして次に、シナリオライター自身もやばかった場合。締め切りを守らない。とにかく守らない。やっと送ってきたと思ったらたった10kbくらい。挙げ句の果てに「自分には無理でした」と一方的に告げて仕事を降りる。まだ連絡があればいい方で、いきなり音信不通になるような輩もいる。
今までディレクターがクライアントがと愚痴ってきたが、こういうクズライターがいるのも事実で、名前が売れているライターであってもこのような社会人あるまじき行動をとる輩もいる。
せっかく有名ライターに依頼できたのにトンズラされてしまい、仕事の空いている無名ライターに頼むしかなくなった。その結果、非常にクオリティの低いシナリオになってしまった。というケースもあるわけだ。
もっとも……俺も同じシナリオライターの立場なのでどうしても擁護的な意見を言ってしまうのだが、クライアントが横暴すぎて付き合いきれなくなって下りざるをえないこともある。
次は、そういったクライアントがやばい場合。
これは(多少脚色した)実例を交えて話していきたい。
ディレクター1(以下1)「今回の企画はSFロボットモノです。マブラブ オルタネイティブのような作品を目指します」
俺「なるほど。楽しそうですね」
1「世界設定や用語集などは既にこちらで作成しましたので、こちらを参考に執筆お願いします。
俺「わかりました。(今回のディレクターさんはしっかりしてるなぁ)」
(数ヶ月後)
俺「担当√終わりました」
ディレクター2(以下2)「お疲れ様です。1に変わりまして今回から私がディレクターになりました」
俺「え、1さんどうされたんですか?」
2「別のプロジェクトが人手不足でそちらに回されました」
俺「なるほど……」
2「シナリオ確認いたしましたが、難解な用語が多いのでわかりやすい言葉にすべてなおしてください」
俺「え? いただいた用語集に従っているのですが……」
2「用語集? よくわかりませんがとにかくなおしてください。あとロボットの3Dモデルにコストがかかるので、ロボットモノではなくなります」
俺「は?」
2「ロボットが登場するシーンはすべて別のシーンに差し替えてください」
俺「いやいやいやいや」
2「それと、今作はSFではなく普通の学園イチャラブモノに軌道修正することになりました。バトルシーンはすべてカットで」
俺「いやいやいやいや! さすがにそのレベルのリテイクには対応できません」
2「ならこちらでなおします。おつかれさまでした」
俺「えぇ……?」
(数ヶ月後、別ライターの手によって作品が生まれ変わり体験版が出る。しかしクレジット上では俺がメインで担当したことになっている)
ユーザー「なにこれつまんねとか以前に設定とかひどすぎるだろ。ひょうろくだまってライターくそだな」
俺「……」
と、クライアントがというか、ディレクターがやばい場合こうなる。
最初のディレクターのまま進めることができれば、おそらく並以上の作品になっただろう。だが優秀な人材が作り上げた土台を、凡人かそれ以下の人材が荒らし尽くした結果、ポテンシャルを持った作品はクソゲーにまで堕ちてしまった。
しかもディレクター2は発売後も無傷で、俺の名前だけ傷つくというおまけつきだ。「このディレクターやばいぞ」と感じて逃げるライターがいるのも、納得していただけると思う。
他にも、企画段階からやばい場合もある。あえてマイナーなジャンルを狙って誰にも見向きされないことがわかりきっていたりとか、奇をてらいすぎて寒くなってしまっているとか、企画者のセンスがぶっ飛びすぎていて理解できなかったりとか、様々だ。
ただ、この企画がやばい場合はライターの料理次第で奇作として妙な信者を獲得したりすることもある。ライターの腕の見せ所、といったところだろうか。
まぁ……そうなることもありえない壊滅的な企画が大多数であるから、少しでもやばいと感じたら依頼をお断りするのが通常ではあるが。
あとは原画家が全然描かなくて遅れまくり、CG枚数が通常のフルプライスの半分以下、というタイプのクソゲーもある。
そういった場合、中身がしっかりしていればクソゲーのレッテルを貼られることは免れるが、だいたいシナリオもやばいことが多いのが不思議である。
一部に力が入りすぎて無駄にダラダラと書いてしまったが、簡単に言ってしまえば、クソゲーはチーム全体が、あるいはチームの誰か一人がやらかしてしまった結果、なし崩し的に生まれてしまうのだ。
納期やら決算という問題がある以上、よほど体力のあるメーカーでもお蔵入りは難しいし、長期間延期したところでどうにもならない場合もある。
こちらも仕事であるから、やばいなと思っていても日々の生活のために書ききるしかないし、クソになることがわかっていても無報酬で非常識な修正を強いられれば下りるしかないのだ。(言い忘れたが、リテイクに関しては報酬に含まれないことが多い)
これはもう、どうにもならないのだ。
もしクソゲーを掴んでしまった場合、だいたいはディレクターかライターが戦犯だなと思ってくれればいい。
作り手の一人として反省しつつ、少しでもクソゲーと呼ばれるゲームが減るよう祈るばかりである。